【感想】ガラスの仮面35巻 紅天女の里にて4つの試練に挑むマヤと亜弓!そして壊れていくお嬢様
あらすじ
梅の里でマヤと亜弓の「紅天女」の特訓が始まった。月影千草が二人に命じたのは、自然と向き合う「風・火・水・土」の課題だった。
bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は美内すずえさんです。
登場人物
北島マヤ:紅天女の候補に選ばれ、ついに紅天女の里で修行を開始する事になる。紫のバラのひとの正体に気付いたがまだ直接確認は出来ていない。
姫川亜弓:マヤがついに紅天女の候補に選ばれ、2人で紅天女の里へと向かう。半サバイバルみたいな生活の中でも気品を忘れない。
月影千草:初代紅天女。これまで死ぬ死ぬ詐欺でめんどうな女性であったが、いよいよ本気を出すターンがやってくる。
感想
ついにやってきた紅天女の里!いよいよ紅天女に向けた特訓が始まる!
はい!というわけで今回紹介するのは『ガラスの仮面』の35巻です!
いやぁこの辺までくるとかなり物語も核心に迫ってきた感じですね。ブログも書かないでどんどん読んでしまう魅力がありますね。
紅天女の里へ向かう
紫のバラのひとがマヤの母の墓に落としていった万年筆を速水が受け取った事により、速水が紫のバラのひとだと確信したマヤ。その事実を確認しようとしたがついに出来ないままに紅天女の里へと旅立つ事になる。
前回の記事では具体的には紹介しないで流しましたが、この『速水=紫のバラのひと』と気付いてからのマヤが好きなんですよ。
これまで自分が心の支えにしてきて、恋愛とかそういう感情を超えた場所にいた紫のバラのひとが、まさかこれまで憎んできた速水だったとは。
思えば心当たりがたくさんあった。あれもこれも。これまでずっとあなたがあたしを支えてくれたんですか……?と。
感受性豊かな乙女の心が揺れ動きまくるわけですが、2人の気持ちの行方はどうなるんでしょうか?
マヤが紅天女の里へと向かう新幹線に乗る時に桜小路君に見送られて乗るんですよ。で、見送った側の桜小路君は当然マヤの事を考えて見送るんですが、一方のマヤは桜小路君のさの字も無いくらい脳内が速水でいっぱい。という、残酷で悲しい場面。
さて。そんな速水とマヤの事情があっても、世界は勝手に回る。
紅天女の試演に向けてオーディションで選ばれた『黒沼チームvs小野寺チーム』のメンバーも決まり、マヤと亜弓はチームとは別行動で月影先生に直接指導を受けるため紅天女の里へ。
新幹線で東京から京都まで。京都から電車で30分。そのあとタクシーで1時間ほど山を走っていよいよ紅天女の里である『紅梅村』に到着です。
『紅梅村 モデル』などで検索するとここのモデルになった場所がどこかを検証する有志がたくさんいますのでぜひ興味があったら検索してみてください。
さて。この紅梅村がこれから当分の間の物語の舞台となっていきますが、ここは紅天女の里であると共に紅天女の製作者である尾崎一漣のふるさとでもあります。
この紅梅村に伝わる天女が住む谷。そこに咲き誇る梅の木。とある仏師がその梅の谷のご神木で天女の像を掘って世の中の平和を祈願し、それが原因で争いがおきた。
そんなこの村に伝わる伝承をモデルに作られたのが『紅天女』なのだそうです。なるほど。
そしてこちらがこの村でマヤ達一行が住む事になる場所です。尾崎一漣が子供の頃にすごした寺のようです。お世辞にも綺麗とは言えない。
これまで何度か名前が登場している『尾崎一漣』とはどういう人物なんでしょうか?気になるところです。
この村に月影先生が暮らしているはずなのに、なぜか到着したその日の夜はどうやら先生とは会えないようです。こんな夜に一体どこへ?と疑問に思うマヤ。
あの人死にかけの病人なのにアグレッシブなとこあるからなぁ。
とにかく。まぁ会えないもんはしょうがないし特に遊びに行く場所があるわけでもなし。長旅だったし、源造に言われるがまま初日は寝る事にしました。
そして翌日。
マヤが目を覚ますとなぜか誰もいません。隣で寝ていたはずの亜弓も布団を畳んで行方不明。源造もどこにもいない。
みんな朝から散歩かしら?と外へ出て探しに行く事に。しばらく歩くとなにやら怪しげな場所が。
どうやらこの奥に紅天女の谷がありそうな場所を発見しました。
かなり山奥のよくわからない村にあった、しめ縄の飾られた入口。最近ゲゲゲの謎の映画見たんですけど、こういう場所に踏み込むとよくない事が起きますよね。
とんでもない不思議な化け物が出てくるか、これが横溝正史の世界ならこの奥には村の秘密があって殺されます。
でもこのままではみんな見つからないので、先へと進むマヤ。
そしてその先にあったのは、一面の梅の木。紅梅の谷がありました。これがあの紅天女の伝説の谷のようです。
衝撃の光景に驚くマヤでしたが、そこに遠くから鼓の音が聞こえてきました。
鼓の音のする方に目を向けた、その先に居たのは……。
紅天女に出会う
梅の木の下にいる謎の女性。もしや紅天女!?
