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【感想】ガラスの仮面38巻 明かされる月影先生の過去!一漣と英介との物語

2024年2月19日

当ブログはその性質上、どうしてもネタバレを含みます。そんなの嫌だ!という方は十分に注意して読んでください。

あらすじ

昏睡状態の月影千草は、走馬燈のように尾崎一連との記憶を蘇らせていた。一連への熱い情熱と「紅天女」を支えに生きて来た千草。亜弓はマヤと自分の差を思い知り、一度は山を去ろうと…。

bookwalker作品紹介より

というお話です。作者は美内すずえさんです。

登場人物

月影千草(若):38巻の主役。この巻でついに月影先生の過去が語られる。

尾崎一漣:紅天女の製作者。まだ幼い頃の千津(後の月影先生)を拾い育てる。妻子持ち。

速水英介:粘着系厄介オタク。全ての悲劇の元凶でありシンプルにクズ。こいつが月影先生にガチ恋しなければ悲劇は起きなかった。

感想

月影先生過去回!英介のクズっぷりと月影先生の恋

はい!というわけで今回紹介するのは『ガラスの仮面』の38巻です!

特に言う事はありません。この辺から本当に読み進めたら止まらなくなるのと、49巻という端が近づいてきてるのとで葛藤が起きます。もっと読みたいのに。

月影先生の過去回想編

この38巻の前半部分は丸々月影先生の過去回想編です。この作品の最初からずっと登場していて、具体的な過去をほとんど何も語らなかった人物の過去回想なのに単行本半分しかない。

それでも内容は濃く、月影先生とその関係者がどういう人物であったか知るには十分なのですが、昨今の漫画だとこの『月影先生過去回想編』だけで5冊以上は間違いなく使うだろうと考えると、いかにこの作品が出し惜しみ無しのギュっと濃縮した内容かという事です。素晴らしいですね。

というわけで、前回の最後にまたしても病で倒れてしまった月影先生。

もしここで命絶えてしまったらこれまでの何もかもが台無しになりますから、メタ的に読みましてもここでは死なないだろうという事になるわけですが。

意識が朦朧としていく中で月影先生は自身の過去を振り返っていきます。

冒頭登場するこの小汚い泥棒少女が、なんと昔の月影先生です。

『月影千草』という名前は後に一漣からもらう芸名で、本名を『千津』と言います。ここから先ずっと読んでも千津がどうして両親と離れてしまったのかは謎です。

この後に大人にムチで打たれて怒られるシーンがあるのですがそれは親ではなくスリの親方。千津と同じような身寄りの無い境遇の子供達と一緒に、そのスリの親方の元で盗みやサギの手伝いをさせられていた。というのが月影先生の幼少期のようです。

なかなか壮絶な始まりですね。ちなみに、戦争はまだこの後です。この時は戦前。たぶん。

そんな荒んだ日々を送る千津でしたが、ある劇団の楽屋に盗みに入ったところで捕まってしまいそこで一漣と出会います。

どこかで見た事ある感じのイケメン

一漣の父はどうやら資産家のようで、さらに本人も才能に恵まれており性格も良い。という事で、なかなかに完璧超人でありますがそんな一漣は千津の事を引き取る事にしました。

スリの親方から引き取ったわけですから、身請けと言っていいのかどうかはわかりませんがとにかく。こうして千津は泥棒稼業から足を洗います。

その後、千津は一漣の劇団である『月光座』で住み込みの下働きとして生きていく事になりました。

一漣は千津に読み書きや勉強、礼儀作法などを教え、最初こそ胡散臭いと思っていた劇団員達も次第に千津に対して優しくなっていきます。

一漣の妻である清乃は拒否反応を示しますが、一漣は『自分は間違っていない。あの子はもう普通の少女だ』と言って譲りませんでした。

一漣と初めて出会ったのが7歳の時。というのは明らかになっていますがその後このシーンまでにどれくらいの歳月が流れたのかはわかりませんが、ロリっ子千草。

それにしても、月影先生は孤児。マヤは中華料理屋の住み込み。英介は妾の子供で家出少年。真澄は家政婦の子としてずっとイジメられ続けた。

主要人物が結構ハードモードな人生に思えますが、こう並べるとマヤはそんなに悪い境遇では無かったようにも思いますね。当時は厳しかったとはいえ一応は実の親と暮らしていたわけだし。

