【感想】ガラスの仮面30巻 逆境に追い込まれるマヤと進展していく速水のお見合い
あらすじ
事務所の社長と対立した演出家の黒沼は、とんでもない劇団をつくる。そこへマヤの相手役・桜小路優を引き抜こうと大女優の手がのびる。一方、速水真澄はお見合い相手との付き合いがはじまって…。
bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は美内すずえさんです。
登場人物
北島マヤ:『忘れられた荒野』で狼少女ジェーンの役を演じる。最近そこそこ恵まれた環境で生きてた気がするので、今回久しぶりに不憫属性を発揮する。
桜小路優:『忘れられた荒野』でジェーンを人間にしようとする青年スチュワートを演じる。着々とマヤとの距離を縮めてはいるが、桜小路君の魅力というよりは周りが勝手に落ちていってるだけな感がある。
黒沼龍三:『忘れられた荒野』の演出家。そのスパルタな演劇に対する情熱についてこれない人もたくさんいる。結局世の中ってのは才能と世渡りの両輪で回っているんだなと俺に感じさせてくれる天才。
感想
黒沼先生の世渡りが下手なのでどんどん追い込まれていくマヤ達!そしていよいよ恐怖のあの女が登場する!!!
はい!というわけで今回紹介するのは『ガラスの仮面』の30巻です!
いよいよ30の大台に突入しました。段々と物語も核心に迫って行きつつある感じ。
黒沼式演劇指導法で人が減る
冒頭いきなり怒りの黒沼の顔から始まります。どうやら、所属する事務所の社長が黒沼チームの役者を他の劇のために引き抜き移動させたようで。
これに憤慨する黒沼。当たり前ですね。自分がせっかくこれまで時間をかけて育ててきた役者がある日いきなり他のチームに引き抜かれるわけですから。怒って当然です。
しかし。
それは黒沼の言い分だけを聞いた場合。の話です。
『そうは言うけどお前自分がやった事思い出してみろや』
と社長に言われ回想が始まります。
黒沼パワハラ劇場
事例1
ベテラン俳優の発音に対して『ひ』と『し』の区別が付かないと他の団員もいる前で大声で恫喝。さらには台本で顔を殴打したのち、他の団員もいる部屋の隅で1人発声練習をさせる。
事例2
『年寄りらしい歩き方が出来ていない』を理由に、他の団員もいる前で大声で恫喝。さらに、体に椅子を縛ったままで黒沼の許可が出るまでそのままで歩く事を強要。
事例3
『先生の練習がキツイ』を理由に泣き出した女優を他の団員がいる前で大声で恫喝。『もう20回も繰り返しているのに先生の要求が理解出来ません』と泣く女優に対して『20回やってもダメなら30回やれよ』と、まるでドリカムのような指示を出したあとに上記のようにブチ切れ顔面に灰皿を投げつける
はいダメ!!!!もう全然ダメ!!!!令和なら即クビですよ!!!!
コンプラ意識など1ナノメートルも持っていない黒沼先生のスパルタ指導にやる気を無くし人々がいなくなっていく。物事はどちらか片方だけの言い分を聞いて判断してはいけないという事のお手本のような教育ですね。
あげくに『あの程度でやめたいとかいう役者なんかどうせロクなもんじゃない』と開き直ります。
『ここを辞めてもどうせ他でも続かないぞ』という、典型的なブラック社長の言いそうな事ですね。月影先生はそれを受け入れる人に狂人的な指導をしてきましたが、黒沼の場合は一般モブ団員にまでその範囲を広げた事が原因でしょうか。
冷遇される側にもそれなりに理由がある展開とか珍しい気もしますけどね。
そして、この社長がチーム黒沼から人を引き抜いてやりたい芝居というのが『イサドラ!』という名前のミュージカルだそうです。
主演女優に『円城寺まどか』というオリエンタルな雰囲気の漂う女優を迎えての物だそうで、これがなかなか世間から注目を集めそう。
さらに、マヤが紅天女の指導を受けるために必要な『アカデミー芸術祭』にエントリーする作品になるそうで、ライバルという事になります。
我々はマヤ側の人間だから感覚が狂いそうになりますが、引き抜かれた側としては純粋なキャリアアップの可能性があるのでどちらかと言えば社長側が正しい。
ただし、それは通常世界の話でありガラスの仮面世界では『最終的に火力が高い方が勝ち。過程は問わない』のが絶対ルールなのでその辺が恐ろしいところ。
稽古場を失う
『イサドラ!』の方が人数も多いのでより広い稽古場が必要。という理由でチーム黒沼はそれまでの稽古場を没収され、新しい稽古場に行く事になりました。
その稽古場というのが、1階がパチンコ屋の2階部分でさらに建物の裏は線路になっており電車が走るうるさい場所と、劣悪極まりない環境となりました。こういうわかりやすい嫌な思いするのなんか久しぶりな気がする。