紅梅村にある禁足地の谷。その中で出会った謎の女性。しばし見とれるマヤでしたが、その女性が振り向くと。
というわけで、謎の女性の正体は月影先生でした。
ちょっと前に1回マジで死にかけた割には結構元気そうでなによりです。いつの間にか亜弓や理事長までその場に集まってきてのしばらく談笑タイム。
ついにここに来るに相応しい資格を手に入れてやってきた2人の愛弟子との再会に喜ぶ月影先生。
どうやらここに来てからは毎日こうして稽古しているそうです。何度やっても新鮮な発見があるそうで。
マヤ達にはマヤ達だけの紅天女があるはずだから、自分達の紅天女の完成を頑張りなさい。と励まされるマヤと亜弓。
その励ましを受けて緊張の面持ちで受け答えする亜弓。普段は死ぬ死ぬ詐欺の脱獄女王の月影先生ですが、今この時目の前にいるのは生きる伝説ですからね。さすがにそこは緊張するでしょう。
が。
そんな緊張の亜弓とは対照的に先生の話も上の空で聞いていたマヤ。梅の木を凝視して立ち尽くします。
こんな梅の木の精になれるなんて考えたらワクワクしちゃってあたし
このマヤの発言を聞いて、いよいよ憧れの伝説に挑むプレッシャーで死ぬほど緊張していた亜弓のスイッチがONに。
『どうしてそんなに楽しそうに出来るの!?まるでままごとでもするみたいに……!!!!』
内心から湧き上がる焦り、苛立ち、嫉妬の感情を押し殺す亜弓。
物語が核心に迫ってきまして、戦いの舞台が演劇バトル界の最先端に近づけば近づくほど、マヤの持った『天性の何か』に劣等感を抱く機会がどんどん増えていく亜弓。
亜弓がどれだけ悩んで努力をしても、それを『無自覚で』超えていく芝居星人北島マヤ。
メタ的な意見で言えば、この物語の主役はマヤなので王道でいけばマヤが勝つはずです。しかし。その上でどこまで亜弓が食い下がっていけるか。そここそ見所だと個人的には思います。
なんというか、あまりにマヤが無自覚系最強主人公感があって、逆に亜弓を応援したくなるんですよね。
さて。そんな対照的な2人に紅天女の物語を簡単に語る月影先生。
ザックリ説明すると、戦で乱れる国の平和を願う帝がとある仏師に天女の仏像を彫るように依頼。
しかし仏師はどうしても気に入る天女の像が彫れない。思い悩む仏師は『樹齢1000年になる梅の神木がある』という話を聞きます。
その木を使って天女の像を彫ればきっと天女の魂が宿った像が出来るに違いない!
そしてその木を探す旅に出た仏師はとある乙女と出会います。樹齢1000年の木の梅の精である紅天女と……。
という内容。出会った仏師と紅天女の物語なわけですね。
紅天女というのは『樹齢1000年の木の精』であるというのが特徴ですから、当然普通の人間を演じるのと同じようにやっていてはダメです。
というわけで。
突然ここで月影先生から『2人とも梅の木を演ってください』という指示が。ついに月影流紅天女の修行が始まったのです。
大慌てでスイッチを切り替えて梅の木になるマヤと亜弓。
突然言われてそれぞれの形で梅の木を演じる2人。
ダイナミックで綺麗な形の梅の木を演じる亜弓でしたが、この姿勢のままでの長時間の待機に疲労感が出てしまいます。
一方、見た目は地味ながら安定感のある梅の木を演じたマヤ。パっと見た感じは地味で面白味の無い形ですが、長時間になればどんどんその安定感から『梅の木に近づいていく』という評価でした。
しかし、結局舞台上ではそんなに長時間梅の木を演じる事は無いので、舞台でやる分には美しい形の亜弓の方が正しいと言えるでしょう。という評価も。
お互いがお互いを認め、ライバルとして意識している関係性。いきなり火花もバチバチです。
紅天女は梅の木の精。では、梅の木が育つには何が必要でしょうか?という問いを投げかけてくる月影先生。
梅の木を構成するために必要な自然。そして自然の循環を構成する風、火、土、水。
その4つを理解して演技する事が出来なければ紅天女を演じる事は出来ません。
というわけで、今回この紅梅村では『風、火、土、水』の自然の要素を理解し演じる事が出来るようになる。というのが課題。
なるほど。FFのクリスタルみたいな話ですが、この4つの試練に挑戦する事になりました。
まず最初の課題は風。
風を演じるとは?
