【感想】ガラスの仮面 10巻 舞台『奇跡の人』の三重苦のヘレンを演じるための過酷な生活。
あらすじ
「奇跡の人」で、三重苦のヘレン・ケラー役を目指すことになった運命のふたりマヤと亜弓。それぞれのヘレンを目指し、過酷な稽古がはじまる。そんな中、マヤの心の支えであるただ一人のファン、会うことも許されない「紫のバラのひと」と稽古中の別荘で…。 bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は美内すずえさんです。間違ってはないんですが、なんか微妙に不純な感じがする文章ですよね。
登場人物
北島マヤ:亜弓の演技を見て自信を喪失し、奇跡の人のオーディションを断るがそれを知った月影先生から破門を言い渡される。破門を解除してもらう唯一のチャンスとして、奇跡の人のオーディションを勝ち取る事を条件に出された。なんか、上手い詐欺みたいな展開。
姫川亜弓:舞台『奇跡の人』のヘレン・ケラー役のオーディションでマヤ達と争う。
感想
ついに始まる舞台『奇跡の人』のオーディション。果たしてマヤはヘレン役を勝ち取る事が出来るのか!
はい。というわけで、今回紹介するのは『ガラスの仮面』の10巻です!
ついに10巻の大台突破。このブログ史上初です。まぁ初とか言っても何書くかは俺のさじ加減なんですけどね。
この『奇跡の人』シリーズは、個人的には序盤のヤマというかとても好きなシリーズです。狂気の役者魂が感じられる素晴らしいシリーズなので、ぜひ読んでみてください。
特訓が始まる
三重苦(見えない・聴こえない・話せない)という障害を背負ったヘレンの役を演じるための練習が始まります。
ヘレンの病気は生まれつきではなく1歳半の時の病気による事が原因のようなので、まったく外の世界を知らないかと言えばそうでもないようですね。
この漫画は今から約40年近く前に描かれた漫画なわけですが、今の世の中なら同じ内容で出版できるんですかね?実在の人物。しかも多重の障害を背負った少女を題材にした舞台の漫画ですから、デリケートな題材だよなと思います。
そう感じてしまう事自体が悲しい事だと思いつつも、どうしても難しい問題だよなと考えたり。
まぁそういう大人の事情はともかく、これはフィクションの世界の出来事ですから、漫画の話をしましょう。
舞台『奇跡の人』は、審査員に亜弓の母や小野寺。演出家に小野寺と、アウェーの空気ではありますがそんな事も言ってられない。
いつものように教会の稽古場で、いつものように病院を脱走してきた月影先生と演技の特訓です。
9巻最後の話で、花瓶を落とした音に反応してしまったマヤを叱責する月影先生。聴こえないのに反応するのはおかしい!という理屈。これ凄い難しい。
次なる月影先生の指示は『あなたの大好きな人形を探しあてなさい!』というもの。
見えない、聴こえないヘレンは一生懸命に人形を探します。
ついに人形を探し当てました……。が。
『今少し左に回って人形をとったのはなぜか?』と月影先生に詰められてしまいます。
よく見るとわかると思うんですが、人形の近くに釘が出てるんですよね。当然狙ってそこに置いたわけなんですが、それを回避したマヤを叱る月影先生。言いたい事はわかるけどちょっと理不尽なのでは?