こんな場所で練習なんか出来るのかという団員達の前で、我らが北島マヤは電車にも負けない大声で発声練習を開始。
まぁこの程度の逆境マヤからすればどうって事ないですよ。別荘で目隠しして何日も過ごした経験とかもありますからね。余裕ですよこれくらい。
ついにあの女が登場する
さて。そんな感じで徐々に逆境に追い込まれていくマヤでしたが、一方で失踪した月影先生の捜索が少しずつですが進展していきます。
速水がどうやら月影先生の居場所を掴んだらしい→その情報が小野寺の元へ→小野寺が亜弓にその話をする→亜弓がマヤへ電話
という経路で情報が伝わりました。なるほどこうして情報は漏洩するのか。
そこから『なんであたしに情報をくれなかったのか』と怒りの直談判に向かうマヤ。情報の漏洩がいかに危険かがよくわかる案件ですね。下手したらマヤが逮捕です。
『速水が会議中ならそれが終わるまで待ってる』と言いながら受付相手に暴れるマヤ。無敵の人1歩手前。
そんなマヤの元に、ある女性が現れます。
彼女の名前は『鷹宮紫織』といいます。
『鷹通グループ』という大手広告代理店のボスで『鷹宮天皇』とも呼ばれている政財界のボスの孫娘です。
その紫織お嬢様が、速水の今回のお見合いの相手なのです。彼女と結婚する事になれば大都芸能にとっても凄い話なので速水の義父もこの話には乗り気。
しかし。しかしです。
この紫織お嬢様こそ俺が個人的にガラスの仮面で1番嫌いなキャラです(断言)
このお嬢様が内に秘めるその恋心が、これまでとはまた違った角度の狂気をこの物語に宿らせる事になるわけですが、もうそれがとにかくウザイ。
マヤ、速水、桜小路などのキャラ達がこれまですれ違いながらも少しずつ築き上げてきたその信頼やほのかな恋心を無粋な横やりパワープレイでぶん殴ってくる世間知らずのお嬢様。
まぁここであまり多く語るのもアレなので、今後この感想を語っていく中でこの狂気のお嬢様の生き様を俺と一緒に見ていきましょう。
月影先生が見つかる
このお嬢様に会うのが目的だったわけではなく、速水に直談判する目的で訪れたマヤはちゃんと速水に会えまして、そこで月影先生の居場所についても教えてもらいました。
ただし。
今のところ居場所は『紅天女のふるさと』という事しか言えないそうです。
山深い場所ではあるもののその分空気もよく養生にはもってこいで今のところ心臓の発作なども起きていない。と。
もしこの場所が公表されるような事があればさらに身を隠すと言っているようなのでその場所は内緒。という事になりました。
しかしその内緒にも期限があり、期限は来年の春まで。来年の春にはマヤに与えられた『アカデミー芸術祭で芸術大賞を受賞するか全日本演劇協会の最優秀演劇賞を受賞する』という試練の期限になります。
つまり。紅天女の後継者(候補者)が決定した時にその場所を公表する。という事ですね。
あんまり前面に出てくると余計な事をしでかすタイプの人なので、ある程度場所を特定しているという条件付きならば隠居してくれている方がみんなのためになりますので、当分月影先生にはおとなしくしていてもらいましょう。どうせあの人は殺しても死なないし。
いつものようにガヤガヤ喧嘩をしながら速水のビルから出ようとした時に、1階で紫織お嬢様が待っておりました。そのまま速水を迎えようとして立ち上がった瞬間貧血でフラリ。その介抱もしながら速水と紫織は車で外出。
その去り際に
『きみと一緒にいったあれを最後にもう永久にプラネタリウムで星を見る事はないだろう』
と宣言。なにかしら今の自分の立ち位置に思うところがあるようです。
はてさてどうなることでしょうか。
チーム黒沼が色々失う
チーム黒沼から複数の団員を引き抜いた社長でしたが、なんと今度は上演予定であったホールがとりやめになりました。理由は『お金がかかるから』らしいですが、これは前回とは違って明確な嫌がらせですね。
これにはさすがの黒沼も参ったようで、泥酔で稽古場に登場です。
遠からず自身の自業自得である部分もなくはないんですが、とにかく彼は世渡りが下手過ぎる。
これにより『忘れられた荒野』は上演劇場が未定。時期も未定となりました。特に理由が無ければ別にそれでもいいんですが、今回に限ってはマヤに与えられた試練の期限があるのでそうのんびりした事も言ってられません。
なにもかも未定となってしまったチーム黒沼ですが、それでも俺は続けたいんだ。嫌になったら別に出ていってくれてかまわんぞ。とベロベロに酔いながら語ります。
そして。
黒沼の元に残ったのはマヤと桜小路。さらに3名のスタッフのみと、ほぼ何もかも無くなりました。黒沼人望無さすぎなのでは?
