【感想】アクタージュ 6巻 いよいよ銀河鉄道の夜はクライマックスへ
あらすじ
舞台特有の圧に呑まれ、思うような演技ができないまま出番を終えようとしたアキラは夜凪の突飛なアドリブに言葉を詰まらせてしまう。決められた台詞がない状況下で“正しい答え”を求め、戸惑う中夜凪はカムパネルラの役を通して、アキラの心に問いかける――。 bookwalker作品紹介より
というお話です。原作 マツキタツヤさん 漫画 宇佐崎しろさんです。
登場人物
夜凪景:巌さんの命を喰らい、劇団天球を導くためにカムパネルラになる。
明神阿良也:巌さんの病状を聞き、様々な想いを抱えながらも演技を続ける。
星アキラ:銀河鉄道の舞台を経て、1つ大きく成長する。母親も意図しなかったその素質と方向性に。
感想
阿良也回。銀河鉄道の舞台を経て成長するそれぞれ。
はい!というわけで今回紹介するのは『アクタージュ』の6巻です!本誌の羅刹女ももの凄い盛り上がっているところです。
正直なところ本誌でリアルタイムで読んでいる時はこの銀河鉄道編はあまり好きではありませんでした。なんか長いというか、ダラダラやってるような気がしたので。
上手く説明できないんですが、神秘的すぎたというか『概念』みたいな要素が多く感じたというか。
当たり前の事なんですが、作中のキャラ達と巌さんとの間に思い出は存在しますが、俺本人と巌さんとの間に思い出は存在しないので、ちょっと気持ちにズレがあったんですかね。
でも改めて単行本で読むと面白いですね。リアルタイムで毎週楽しみにしながら待つと、気分が盛り上がりすぎてダメなんですかね。『これから先どうなんねん!』という気持ちが強すぎるとよくないのかもしれません。
さて。では紹介していきましょう!
アキラの成長
突然舞台上で始まったアドリブの即興劇。当然見ている観客はそんな事知らないわけですが。
演劇界の巨匠の遺作になるかもしれない舞台の初日にいきなりアドリブ劇が始まるとか俺なら舞台で吐くレベルのストレスです。終わってからブチ切れ案件。
しかし当然スターの星アキラはそんな事はしません。
ここに至るまで散々悩んできたアキラですが、ここで1つの大きな成長を遂げます。
『ずっと"正しい答え"を探していた』
『何が"正しい答え”何が"どうすべき"』
『彼には僕の言葉で答えないとダメだ!』
アキラは、思い悩んだ末に観客席に背を向け芝居を続けます。
「僕は・・・。僕は何もわからないんだ。何が正しいのか何が間違っているのか。そういう事が本当は何もわからない」
こんな事わかる人いないですけどね。スターは真面目だなぁと思います。俺みたいなオッサンはなんとなく目を逸らしながら生きてる部分ではないかと思うんですが。
舞台に背を向け独白の演技を続けるアキラ。
アキラがセリフを吐けば吐くほど、観客の目はそれを聞く夜凪達へ向かう。
まるで闇と、光のように。
こうして、脇役として1つ成長を遂げました。
個人的には銀河鉄道編屈指の名シーンだと思います。この後に続く阿良也回に印象を取られがちですけどね。
あと、初回以降もこの感じで演技したのかどうかがちょっと気になる。
そして始まる最終幕
アキラの出番も終わり、次に始まるのはいよいよ最終幕。カムパネルラとジョバンニの旅も終わりを迎えようとしています。
阿良也は銀河鉄道に乗る前のジョバンニを一人芝居で演じ、その後現在の姿に。
時系列の違いを完全に演じ切る阿良也。
1人の時と、カムパネルラと一緒にいる時の感情の振れ幅が大きすぎる。危うさを感じるほどに。
舞台上の劇はどんどんを進んでいきます。稽古の時の比ではないほどに素晴らしい演技を見せる阿良也。
この辺が、表現として難しいところですかね。冒頭の『このシリーズがあまり好きではなかった』の理由の1つなんですが。
デスアイランド編でも思った事なんですが、夜凪達は銀河鉄道の夜という劇を演じているんですが、漫画だけ見る分には銀河鉄道の夜がどんな話かあまりよくわからないんですよ。
上手く言えませんが『演じているシーン』はあっても『どんな劇を演じているのか』のシーンがあまり無いというか。伝わりますかねこの感じ。
作中のキャラ達は『銀河鉄道の夜を成功させるために』一生懸命演技をしているんですが、漫画として描写されるのは『演技している人達の内面』なわけで、キャラ達の向いている方向と、それを読む読者の見ている方向が違うような気がして、いまいち気持ちが乗らないんですよね。
『夜凪達が演じる銀河鉄道の夜という劇』のシーンは実はあんまり無くて『銀河鉄道の夜という劇を通じて成長していく夜凪達の内面』みたいなシーンはたくさんある。という感じがなんか変な感じになるんです。
なんか上手く伝わるかなぁ。
とまぁそんな個人の感想はさておき。
いよいよ舞台はクライマックスを迎えます。
2人の別れ
ついにジョバンニとカムパネルラが別れる時がきました。
これまであくまで『漫画的な表現として』銀河鉄道の車両が見えていたわけですが、ここで少し現実に引き戻される。気持ち的な引きのシーン。こういうところが上手いなと思います。
ここから後はカムパネルラが去ってジョバンニが現実に戻る。という流れになるはずなんですが・・・。
「カムパネルラ、行くって一体どこへ・・・」
「ジョバンニ。さようなら」
巌裕次郎とカムパネルラ。2人を重ねてその間で揺れ動く感情。
現実と芝居の狭間で危ういほどの演技を見せる役者。
本来立ち去るはずのカムパネルラを思わず引き留めてしまうジョバンニ。
と、ここから阿良也の回想が始まります。巌さんと阿良也の出会い。
心の中から溢れてくる感情が止まらない。カムパネルラと、巌さんとの別れの演技を前に阿良也は崩れてしまいます。
崩れて立ち上がれなくなってしまう阿良也。もうこの舞台を終わらせるには夜凪が阿良也を振り払うしかない。
しかしそれではあまりに残酷過ぎる。阿良也は巌さんの事が本当に大好きで、だからこそ別れられないでいるのに。
阿良也の気持ちを察し、舞台裏で声を上げ阿良也を応援する劇団天球のメンバー達。
立てるよ。阿良也。
劇団天球のメンバー達に支えられ、立ち方を思い出した阿良也。
こうして銀河鉄道の夜の舞台初日は無事終わりました。
という感じの6巻です!部分的なところだけでなく、流れとしてちゃんと通して読んでほしい巻です。
『夜凪達が演じる銀河鉄道の夜という劇を見る』のではなく『明神阿良也という俳優が成長する物語』として読めば、最後の立ち方思い出すシーンなんか最高ですよ。
改めて読むと、夜凪の内面が描かれる事がほとんど無い舞台でした。この時何考えてたんですかね?なんか達観しすぎて仙人みたいになってましたけどね。
で、この後しばらくしてから鬼のような女を演じる事になるんだから役者って大変。
画像:「アクタージュ」コミックス6巻より引用
大黒天HP
銀河鉄道の夜を読む
青空文庫より。心配しないでも悪い方法ではないので安心して読んでください。
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