【感想】ガラスの仮面 9巻 母に起きる異変。そして舞台で始まるアドリブ心理戦
あらすじ
「石の微笑」で全くセリフのない人形の役を与えられたマヤは、月影千草指導の下、役作りにのぞむ。その頃、娘の成長を陰で見守る母・春が行方をくらました。マヤの人形の仮面はどうなるのか? bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は美内すずえさんです。
登場人物
北島マヤ:舞台『石の微笑』でエリザベスという人形の役を演じる。好評のまま迎えた千秋楽だったが、そこでとある大事件が起きてしまう。
姫川亜弓:舞台『夢宴桜』にてついにマヤとの共演を果たす。その舞台上にて、マヤとまさに台本の無い真剣勝負を繰り広げる。
感想
マヤのお母さんが!!そしてついに亜弓との初共演も!!
はい!というわけで、今回紹介するのは『ガラスの仮面』の9巻です!
ついに俺も49巻まで読み終えました。あぁもう凄いショックですよね。これで取り合えずガラスの仮面世界の果てに辿り着いてしまった。
果てなき50巻待ち民としてこれから過ごしていくわけですが、何が悲しいって50巻が出ても50巻しか読めないところですよ。伝わりますかねこの気持ち。
40年かけてやっとこさ49巻なんですよ?それで新刊が1巻出てまた待ちとかあんまりじゃないですか。一気に53巻くらいまでは発売してもバチは当たらなくない?
まぁ別にリアルタイムで40年待ってるわけではないんですけどね。キャリアでいえば相当新参なんですけどね。
でも、物語の結末を見る前に亡くなってしまった方も決して少なくない事を考えると、長生きせねばと思います。
では紹介していきましょう。
母の身に異変が起きる
マヤがエリザベスという人形の役を演じる舞台『石の微笑』は大好評。
その好評ぶりを聞きつけ、大都芸能のスカウトマンが客席にやってきていました。
彼が探していたのは、近々オープンする大都劇場での舞台『奇跡の人』のヘレン・ケラー役を演じる少女。
ヘレン・ケラー役の少女をプレゼンする会議?の場で、人形役の少女の素晴らしさについて熱弁する黒服。
マヤの人形を見て感じた気持ちを熱心に語り、これがその少女です!と速水に写真を突き付けました。
これには速水もニッコリです。
そしていよいよ『石の微笑』は明日、千秋楽を迎えます。
千秋楽前日に、マヤの元を訪れたとあるお客さん。やってきたのは、舞台『嵐ヶ丘』で共演し子供時代のヒースグリフを演じた真島でした。
「毎日見に来てたんだよ。気づいてた?」
と聞く真島に対して返事をするマヤ。
そして、そのマヤの背後にキャシーを見る真島。ギリギリです。非常に危うい精神性です。
高校はどこへ行くのか?など、他愛もない日常会話を繰り広げる2人でしたが、そこで唐突に真島が
「つきあってくれませんか?ぼくと」
と、爆弾をぶっこんできます。
マヤに付き合ってくれと言っておきながら、キャシーの素晴らしさについて語り始める真島。
マヤが好き。というよりは、マヤが演じるキャシーが好きなわけですが、そんな事言われても困りますよね。そこはマヤにとっても大切な思い出だと思いますが、もうすでに過去の話なわけだし。
その突然の告白に対して、赤面し動揺しながらもちゃんと答えるマヤ。結構真面目。
真島君には由紀さんがいるのに。それにあたしなんてなんの取り柄も無いつまんない子です!舞台の上のキャシーとは違うわ……。
まぁそうだよね!キャシーとは違うよね!せめてマヤとして見てほしかったよね!
正直もうちょっとやりようがあったと思うんですが、とにかく。顔はいいけどちょっとだけ思い込みが激しい真島はフラれてしまいました。
「少なくともきみのあのキャシーにぼくは恋していた」
とか言ってますが、本当にちょっと困りますよね。キャシーはそんな事言わない!とか言い出しそうで。
個人的にはこの真島は好きです。他が演技バカの狂気を感じるのに対して、彼は何か別の狂気を感じる逸材だったので。
そんな淡いロマンスも終わり、今回の舞台をなぜか見に来なかった桜小路を思い出すマヤ。いいひとなのに……。
そして。
いよいよ千秋楽当日の朝。またしてもマヤの元へ来客が。
なんと、今度の来客は杉子さんでした!