唯一特に生い立ちに問題の無い生粋のお嬢様である亜弓が、一番コンプレックスこじらせて悩んでいる感あるのでなかなか人生上手くいかないもんで。

役者へ

劇団で住み込みで働く千津少女は、仲良くなった劇団員達と一緒に日舞や芸事を教わるようになっていきました。日蓮の実家が太く、月光座も特に不振というわけでもなさそうですから、泥棒少女からたぶん一般家庭より水準の高い教育を受けられるようになったわけで、人生どうなるかわかりません。

そんな千津が舞台のにそう時間はかかりませんでした。

一漣の指導は厳しかったようですがその分褒められた時の喜びは大きく、その言葉が聞けるならどんなつらい稽古でも耐えられる気がした。

千津にとってはそれまでの人生と比べればもう一漣こそが人生の全てと言っても過言ではない状態ですから、一漣に喜んで欲しいと思うのは自然な事のように思いますね。

大袈裟ではなく自分を育ててくれた命の恩人なわけですから、その想いに報いたいというのは当然の事でしょう。

こうして、一漣は千津にとって師であり父であり兄である。そんな存在になっていったのです。

そうして月光座の中で役者として育っていった千津がついに16歳になりました。

ここで初めて子役を卒業し、月の女神ダイアナの役をもらう千津。なんというか、当たり前ですけど月影先生にも16歳の時なんてあったんですね。当時の16歳が現代に換算すると何歳なのかわかりませんが(16歳)にわかには信じがたい話ではあります。

そんなJK世代の千津の美しい姿を見た一漣は。

父でも兄でも師でもない、複雑な表情を見せる一漣。

この時一漣が千津に女を感じたのかどうかはわかりませんが、かなりの衝撃は受けたようでした。

そして、この舞台を演じている時に千津は『月影千草』という名前を一漣にもらうのでした。

一漣がこの時千草をどう思ったのかはわかりませんが、千草はいよいよ一漣を男として意識し始めていきます。

一漣に『今に君の方からこの手を離したくなるよ』と言われたら、そんな事あるわけないそんな生き方考えた事もない。と悩み始める千草。

『先生はこんな私が重荷なのかしら?』『先生にとってわたしは他の若い役者と同じなの…?』とありますが、これはよくない傾向ですね。

どうしてこう考え方が極端な人物ばかりなのか。もうちょっと中間というものはないのでしょうか。

何がダメってこの当時一漣は妻がいます。子供がいるかは不明ですが、既婚者です。

既婚者との恋愛が許されるかどうか?については、当然基本的にはダメですが、その辺の賛否については色々あると思うのでひとまず置いておくとしても、幼少の頃から世話になった尾崎家の奥様に迷惑をかけていいはずなどありません。

最初一漣の妻は千津を育てていく事に反対でした。それを一漣が押し切った形となったわけですが、そこで妥協してくれた恩を仇で返す形。

『華炎』という舞台の稽古の最中に、本格的に一漣への恋心を自覚した千草。

一漣と一緒にいられる事の嬉しさを原動力に、その実力をどんどん伸ばしていきます。

よい芝居をすれば評判も上がる。舞台が終わって、さっそく一漣に褒めてもらおうとした千草でしたが。

妻に褒められ喜ぶ一漣。さらにその手には赤ちゃんが抱かれています。

その様子を見て涙ながらに去っていく千草。まぁそらそうよ。

好きになるという感情そのものは理屈で止められるものではありませんから、既婚者を好きになるという事そのものを否定はしませんが、やはり分をわきまえる必要はあるわけで。もしくは、全て奪うという覚悟。

とにかく。千草の中に秘めた一漣の恋心は大きさを増し、月日は流れていくのでした。

梅の里へ

千草の一漣への想いはあまり褒められたものではないものの、その演技の腕は本物のようでどんどん成功を続けていく千草。このまま全ては順調に伸びていく……かと思われましたが。

そこで戦争が起きます。

空襲により東京は焼け野原に。一漣の妻子も田舎に疎開。役者達もバラバラになってしまい、今後の継続が怪しくなってきます。

そんな一漣を、絶対に見放したりしない最後まで一緒にいると覚悟を決める千草。

しかし悲劇は加速します。

ついに月光座も燃え、父も無くなり財産も失った一漣。

そこで出来た一漣の心のスキマにヌルっと入っていく感じの千草。まぁあまり行儀の良いものではありませんね。妻子は戦争の被害で疎開している最中ですからね。『奥様は一漣を見捨てた』という解釈も出来なくはないですが、それはあまりに酷なもの。