そしてここから月影先生の猛特訓が始まります。
『ヘレンとして遊んでみせなさい!』と指示を出す月影先生。これが出来なければ本当のヘレンの生活はわからなくてよ。と。
そんな特訓の場に速水がやってきます。
いやほんとそうですよね。
名義は違えど出資者としてみればこんな腹立つ状況なかなか無いですよ。良かれと思って病院の治療費出してるのに、当の本人が病院を『ちょっと不自由な別荘』くらいにしか思ってないんじゃない?って。
そしてなんと、稽古場代わりに使っていたこの教会の取り壊しが決定し、さらに月影先生の病状も悪化してまたしても病院に戻る事に。
これからどこで稽古しよう……。悩むマヤでしたが、そんなマヤの元に紫のバラと手紙が届きます。
どうやら紫のバラの人は、長野の別荘へ招待してくれているようです。人も手配するし交通費も出すから、身一つで来ない?と。
いいなぁ。俺も行きたい。当時はwifiどころかネットも携帯も無いのでする事無いけど。
これに即答で乗っかるマヤ。そこに行って稽古がしたい!と。
物語の都合と言えばそれまでですが、特に『稽古に使ってください』という言葉は見当たりませんので、結構あつかましいですよね。まぁ紫のバラの人もそのつもりで招待してるんだからいいんですけどね。
そんなわけで、ヘレンの特訓のために長野へと向かうマヤでした。
亜弓の特訓
耳や目の不自由な人達のお世話をする施設の中に、亜弓と思われる人物がいました。
演技の特訓の一環なわけですが、もし現代で有名なスターがこういう事をするとたぶんなんやかんやで炎上しそうな気がしますよね。ほんと世知辛いな現代。
一方、他の候補者達もそれぞれのヘレンを演じるために熱心な練習を重ねるのでした。
そして、長野の別荘に到着するマヤ。
ここでは、基本1人ですが掃除や食事の世話をしてくれる『別荘番』という係の人がいるそうです。
羨ましいと思う反面、長野の山奥で携帯も無い時代に夜1人とか結構怖いわ。作中では夏の避暑地ですが、これが冬なら『こんや 12じ だれかがしぬ』ので恐ろしい環境ですよね。
パっと見た感じではかなり優雅な別荘暮らしの風景なんですが、マヤの目的は別にダラダラするために来たわけではありません。
東京で月影先生に言われた『ヘレンとしての遊び』について考えるマヤ。しかしまぁビックリするくらい真面目な子だなぁ。
特にヘレンでなくてもやった事無い種目があったりしますが、優雅な避暑生活ではヘレンの置かれた過酷な環境の理解は難しいでしょう。
『若い者がいつまでも家の中に居てはいけない』とかいう理由で別荘番のオバサンに家から追い出されるマヤ。娯楽といえばアウトドア。みたいな価値観だった時代から、結構変わったよなと感じます。なんか今回時代を感じるな。
というわけで。
まずは手始めに、森の中を目を閉じて手探りで歩き、ヘレンの気持ちを理解しようとするマヤ。
当然木の枝にひっかかったり根っこにつまずいたりで、ボロボロになってしまいます。
そして夕方。マヤが家に帰ってきました。帰宅したマヤを出迎えてくれる別荘番の人達。
じ、事件だーーー!!
朝から出かけてって、帰ってきたJKが服がボロボロになって泥だらけでした。
「ただいま(ニコッ)」じゃねぇよ!えらいことですよこれは!!
『森の中を散歩してたらこんなんになった』と言い訳するマヤでしたが、そうはならんやろ。
そして、別荘番の人達と食べる夕食の時間。都会ではどんな事が流行ってるの?学校ではどんな友達がいるの?ロック歌手にオネツなの?など、些細な日常会話を振ってくる別荘番の人達。
一方、あんまり話を聞いていないマヤは、ヘレンとしての食事とはどういう物か?を考えます。
さっそく手づかみで食べ始めるマヤ。それを見てギョっとする別荘番の人達。
そうですよね。割りと演技狂が多く登場するのでマヒしそうになりますが、こういうのが普通のリアクションですよね。
『あたし時々目が見えなくなるの』とかいう、本気か冗談かわからない言い訳をしますが、別荘番の人達も段々とマヤのちょっとおかしな部分に気が付き始めます。
次にマヤが始めたのが、目を開けたままさも目が見えないかのような感じで階段を降りてみよう!という、結構ハード目なミッション。自分に厳しすぎる。
目が見えない風であっても、とりあえず階段は階段なのだから順調に降りていくマヤ。
しかし。その進路上にはなぜか本が放置してありました!このままでは本を踏んで転倒してしまう!
しかしこれをマヤは回避。見事転倒せずに済みました。
が。当然?それではダメなのです。目が見えないヘレンなら、これを踏んで転倒すべきなのです。
『本能が危険を避けたんだ!』と悩むマヤ。こればっかりはしょうがないような気もしますが、妥協は許されません。
一方。
『希望の家』という施設で働く亜弓の元へマスコミが殺到。
マスコミの主張は『あの姫川亜弓が演技の観察のためにボランティア活動と偽ってこの施設に紛れ込んでいる』というもの。
こんな事人道的に許されるわけがない!という事でした。まぁそうなるよね。悪意あるかもしれないもんね。
しかし。施設での亜弓の実態は違いました。最初の頃こそはお世話する側だったのですが、今はお世話される側として施設にいると。
どういう事かと不思議に思うマスコミの前に、亜弓が登場します。丁度、階段を降りるところの亜弓の前に、リンゴを置くいたずらを仕掛けるマスコミ。
そして、それを踏んで転倒する亜弓。彼女には、このリンゴは見えないのです。見えない物として扱っているのです。
マスコミのいたずらを知って激昂する施設の人。できればそうなる前に止めてあげて欲しかった気もしますが。1歩間違えたら死ぬんやぞ!