……誰やねん。と思うかもしれません。マヤが以前に母と住み込みで働いていた中華料理屋の娘さんです。
大雪が降る大晦日。120軒分の出前を1人で終えられたら演劇のチケットをあげる。という狂気の出前レースをふっかけ、見事演劇のチケットを強奪された女の子です。
そんな杉子さんがマヤを探し出してまで伝えたかった話とは。
なんと、マヤの母が行方不明になりました。
ここで初めて、母の近況について知らされるマヤ。我々は当然色々な事を知っているんですが、マヤはこれまで何も母の事を知らされていませんでした。
『あたしが家出した事まだ怒ってる?』くらいの、軽い感じで入った会話の流れはマヤ自身がまったく想像していなかった方向に向かいます。
去年の秋頃から肺を患って今年は寝たきりだった事。
そしてついにお店を辞めて結核の療養所に入った事。
でも3日前に、そのサナトリウムからいなくなって行方不明になってしまった事。
読者目線で見ても『サナトリウムからいなくなった』というのは初耳です。
当然母の事を心配するマヤ。
働けないのにお金もないのにどうしているの。
知らなかったんです。マヤは。何も知らなかったんです。実の母親の命に危機がせまっているのに。
母だって、口は悪くてキツイ性格でしたがいつでもマヤの事を想っていました。ちゃんと連絡が取れていれば、もう少しわかりあえていたのに。
マヤだって舞台に出ている稼ぎがあるし、なんなら速水に頭を下げる事だってできたのに。
携帯がある今の時代ならなんでもない壁かもしれませんが、この時代にはそれが無かった。親子の絆は今でも引き裂かれたままなのです。
俺ね。本当にこの親子が可哀想でたまらんのですよ。2人はそんなに悪くないんですよ。確かにマヤも自分から会いに行けばよかったのかもしれませんが。
とにかく周りの大人が自分の事しか考えないクズだらけなせいで、辛い目に合うんですよ。
で。前にも書いたと思うんですが、とにかくこの親子がこうなった最初のキッカケは、月影先生が小包を燃やしたりしていた事です。許さないからな。
舞台に立つ
急な報せに動揺し、街中を母を求めてさまようマヤ。なんとそこに、偶然母らしき女性の姿を見ますがこれを見失ってしまいます。
頭の中で蘇る昔の母との記憶。
40近くなると、親子の絆みたいな話を読むとどうも目から変な何かが出そうになるんですが、とにかく。
こんな辛い気持ちであっても舞台の時間はやってきます。ついに迎えた千秋楽の舞台。
これまでと変わらず舞台上で人形を演じるマヤでしたが、その心の中はおだやかではありません。
ごめんね!ごめんね!母さん。長い間ほうったらかしにしてごめん!母さんにはあたししかいないのに……。あたししかいないのに……。
母を想う少女の心の中から溢れ出た気持ちは、ついに涙となってしまいます。
舞台上。涙を流すマヤの人形。
とっさの麗の機転でマヤの顔に水をかけ、なんとかやり過ごしましたがその舞台裏。
たとえどんなことがあったにせよ役者が舞台の上で仮面をはずして素顔をみせるとはなにごとです!
お前、どの口がそんなこと言うんや!
俺がもしその場にいれば月影先生を引きずりまわしてやるところですが、残念ながらそれはできません。
舞台上で人形なのに涙を流すという失態をみせたマヤに対して月影先生は『役者失格』とまで言い切ります。
このクソババァ……!!
母を探す
麗の機転もあって、とりあえず舞台は成功しました。舞台が終わり、必死で母を探して街を歩き回るマヤ。
泥だらけになり、ひたすら足で探し回るマヤでしたが母は見つかりません。
そして3日後。外は大雨なのに必死で母を探すマヤ。すぶ濡れになりますが手がかりらしきものはありません。途方にくれてしまい、雨宿りをします。
その雨宿り先が、大都関係の劇場だったのでマヤは速水に出会います。
そこで突然代役を依頼され、それを引き受けるマヤ。なんの練習も無しにほぼぶっつけなのに。
そして、なんとこの舞台で共演する相手が。
母を探し、途方にくれて雨宿りをした先の劇場で偶然速水と出会い、そこで引き受けた代役で亜弓と共演を果たす。凄い展開です。
マヤの演じる役は『千絵』という名前で、亜弓が演じる『月代』とはいとこの関係になります。
突然の代役の登場に動揺する他の演者達。昔はともかく最近ではマヤも名前が知られてきており、北島マヤがどういう経歴の何者なのか知っているようです。
台本を渡され、舞台はなんとあと45分後。それまでに、自分のセリフはもちろんの事他の役の人のセリフも覚えなければなりません。
自分のすぐ隣で大きな音で電話が鳴ってもまったく気づかないほどの集中力で台本を読むマヤ。それを見て動揺する他の演者達。
そして、もしかしてこれが電話だという事がわからない世代がこの記事を読むのかもしれないという恐怖を感じる俺。
固定電話っていう概念を理解できない子ってもう絶対いるよね?
