【感想】ガラスの仮面 16巻 突然の不幸。そして大きなスキャンダルに巻き込まれボロボロになっていく
あらすじ
何度も壁を乗り越えてきたマヤだったが、乙部のりえの仕掛けた巧妙な罠に陥る。母の死は、大都芸能の社長、速水真澄との対立をますます深めていく。出口を探し、さ迷うマヤ。それは女優生命の危機だった bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は美内すずえさんです。
登場人物
北島マヤ:突如訪れた母親の死。それに関わる大都芸能の闇。さらにマヤをおとしいれる罠。と、この巻は本当に可哀想でみてられない。
感想
大きな困難が一度に訪れ逃げ場の無い環境へとマヤは追い込まれていく
はい!というわけで、今回紹介するのは『ガラスの仮面』の16巻です!
20巻が手の届く距離に近づいてきました。それでもまだ半分いかないくらいなんですけどね。それにしても相当古い漫画で、作中の描写も今からすると時代遅れ(当たり前)なんですけど、面白いですよそれでも。
今もしリメイクしてアニメ化とかされたら深夜枠で絵が萌え的になってマヤと亜弓の百合成分多めとかになってがっかりしそうなので、やはりこの当時のこのセンスがいいですね。
では紹介していきましょう。
母の死を知る
ついに母の居場所が判明し、喜ぶマヤ。
しかし、居場所が判明したのと同時に知ったのは母の死でした。
もうね。この巻全体的にマヤが可哀想で可哀想で見てられないんですよ。もうオッサンになったなぁ。すぐ泣く。漫画でもアニメでもラノベでもとにかくなんでもすぐ泣く。
ようやく待ち望んだ母の居場所。そして同時に聞かされた訃報。
母の死までの詳細をマネージャーの水城から聞かされるマヤ。
山梨の映画館の中で『白いジャングル』の上映中に亡くなった。盲目になっており、さらに肺結核も患い、1年ほど前から長野の小さな診療所で療養をしていたが、そこを脱走して東京に向かう途中で亡くなった。
と。
お前らがっ……!!!
と読者目線としては思うわけですが、マヤ本人はそんな事など知るはずもなく。
そして母が亡くなった山梨県にある、遺体が収容されている病院に向かうマヤ。
そこで、久しぶりに母と対面を果たします。
母をトラックに乗せてくれた親切なドライバーさんから、トラックを降りるまでの母の様子を聞かされるマヤ。
お医者さんが言うには、全身すぶ濡れになった事で極度に病状は悪化していたと思いますが、直接の死因は頭部打棒による脳内出血。見えない目でマヤを求める旅路の中で車に撥ねられた時の事が直接の死因となったようです。
泣き崩れるマヤ。
もうなんだよこれ。なんでこんな目に合うんだよ。楽しんでやってたじゃないか。嫌な目にもいっぱいあったのに、それでも心折らないで頑張ってきたのに。
こんなんあんまりだよ……。
そして。
マヤの母の死を電話での連絡で知る速水。
マヤが母の事を知る事が出来なかった、会う事が出来なかったのは母と子の劇的な再会を演出しようとしてマヤの母をほぼ監禁し情報を遮断した大都芸能の陰謀が原因です。
大都芸能の調査能力が無ければそもそも母を見つける事も難しかったかもしれませんが、知ったうえで隠し続け、さらにその機会を永遠に奪った速水の罪は非常に重く許されるものではありません。
そして。
マヤの母の死がマスコミにバレ、病院に殺到します。
『行方不明のお母さん発見とその死亡』
そんな見出しの記事を書こうと押しかけてくるわけですが、このカスどもがっ!と思うわけです。
もう冷たい遺体となってしまった母に、これまでの出来事を語るマヤ。
もう何回でも言うけど見てらんねぇ……。
序盤の印象としてはただ理不尽に厳しいだけの怖い親。みたいな感じだったんですけどね。マヤにとって唯一の肉親ですからね。マヤも色々あって大人になって、長く離れていた母との再会がこんな事になるなんて。
『もうそろそろお母さんとお別れの時間よ』
とマネージャーの水城に言われ取り乱すマヤ。そらそうだろ。
いつまでも泣き続け取り乱すマヤを見て、水城は『天の輝き』の台本を読み始めます。
それに反応し、セリフを返すマヤ。
そしてマヤは、母に最期のお別れとして演技を見せます。
泣くのをやめ、母の前で沙都子を演じるマヤ。
もう涙が止まりません(俺の)
40近くなると肉親の死とかめちゃくちゃ深く刺さるんですよ。なんだよこれ本当に大都芸能許せねぇっ!!!
俺はずいぶんたってからこの漫画を読んでいますが、これリアルタイムで世間がどんな反応だったのか知りたい。令和時代ならたぶん大荒れだったと思う。SNSで激論交わされたと思う。
そして。
母のお葬式の日になり、母が大切に持っていた自分自身の雑誌の切り抜きの話を聞かされ泣き崩れるマヤ。
その様子を影から見る速水。
舞台『シャングリラ』の初日に行方不明の母親を発見させるつもりだった。
話題作りそれに舞台と北島マヤの宣伝をかねての一石二鳥だと思っていた。
おれが殺した……!