しかし。そんな千草の慰めも虚しく、傷ついた一漣は千草を残して失踪してしまいます。

そして失踪した一漣を探し回る千草。なんと一漣の奥さんの疎開先にまで押しかけたのですから根性座ってるというかなんというか。

最終的に一漣の姉の家まで行き、ついに伝説の梅の里への手がかりを手に入れその場所へと向かいます。

念願の再会を果たした一漣と千草。

しかし。しかしですよ。疎開した妻子を放置し、誰にもまともに行先を告げないで失踪して伝説の谷で脚本書いて笛吹いて過ごしていたとか、もしかして一漣もそれなりにヤバい人なのでは?という気がしてなりません。

なにもかも嫌になって全部ぶん投げて逃げてただけですからね。まぁ状況が状況なのでどうしてもそれがダメだとは言いませんが。何やってんだコイツとは思いますよ。まず妻子を安心させてやれよと。

そして、この伝説の地で再開した千草に今執筆中の『紅天女』の脚本について熱く語る一漣。

『紅天女を演れるのはきみしかいない』と熱心に千草を口説きます。

そら勘違いもするわ。繊細と言えば響きはいいですが、正直一漣のフワフワしたやり方もそこそこ災難の原因だと個人的には思います。あまり男らしいタイプではなく、その場その場で流されて生きている感じがどうしてもある。

妻子に対して一途であった一方で、千草の好意を否定しない。八方美人というかなんというか。

まぁそれはともかく。一漣は、月影先生がマヤと亜弓にしたのと同じように、4つの試練を千草に課します。その中の火の試練の中で八百屋お七を演じる千草。

これでわたしの気持ちは通じるはず!

しかしその想いは無視されます。一漣の気持ちが描かれる事はありませんが、おそらく一漣は『女優 月影千草』が欲しいのです。1人の女性として欲しいわけではない。

そして、じゃあ女優として一流になって、女優として愛されてやんよ!

というわけで、女優の道をひたすらに生きる事を心に誓い、一漣の指導の元紅天女を演じ続ける千草。

紅天女として覚醒した千草の演じる舞台は大盛況。月光座の復興も果たします。

その後、調子の出てきた一漣は紅天女以外の劇にも着手。そのどれもに千草は出演しヒロインを演じました。そしてそのそれもが大成功。月光座は順調です。

気分が良くなってご機嫌になった一漣は、千草に対して『魂の半身』などと言ってみせます。

ここまで言ってしまっては、もう千草が勝手に勘違いしてるだけ的な言い訳は通らないかと思います。一漣にどういう真意があったかは不明ですが、勘違いしても仕方の無い事を言っていると思います。

こうして、魂で通じ合い始めたかのように思えた2人でしたが、そんな2人の前にある男が現れます。

粘着系厄介オタク登場

彼の名は速水英介。そう。粘着系の厄介オタクついに登場です。

最初に推しの月影千草に会った時は緊張でまともに口も聞けませんでした。それからは毎日のように贈り物が届いたがそれを千草は拒否。

『紅天女と月影千草はちがうのだということをわかってもらわねばならなかった』

と言わせてしまう、これはかなりの厄介です。現実と虚構の区別がついていない危険なタイプのオタクです。

しかし。やや怪しい思想であっても太客は太客。こういうタイプのお客に支えられて成り立つというのもまた事実でありまして。難しいところですが。

これが普通の厄介なら、いつか身の丈を超えた投資額によりその身を滅ぼして自然とフェードアウトするのでしょうが、この厄介が本当に厄介だったのは英介には力があったのです。

英介は自身が運輸業を営んでいるのを武器に運営に関わってきました。現代社会のコンプラであればこんな得体の知れない男に頼ったりする事もないのでしょうが月光座は英介の助けを受け入れます。

そして、英介は見事に結果を出しました。月光座の地方公演は英介のその手腕によって黒字化。紅天女が全国的に有名になったのは英介のおかげと言っても過言ではなかったのです。

ズレはじめていく運営

英介の手腕によってどんどんと広まっていく紅天女。

しかし、この頃から段々と英介がその本性を現し始めます。

英介は、月光座のみならず他にも様々な公演を手掛けるようになり、各地の劇場を買収し劇場主となり、さらに映画界とも結びつくようになり着々とその勢力を伸ばし始めました。