嫉妬と陰謀
『紅天女候補』であり『舞台あらし』として有名になりつつあったマヤに、嫌がらせをしてやろうとする共演者の陰謀で、本番で使う物とは違う台本にすり替えられてしまったマヤ。
マヤはそれを熱心に覚えます。
そしていよいよ出番が近づき、舞台の袖で待機していたマヤが、自分が読んでいた台本と実際の劇の展開が全然違う事に気が付きます。
この劇の台本は作成の途中で設定が大きく変更されており、マヤが読んでいたのはその設定変更前の台本でした。
セリフも物語の筋もマヤが知っているものと全然違う。今から覚える時間も無い。
当然騒動になる舞台裏。千絵の出番を取りやめるべきだ!と取り乱す速水。
しかし。舞台から千絵を呼ぶ声がかかり、なんとマヤはそのまま舞台に出ていきます。
舞台上、対峙するのはマヤをはめた共演者。まったく内容を理解していないはずのマヤが舞台に出てくるのは想定外だったようです。
当然何も知らないマヤは舞台上でアドリブで通そうとします。これに対応出来ない共演者。自分達で仕掛けた罠なのに、自分達の首を絞める結果になりました。
そんな舞台上の様子を見て、本来出番ではない亜弓が動き出します。
劇を止めないために。本来出番ではない亜弓と、まったく筋を知らないマヤが舞台で共演します。
まったく話の内容を知らないマヤに対して、打ち合わせなど一切無いこの状況で、マヤの気持ちを、言い出すセリフを全てコントロールしなければならない。
という、かなり難易度の高いアドリブ劇がここから始まるんですが、ここからの展開が凄い熱いんですよ。客があってミスが許されない舞台上でのお互いの心を察して操る超心理戦。
まさにこれぞ『演劇バトル』の真骨頂です。
『だまって聞いてちょうだい』そして『もし返事をしたければかまわない。千絵として感じたまま思ったままを口にしてちょうだい』
というセリフによって、まず黙って話を聞いてほしい。そして、そこからはアドリブ劇が始まる。という事を伝える亜弓。
思い出話という形で、千絵の設定を語り始める亜弓。そしてそれを黙って聞き、千絵の立ち位置やその感情を把握し即興で自分の中に千絵像を作っていくマヤ。
ホントこの辺凄い面白いですよ。
亜弓の話を聞いて、亜弓は千絵の境遇を教えてくれている。という事はわかるんですが、そこからさらに『なんのために?』という洞察が出来るマヤマジ凄い。
ここから始まるアドリブ超心理戦劇はぜひ実際読んでほしいです。切り貼りしたしょうもない感想ではもったいないので。
それから
ここまでで9巻の半分くらいです。ここからは、ついに高校に進学したマヤと、新しい舞台への道のりの話。
紫のバラの人の支援のおかげで高校にも進学する事が出来たマヤ。
学校の受付に紫のバラが届き、もしかしてまだ近くにいるかも!と受付に向かって走るがそこに姿はありませんでした。
そんなマヤの目の前に停めてあった大都芸能の車。その車内にはなんと……。
どうして紫のバラがあんなところに……?
亜弓の演技を見せられ自信を無くしてしまうマヤ。
ヘレン・ケラーの『奇跡の人』の舞台の話がきても、同じオーディションを亜弓が受け、しかもヘレンの家庭教師役のサリバン先生が亜弓の母である姫川歌子だという事を聞いてオーディションの誘いを拒否してしまいます。
そして、それを聞いた月影先生はマヤを破門に。しかし、そのオーディションを受けてヘレン役を勝ち取ってくれば破門は解いてあげましょう。と。
そんなわけで、まずはヘレン役を勝ち取るためにオーディションに挑むマヤでした。
というところで9巻は終わり!10巻からはいよいよ本格的に舞台『奇跡の人』の話になっていきます。
ここも面白いところです。この辺で『まだあと39巻もあるからまだまだ楽しめるな』とか思っていると、ズブズブと沼にはまっていくのです。
気が付いたらその月の電子書籍の請求額がとんでもない事になっているのですよ……。
10巻へ続く。
画像:「ガラスの仮面」コミックス10巻より引用
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