自身の犯した過ちに気付く速水ですが、もう時すでに遅し。時間は巻き戻らないのです。
ふさぎこんでしまうマヤ
マヤの母と大都芸能の陰謀について一切知らされていなかったマネージャーの水城は速水に対して激怒。
『お前のせいで北島親子は不幸になった(意訳)』という事で、速水をガッツリ詰める水城。
今までマヤの側で協力してきましたからね。そら腹も立つ。
いくら世間で冷血漢と言われていようと、それは幼い頃からの境遇がそうさせているだけで本当の内面は優しさにあふれた熱い気持ちの持ち主だと思っていた。
今はまだ自分のそんな本質に気付いていないだけなんだ。
そう思ってこれまで速水に仕えてきましたが、どうもそれも間違っていたのかと。本当に血も涙もない人間なのですか?と。
そんな速水の傲慢が招いた、1人の少女の人生の形を見せつける水城。
母の遺骨を抱いたまま、ふさぎこんでご飯もほとんど食べなくなってしまったマヤ。夜も寝ているかどうか怪しい。
迫るシャングリラの公開初日は1週間後。もう明らかにそれどころではないというか、これがもし現代なら大都芸能は連日の大炎上間違いなし。
悲しみに心閉ざしてしまったマヤを見て、激しい罪悪感に襲われる速水。
そしていよいよ舞台『シャングリラ』が始まります。
真実を知る
舞台の初日前日。舞台での稽古の時であってもマヤは母の遺骨を持ったまま。
当事者間で言えばこうなってもしょうがないというか、その痛ましい気持ちはよくわかるのですがそうではないあんまり関係無い人から見たら、ちょっと(だいぶ)厄介な状況。
こんな子と一緒に仕事するとか重すぎておかしくなりそうだぜ……。
しかし。マヤがどんな心境であったとしても時の流れは非情です。いつまでもいつまでもふさぎこむわけにもいかない。
どこかで割り切って線を引かないといけない。まして明日は公開初日。気持ちの切り替えが……出来るかなぁ。
そんなマヤをやる気にさせるために『あなたのお母さんの分の席も取った』と言ってマヤから取り上げた母の遺骨を客席に座らせる水城。
あそこにはお母さんがいる!
その光景を見て少し心に火が灯るマヤでしたが、俺が共演者ならドン引き間違いなしのシチュエーション。
死んだ目で遺骨を抱きかかえながらロボのような演技をする少女と、その遺骨を取り上げ客席に座らせるマネージャー。
とんでもない事になってきやがったぜ。
さらには紫のバラも届き、いよいよやる気が出てきました。マヤ目線で見ればそうだろうけど、読者目線で見れば汚い大人に翻弄される純粋な少女の図ではあるんですが。
しかし。そんなやる気を出したマヤをおとしいれる為に陰謀を計画する者が。
ここ最近ずっとマヤの付き人をしていた『乙部のりえ』という少女。その本名を『田代鈴子』といいます。
熊本出身の天才少女。全日本高校演劇大会で個人大賞を取るほどの実力の持ち主だったのですが、その正体をずっと隠してマヤの付き人をしていました。
その彼女が、ついに本性を現していきます。マヤの母と大都芸能の情報を手に入れ、それを悪用しようと企んでいるようです。
少し元気を取り戻したマヤに、全ての真相を暴露します。
もの凄い勢いで押してきます。ちょっとビックリするよね。
母がいた診療所の看護婦さんとも会って話をし、どんな様子で日々を過ごしていたのか教えられるマヤ。
診療所での生活はほぼ監禁状態で、ラジオやテレビも壊され外界との接触を断たれた状態だった。それも全て大都芸能の宣伝のためで、今では私も院長も深く後悔している。と打ち明ける看護婦。
これを聞いて怒りに震えるマヤ。大都芸能を。速水を殺してやりたいと思うほどに。
そんなマヤ達の話し合いを横で聞いていたなにやら怪しげなゴロつき達が、マヤに声をかけます。
マヤはそんな不良達の口車に乗せられ、コークハイを飲んでツーリングに連れていかれてしまいます。
そして、ここまでの流れの全てはマヤの付き人であったのりえがマヤを罠にハメるための陰謀でした。
陰謀でした。と書くとまるで悪い事をしているようですが、母を巡る様々な出来事の真相を知る事が出来たのは間違いなくのりえのおかげでもあるので、そこだけは感謝してもいいとこなんですけどね。
そこだけは。
不良に連れられどこかの海岸に連れていかれるマヤ。そこで、睡眠薬が混入されたコークハイを飲まされて意識を失ってしまいます。
ヤバイですよね。何されてもおかしくないんですが、この不良はギリギリ優しい不良なのかマヤをどこか人目につかないところに放置するだけで帰ってしまいました。
一方。
マヤの行方不明に気付き探し始める速水達でしたが、そうすぐには見つかりません。なによりこの日はシャングリラ初日。最低でも開幕までには見つけて連れて帰ってこないといけない。
しかも、マヤ行方不明の情報をなぜかマスコミもかぎつけ、大騒ぎになってしまいます。
色々手をつくし、どうやらマヤがいるようだという海岸に辿り着いた速水。小舟に乗せられシートをかぶされ、隠されていたマヤをなんとか発見しますが時すでに遅し。シャングリラの開演時間にはもう間に合いません。
主演抜きで、果たして舞台はどうなってしまうのか。
乗っ取り
主演のマヤは行方不明。ついに舞台の開演時間。これはもしや中止か?