この施設での亜弓の生活は、他の人と見分けがつかないくらいのレベルでの生活を送っているそうです。
過激になっていくマヤの特訓
どうしてもヘレンの気持ちが理解できないマヤ。どうしたらヘレンの気持ちに……。
そうだ!じゃあ同じ環境になってみよう!
というわけで。
粘土で耳をふさぎ、さらしのような物で視界をふさぎ。見えない、聴こえない環境を再現しようとします。
そしてそれから1日が経過し。
朝になって別荘を訪れた別荘番の人達が見たのは、ぐちゃぐちゃに荒らされた別荘の中でした。
強盗でも来たのかもしれない。大慌てで別荘内を散策しようとする別荘番の人達でしたが、2階からなにやら物音がします。
慌てて2階に上がった別荘番の人達の見たものとは……。
ぐちゃぐちゃに荒れた室内で呆然とするマヤの姿でした。怖いよ。警察呼ぶよこんなん。
心配してかけよってきた別荘番の人達に、手で書いた文字で『三重苦のヘレンの生活を再現しているだけだから大丈夫。あたしにかまわないで』とメッセージを伝えるマヤ。
とんだやべぇ奴が来たもんだ。かなり困惑する別荘番の人達でしたが、とにかくここからマヤの壮絶な生活が始まります。
なにもかもが手探り。ご飯を食べるのもままならない生活。ヘレンは、見えない聴こえないとはいえ自分をサポートしてくれる家の人がいたはずなので、そういう意味ではヘレンよりも過酷な生活だと言えます。
手探りで缶詰を探し、缶切りを見つけ、食べるためにナイフかフォークでも……。と探している最中に缶詰を地面に落としてしまいます。
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ってなるわ。
絶望しかねぇ。
お腹はすくし、階段から落ちるし。もうこんな生活やめたい。わずらわしい。と思い始めた頃。別荘に来客があります。
階段から落下し、足を捻挫したため立つ事もままならないマヤを、抱きかかえ支える謎の人物。
山下さん(別荘番)じゃない……。誰なの……?
と疑問に思うマヤ。
『あなたはだれ?』と手に書いた文字で伝えるマヤに、謎の人物は自分の持ち物で答えます。
紫のバラで。
渡されたそれがバラである事に気付き喜ぶマヤ。これ結構危うい場面ですよね。目隠しを外すと正体がバレる。
喜びで駆け寄ってくるマヤ。そして、それを抱きしめる紫のバラの人。
これリアルタイムだとさぞ話題になったんじゃないかなと思います。これはなかなかキュンときますね。
マヤをお姫様抱っこで抱きかかえ、ソファーの上に置いて去る速水。
これに、思わず声を出して呼びかけてしまうマヤ。しかし、目隠しを取ろうとはせず、また速水も声をかけたりせずに手で文字を書いて応援を伝え別荘を去ります。
そしてこの事がきっかけで、よりやる気を出すマヤ。必ずヘレンを掴んでみせる!!
それから
この辺でだいたい10巻の半分くらいになります。
ここからは、より壮絶になっていくヘレン役を掴むための特訓。施設で過ごす亜弓。別荘で過ごすマヤ。境遇は違えど、2人のヘレンに向かう姿勢が対比されながら描写されていきます。
自らの爪を噛み、はじき、遊びとする亜弓のヘレン。
偶然拾った毛糸の塊をほどいて階段から落とし、また拾って丸め、またほどいて……。という遊びを見つけるマヤのヘレン。
天気が悪くなり、なんとなく窓に向かったマヤ。開いた窓を閉めようとしたのですが、窓枠が落下。手が挟まってしまいます。さらに、自力では窓枠を持ち上げる事が出来なかったので、手は挟まったままに。
この時別荘番の人達は別荘に居ました。なので、声を上げて助けを求めればよかったのに、マヤはそれをしなかったのです。
凄惨な特訓の果てに、ついにやってきたオーディション。果たして結果はどうなるのか。
11巻へ続く。
画像:「ガラスの仮面」コミックス10巻より引用
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コメント一覧
たまたま辿り着きました。くすくす笑ってしまう記事で楽しかったです!