マヤはともかく亜弓の方はそんなに長く多く月影先生から色々教わったわけではありません。確かに亜弓を教えていた先生はみな一流だったかもしれませんが、ここにいる月影先生は芝居に関しては超一流です。
いきなりの抽象的な教えについていけるのでしょうか?
『風とはなんぞや?』
悩むマヤと亜弓。果たして答えは出るのでしょうか?
一方。場面は東京の速水邸に。
紅天女を巡る策略の会話をする真澄と英介。段々と英介をも上回る実力を付けつつある真澄。という感じです。
さらに場面は変わり。今度は速水の別荘です。
別荘で1人マヤの事について悩む速水。
いつかはマヤも真剣な恋をして他の男のものになってしまうかもしれない。そのとき、俺は冷静でいられるだろうか?心から祝福して紫のバラを贈れるだろうか……?
その自分への問の答えは。
『誰にも渡したくない……!そんな事になったら俺は気が狂ってしまうかもしれない……!!』
北島マヤガチ恋勢です。
血の繋がりは無いはずなのに、着々と義父が歩んだ道を同じ道を歩んでいく速水。ただ、義父と違うのは月影先生は一漣の事が好きでした。でもマヤは速水に気持ちが傾きつつある。押せば倒れるという感じではあるので、義父よりは全然脈有りです。
そんな1人悩む速水の元に、紫織お嬢様がやってきます。
『お見合いのお返事はどうでしょうか?』
そう切り出す紫織。
あなたがとても好きです
涙を流しながらその気持ちを、愛を告白する紫織。
さぁややこしくなってきました。これまで35巻にもわたって描かれてきた複雑なマヤと速水の関係に、途中から割って入る大金持ちのお嬢様。
本当の気持ちはどうあれ、立場上簡単にNOと言う事が出来ない速水。そしてこれまで世間というものをあまり知らずに育ってきたお嬢様の紫織。
引きたいが引きない速水。引く事を知らない紫織お嬢様。この2人の関係にも注目です。
何度でも言いますが、俺は紫織が嫌いです(真顔)
それから
ここまでで35巻の半分くらいです。ここからは、いよいよ風の試練に挑むマヤ&亜弓。
それぞれが悩んで出した答えとは?
どんな結果であってもとにかくマヤに怯え続ける事になる亜弓
風を『演じた』亜弓と風に『なろうとした』マヤ。そのどちらが正しいのかは今はまだわかりません。むしろ、そこに『正しい』は無いのかもしれませんが。
そして風の試練の次に挑むのは火。火の試練です。
風の試練の結果を受けて、さらに次の火の試練に挑むマヤと亜弓。
『火を演じる』とはどういう事なのか?
さらに。
舞台は紅天女だけいれば成立するというわけではありません。自分達の紅天女を掴むために努力しているのはマヤと亜弓だけではないのです。
演出家の黒沼。そして紅天女の相手役である『仏師 一真』を演じる桜小路もまた悩んでいました。
紅天女はまだ演じていた月影先生が生きているから教えてもらえますが、男性陣は一漣はもうこの世にいませんからね。もしかするとある意味マヤと亜弓よりも大変かもしれません。
そして。
速水に愛を打ち明けるも渋い反応を目にして泣きながら去ってしまった紫織。そこから体調を崩して寝込んでしまいます。それを見舞いに行く速水。
しかし。その反応は厳しいものでした。
壊れていくお嬢様
情けや同情で優しくしてくれるならいらない。私はこんなに好きなのに、どうしてそんな事をするのですか?
と泣きながら訴える紫織。
いや、まぁ……。ここで素直に『もうやめましょう』と言えればどんなに楽だろうか……。
紫織はあくまで対等な立場として、速水に自由意志があるつもりで会話していますが、一方の速水目線で見ればこれはどこまでいっても政略結婚であり『速水真澄のため』ではなく『大都芸能のため』なのです。
しかもこの場面に紫織のおじいさままで立ち会っての『で?返事はどうすんの?』という大人の詰め。そこにあるどうにもならない強制力に、気付かないのは世間知らずのお嬢様だけ。
『今日は正式な返事をしにきました』
そう告げる速水の返事とは?
36巻へ続く
画像:「ガラスの仮面」コミックス35巻より引用
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