英介は月光座に出資し、月光座は英介の劇場で公演を行い、その収益の大半は英介の物へと。さらに英介が地方のやくざを関わりを持っていたために月光座もその付き合いを無視出来なくなり、あろう事か役者達がそのやくざの賭場でお金を巻き上げられる。などという事もあったようで。

どうですかね。個人的な感想としてはなんか昔聞いてた話と全然違うんだけど?という感じです。

英介目線で語られた過去の話は、俺もかなり頑張ったんだけど新参者だったから周りの妨害とかも凄くて苦労した。みたいな事を言ってたような気がするんですが。やはり片方だけの話を聞いて物事を判断してはいけません。

この怪しい関係に激怒した一漣はついに英介との関係を切りました。

しかし時すでに遅し。大都芸能を設立していた英介によって元々の月光座の座員の大半は引き抜かれてしまい、月光座は公演出来なくなりました。

当然英介の担当であった地方公演も中止に。こうして徐々に月光座の経営が傾いていきます。

その一方で。では大都芸能の経営はどうだったか?と言うとこれもまた上手くいきませんでした。

英介の経営手腕があって、そこに一漣と千草がいたからこその全盛期だったわけです。

一漣だけでは経営が上手くいかない。英介だけでは芝居が上手くいかない。

こうして、英介は再度の栄光を求めて紅天女へと固執するようになっていきます。

この辺りから、英介にとっての紅天女というのは単純な推しという存在ではなくなったきたのかもしれません。それが手に入るという事がステータスであり自分を社会に認めさせるための手段なのです。

一漣は芝居力。英介は経済力と、それぞれの武器を持っていたわけですが、この資本主義の世の中で戦えば果たしてどちらが勝つでしょうか?

悲しい事にやはり生きていくのに必要なのは金。どちらかと言えば一漣の方が劣勢になっていきます。

この状況を打開しようと相場に手を出すも失敗。英介の陰謀によって仕掛けられたその相場の罠により借金を作り、取り立てのやくざが劇場を荒しにくる始末。

さらにはやくざの放火により劇場は炎上。心労で一漣は倒れ、これにより月光座も人の手に渡る事となりました。

劇団員も去り、もはや八方ふさがり。そこにつけこんで英介が紅天女の上映権を金で買い取ろうとしますが一漣は絶対に譲りませんでした。それはそう。俺でもそうする。

しかしそんな意地で飯が食えるはずもなく。ついには一漣の元から子供を連れて妻もいなくなってしまいます。

そんな一漣を支えるために後援者などを探して再び芝居が出来るところまで立ち上がるもこれも失敗。一漣の周りからどんどん人が離れていく事になります。

追いつめられる一漣。可哀想。

その一方で、厄介ではあるものの頭の切り替えは早かった英介。自分が芝居について素人だと悟ると次は芝居に対して優秀な人材を集めその人達に任せました。そして段々と上向きになっていく大都芸能。

そしてついに。月光座が大都芸能の手に渡り、そこでこれまでの自分達の苦境が英介の陰謀であった事を知る千草。

こんな事をしておいて、今でも千草が紅天女が好きみたいな事をどの口が言うんだと思いますよね。これでまだ自分が正しいと思えるのなら英介の認知は相当歪んでおります。

こうして。完全に決別した一漣&千草と英介。

何もかも失いついに2人になってしまった千草と英介は、ついに一線を越えて結ばれます。

『舞台の上ではいつも一緒だ』そう語る一漣。

その翌朝。

千草が目覚めた時に隣に一漣はおらず、胸騒ぎがした千草はかつての月光座に向かいます。

そこで。すでに1人であの世に旅立ってしまった一漣の姿を発見するのでした。

大事な物を守るためには

千草を残し1人旅立ってしまった一漣。その後を追おうとする千草でしたがそれを源造に止められます。

一漣との思い出を。その魂を。紅天女を守るために。千草は生きる事を決意するのでした。

それからの千草は、紅天女の上映権を守るために大都芸能のライバルであった大手芸能社と契約し政治家や有力な実業家などを味方につけその身を大きくしていきました。

その一方で、上映権を持っていた紅天女だけは『舞台でしか上映しない』を厳守。そうする事で『舞台でしか見る事が出来ない』という紅天女の人気は不動のものとなり、世間的にも『紅天女=月影千草』となり他の者が演じるなど考えられないという状態になりました。

結婚ってきっと本当は結魂と書くのではないかしら……?