さらに。
現在のライバルである『イサドラ!』の主演女優である円城寺まどかに気に入られた桜小路君が引き抜きに。
しかし桜小路君はこの誘いを堂々の拒否。なかなか言うじゃないか。
とは言え。
主演の2人とその演出家の心にどれほど情熱の炎があったとしても現実の問題として人数が足りません。これだけの人員では何も出来ないのです。
というわけで、街中に広告を貼ってメンバー募集を開始するチーム黒沼。
勝手にメンバーを募集し始めた黒沼に社長は激怒。この辺はもうどっちが悪いとか言い出したら戦争であり、実際喧嘩になっているのでどちらに正義があるのかはわからないところ。
黒沼の『俺は芝居が好きなんだ』というその気持ちに関しては素晴らしいものだとは思うのですが、とはいえ世の中のどこかにはその為のお金を回す係の人がおり、今の世の中ではその人達が偉いというのも確かな事なので、この辺の問題は難しいですね。
心意気だけでは飯は食えないのです。月影先生もこの辺は苦労していた感じでしたからね。
かなりの窮地に追い込まれてしまったチーム黒沼。果たしてどうなってしまうのでしょうか。
それから
ここまでで30巻の半分くらいです。
ここからは、前回引き抜きを拒否した桜小路君にさらなる引き抜きの魔の手が。当然桜小路君がそんな事で揺らぐはずもないのですが、その引き抜きのためのパーティーの様子を目撃したスタッフの報告によりパニックになるマヤ。
こんなもん100人中120人が勘違いするわという感じの対応。こういうややこしいタイプの恋愛経験はありませんが、こういう世界に身を投じる方が生きてる実感はありそうですよね。
『イサドラ!』は大都の劇場で上演するという事で、関係者と速水達とも会食の場で桜小路君に誘いを断られた事を愚痴る円城寺まどか。
『北島マヤとかいうよくわからん小娘を選ぶなんて』と円城寺が言い出したのを聞いてここぞとばかりにマヤの布教を開始する速水。
これでもかとマヤの過去の実績を一気にまくしたてます。マヤガチ勢。
しかしこの世界でのマヤの知名度がいまいちよくわかりませんね。これでも1度はお茶の間で話題のテレビの人だったんだけどなぁ。
一方、新しくチームメンバーを募集していた黒沼の元に人が集まり始めます。
現場仕事のおっちゃん、看護婦長、塾の先生、ヤンキー、元気が取り柄の元ファミレスのアルバイター……。
などなど個性のある素人を8人集めてきての舞台になりそうです。
素人は素人でも黒沼のイメージに合うメンバーを揃えてきたという事で、どんな個性的な舞台になるのでしょうか。
ついに黒沼の頭がおかしくなったかと噂も立ったり、なぜか過去1でベロベロに酔っぱらった黒沼先生の指導を受けながら円城寺が見る前で芝居を披露してみたりもします。
素人集団の、そしてマヤの演技に段々ひきつけられていく円城寺。確実に積み上げられていく負けフラグ。
そして。
少しずつ親しくなっていく風の速水と紫織。
ただの『男 速水真澄』としてのマヤに対する恋心。『紫のバラのひと』としての立場。そして『大都芸能社長 速水真澄』としての紫織との関係性。
リアル寄りのハーレム系主人公。実際に権力も金もあってモテモテになるとこんな悩みも出てきますよという感じ。紫織お嬢様の事は嫌いですが、この辺の速水の葛藤によるしわ寄せをくらうポジションというのは気の毒だなとも思うわけです。
どう考えても100%当て馬ですからね。
果たしてこの複雑な人間模様と、忘れられた荒野はどうなっていくのでしょうか?
31巻に続く
画像:「ガラスの仮面」コミックス30巻より引用
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