とはなりませんでした。
『いつも近くで見ていたから演技も全部覚えています』
と自ら名乗りを上げたのが。
ずっとマヤの側で付き人をしていた乙部のりえ。彼女が、舞台『シャングリラ』での巫女リーラ役の代役に立候補したのです。
そう。ここまで含めて全てが彼女が描いた計画だったのです。
のりえが演じたリーラは大好評。代役であったとはいえ初日は好評のまま終わりました。
そして、全てが終わってからようやく目覚めたマヤ。目が覚めたあとに読んだ新聞で『北島マヤが失踪した事』と『代役をのりえが務めた』という事を知り、混乱します。
そして、目覚めたマヤの病室に入ってくる速水。
これは親の仇も同然ですから、速水を攻め立てます。するとその部屋になだれ込んでくるマスコミ。
この辺までくるともう悲しいとかいう気持ちを通り越して腹立ちますよね。マヤは一切悪くない純粋なる被害者なのに。なんだこの大人どもは。
大量に押し寄せたマスコミからの批判や中傷を防ぐために、あえてマヤをビンタし強く説教する速水。
パっと見た感じではもうアルティメット逆ギレと言っていいくらいに無茶苦茶な感じがしますが、マヤが舞台に穴を開けた理由について『前日までの稽古の疲れが原因』という事にしてくれました。
その説明のおかしさに気付いたマヤは、とりあえずここでは話を合わせマスコミに謝罪します。
精神的な疲れを理由にマスコミを部屋から追いだし、2人きりになるマヤと速水。
当然攻め立てるマヤと、謝罪する速水。
なんら抵抗する事なく捨て身の謝罪を受け、心揺れ動くマヤでしたが、速水が用事で呼び出されこの場は解散となりました。
ここから、女優北島マヤの激動が始まっていくのです。
それから
ここまでで16巻の半分くらい。
ここからは、次々と役を降板する事になっていくマヤと、その代役にのりえが決まっていきます。
さらになんか久しぶりに月影先生も登場し、あいかわらずちょっとクレイジーな事を言ってたりもします。
そんな発泡酒みたいな。
これね。漫画の流れとしては『マヤの母の死の責任は全て速水と大都芸能にある』となっていきまして、まぁなんとなく読んでたら実際そんな感じなんですけど、実はもっと根が深いと思うんですよ。
まず、どうしてマヤの母がマヤと交流を断絶する事になったのか?という問題がありまして、そのキッカケを作ったのは他でもない月影先生なんですよ。
マヤの母が送ってきていた手紙や荷物を、マヤの演技のためと称して全部燃やしてたんですよ。マヤに内緒で。(詳しくは2巻参照)
で。ここに至るまでその悪事が暴露される事もなく、どうしてマヤが家出(というか親から連絡が無くなったか)は誰も知る事が無いんです。
月影先生があんな事をしなければ、そもそも北島親子は和解してたかマメに連絡取ってるはずなんですよ。ここが俺は許せん。
確かに監禁した速水はカスですが、それよりもそもそも親子の絆をわざと断絶させ、しかもそれを一人よがりな『あの子の演劇人生のため』と言い切り、遠くこうなる事態への原因を作った月影先生が、今回の問題での最大の悪です。
まぁそんな個人の感想はさておき。
女優北島マヤに明らかになったとんでもないスキャンダル。これは業界の様々な場面に波紋を広げていき、周りだけでなく当然マヤ自身をどんどん追い込んでいきます。
契約だからと言われ芝居を続けようとするも母の事が気になって芝居が出来なくなってしまうマヤ。
まるで演技が出来なくなってしまい、このままどこの舞台にも立てなくなってしまうのでしょうか。
そして。
こんなマヤの状況を、マヤのスキャンダルをまったく信じていない、ある1人の少女がいました。
マヤと紅天女を巡って争うライバル。そして、他はともかく芝居という一点においてはおそらくマヤの最大の理解者でもある、亜弓です。
この16巻の後半から、俺がガラスの仮面でも1,2を争うくらいに大好きなシリーズが始まります。
マヤのスキャンダル。そしてそれに代わって台頭してくるのりえの実力を、疑わしく思ってマヤの疑いを晴らそうと奔走する亜弓。
これめちゃくちゃ好きなシリーズなんですよ。
まぁそんな事言う本人はモブをたぶらかして恋の勉強に利用する女なんですが、それはそれこれはこれ。
ここから、亜弓無双が始まります。めちゃくちゃ熱いシリーズ。
17巻へ続く。
画像:「ガラスの仮面」コミックス16巻より引用
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