並みの人間が言ったら失笑されかねないセリフではありますが、天下の大女優月影千草と、その師であり愛する人である尾崎一漣との話です。そういうものなのかなと思わされます。

一漣がいなくなってしまった事は大変悲しい事ですが、それでも紅天女を守るための人生は順風満帆かに思えました。

しかし。そんな月影千草を最大の悲劇が襲うのでした。

舞台上で落ちてきた照明に直撃。こうして女優として致命的な傷を負った千草は表舞台からの引退を余儀なくされるのでした。

それから

ここまでで38巻の半分くらいです。

えぇ!!なんかめちゃくちゃ濃かったけどこれで単行本の半分なの!?という感じです。ここまでの文章を書くのにとんでもない時間がかかっております。

もうずっと字がいっぱいあるページがひたすら続く、漫画というより『挿絵のある小説』に近いレベルの内容ではありました。

どうですか。紅天女を巡る因縁。

一漣は妻子持ちで、かなり一途でありました。千草からの好意に気付いてはいたものの、妻子がそばにいる間は決してそれに応えようとはしませんでした。千草からの気持ちに応えたのはその人生の最終盤だけ。

『きみはぼくの魂の表現者だ』などと千草に言ってはいましたが、最後の最後までブレーキをかけ続けたその心の裏側にあったものはなんだったのでしょう?本当に心底千草の事を愛していたのか?というと、少し怪しいのではないかなと思うんです。

千草目線からは見えない部分で、想像以上に妻を愛していたのではないか?と思います。最終的には妻子は離れていきましたが。

千草は尾崎一漣を見ていましたが、一漣は『月影千草=紅天女』を見ていたような気がします。

一方の英介は、かなりのクズである事は間違いありません。ようは『好きな子にいたずらしたくなる』の超絶凄い版が英介の生き様なのかなと思います。

成功しただけのクズ。この評価しかありません。こいつが自重していれば全ての悲劇は避けられた。

最初はシンプルに紅天女と月影千草のファンだったのかもしれませんが、それが少しずつ形を変え『世間に自分を認めさせる手段』『成功の証』のような形になり、それに月影千草への愛も合わさって最悪の形になっていきました。

人の心がわかるなら、一漣と千草を離してその心が自分に向くなどありえない事はわかると思うのですが、それが理解出来なかった。

そして月影先生です。

『既婚者にその想いを傾け続けた』というのが、果たして素晴らしい事なのかどうか?いや、理解はできるんです。叶わない恋が忘れられない恋になるというその気持ちは。

でも、これはあくまで『月影千草目線で見た物語』であるからこういう風に月影先生の魂の愛みたいなのを感じますが、これを一漣の妻目線で見た場合はどうでしょうか?

『演技力』という唯一無二の、一漣特化の理不尽過ぎる火力のスキルを持って尾崎家を崩壊させた。その生き様は英介のそれとほとんど変わらないのではないかと思います。

最初から千津を育てていく事に反対していたのに。それが段々少女から女になり、明らかに自分の夫の見る目が変わっていったとしたら。あの泥棒猫!となる事でしょう。

しかも疎開先にまで押しかけてきて一漣の居場所を聞いてくる始末。あげくに一漣の姉のところにまで。

例えばもし英介がこの物語に存在しなかったら?おそらく、月影先生が一漣を寝取っての泥沼になった事でしょう。そうすると、次は一漣の妻か子供の目線での『月影千草=破滅を呼んだクズ』となります。

ハッキリと『お前を女としては見れない』と言わなかった一漣も悪い。英介も千草も、それぞれに許しがたい傲慢さがあった。そういう物語かなと個人的に思うのです。

まぁそういう過去の話はともかくとして。この後も物語は続きます。

いよいよ『紅天女』を演じるための稽古を始めるマヤと亜弓。なんとそこに一角獣のメンバーも加わわっての稽古の開始。

その稽古の場で、紅天女に対する演技力の圧倒的な差をマヤとの間に感じてしまい、ついに亜弓の心が折れてしまいます。

『もう東京に帰ろう。きっと月影先生も理解してくれるはず』

そうして傷心の亜弓は1人紅天女の里を去ろうとします。

その帰り道の途中。崩れそうな橋を1人渡るマヤを目撃する亜弓。

もしかして崩れるかもしれない橋を渡るマヤを見て、亜弓はそれを見捨ててしまうのか?

39巻へ続く。

画像:「ガラスの仮面」コミックス38巻より引用

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