【感想】ガラスの仮面24巻 ミスキャストに戸惑う2人。環境が人間をつくる。生活を交換してみる!
あらすじ
イメージとは真逆の役を演じることになったマヤと亜弓。役作りのための熾烈な稽古がはじまる。皇太后ハルドラ役として二人を見守る月影千草。悩むマヤのもとに「紫のバラ」が届く。
bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は美内すずえさんです。
登場人物
北島マヤ:オーディションを圧倒的な実力差で勝ち残り『ふたりの王女』へ出演する事になる。華やかで天使のような優しさをもつ『アルディス』を演じる。
姫川亜弓:マヤが自分のところまで登ってくるのをずっと待っていた。『ふたりの王女』で氷のような冷たさをもつ復讐の王女『オリゲルド』を演じる。
月影千草:元紅天女。後継者を選ぶために亜弓とマヤを競わせる。もうすぐ死にそうからが長い。『ふたりの王女』でマヤと亜弓と共演を果たす。『ハルドラ』の役を演じる。
感想
ついに月影先生、マヤ、亜弓が共演する!伝説の舞台の序章!
はい!というわけで今回紹介するのは『ガラスの仮面』の24巻です!
ガラスの仮面の記事を延々と書いている感じですが、一応は他の記事も書きたい。でもこのブログで圧倒的に大人気なのと、途中で止まる事が申し訳なさすぎるので頑張ります。まぁ、どうせ最終的に途中で止まるんだけどな!!(悲しみ)
ミスキャスト
ふたりの王女の配役発表会があり、マヤと亜弓の演じる役が発表となりました。
マヤが『花のような王女アルディス』で亜弓が『野心と復讐心に燃える暗い瞳の王女オリゲルド』の役を演じる事になりました。
これに『ミスキャストだ!!』とザワつく会場。
まぁ確かに言ってる事はそうだと思います。俺もそう思うけど、ちょっと失礼じゃない?主にマヤに対して。
蝶よ花よと育てられた亜弓の方が花のような王女にふさわしく、どちらかと言えば不遇な人生を歩んできたマヤの方がオリゲルドにふさわしい。それはそう。
しかし、このミスキャストもなにやら思惑があるようで、上からの指示なら従うしかありません。
そして月影先生は2人の祖母である皇太后のハルドラ役です。なんやかんやでいつまでも元気な人だなぁ。死ぬ死ぬ詐欺。毎日が峠のハイテンション人生を歩む女・月影千草。
キャストが発表され、さっそく主演の2人の元に詰めかける取材陣。
しかし、何が『マヤちゃん演劇界にカムバックおめでとう』だよと思いますよ。ちょっとマヤがスキャンダルを起こしたら徹底的に叩いて芸能界から追い出したくせにどの口がそんな事言うねん。
まぁそういう確執がこの物語の軸ではないのでそこに遺恨は無いわけなんですが、ある意味かなり閉じた世界の物語ではある。演劇狂が中心の、煮詰まったエゴだらけの世界ですからね。
このインタビューに対して、内心どう思っているかはともかく余裕の返答をする亜弓。
さすが亜弓。大人の対応。場数踏んでると余裕がありますね。
一方、マヤの返答は。
『アルディスは亜弓さんがやるのがふさわしいと思っていた』と言いつつも、満面の笑みからのこの回答。
自分にとっては難しい役だと思うけど、それでも王女アルディオスの仮面をかぶりたい。舞台の上でアルディスとして生きてみたい。
あたし、一生懸命やります。
これまでのマヤなら、亜弓に対して卑屈になったり怯えたりだったのですが、今回はそれを真正面から受け止める覚悟があるわけです。
亜弓と比較されるかもしれないし、ミスキャストだと言われても。それをなお上回る演劇愛。
この変化を感じ取り驚愕する亜弓。いいですね。マヤは純粋に本心からそう答えただけだと思うんですが、そこにこういう心理的駆け引きを感じ取ってしまう亜弓様。
さすが私が認めたライバル……!!というわけで、表面でどう見えるかはともかく内心では火花バチバチのキャスト発表会は終わったのでした。
男たちの対比
ふたりの王女のオーディションを合格した事を一応速水に報告するマヤ。
そもそもマヤが今回のオーディションを受ける事が出来たのも速水のおかげではあるんですが、そんな事は知らないマヤ。相変わらず速水に悪態をつきます。
マヤを怒らせそのヘイトを自分に向ける事でマヤのやる気を出させる。そこには高度な大人の駆け引きがあり、マヤはそれに気づかずまんまと乗せられているわけですが、速水自体もマヤに対してどうしても償う事の出来ない負い目もありますから、単純な男女の駆け引きというよりは人生を賭けた壮大なワルツ。
『もし君の演技が俺を感動させたならおれは君の望むだけのバラの花を送ろう』
とかめちゃくちゃキザなセリフからの壁ドンで全国の女子の心を鷲掴みにする速水。
しかし、大都芸能の速水社長として接する最後に『男 速水真澄』としての顔も出していきます。紫のバラの人はマヤの憧れの人であり大好きな人物であるが、速水真澄は嫌われている。
悲しい二面性。
その後1人でバーで飲み、マスターらしき人物に自分の推し活についての悩みを打ち明けたりもします。
俺にも推しがいますので、わかるわかるよその気持ち。どれだけ力と金があっても、1人の女性を想う気持ちをどうにも出来なくて悩むというのは人間は愚かでしかし美しい生き物であるなと思わされます。
一方。
速水に対してキツく当たったマヤはなぜか桜小路君の舞台を見に行きました。
どうやらチケットをもらったみたいです。
マヤとあんまり縁も無くなりつつあるのにチケットを送ってくれたやさしい桜小路君の舞台を見ながら、マヤはこんな事を考えました。
怒涛のやさしい4連発
わずか3.5ページの描写の中で『やさしい』が4回。平均1回以上のやさしい。
どちらかと言えば辛く当たってくる速水に対しては山盛りの感情を見せるのに、桜小路君に対しては『とにかくやさしい』という事くらいしか印象にない。
しかも『思い出の中でいつもあなたはやさしかったわ』とか、まるで今の桜小路君はやさしくないかのような言い草です。ヒドイ話ですよまったく!!
少し話は横道に逸れますが『コンコルド効果』というものがあります。
どういうものかというと『このまま進めば損になる可能性が非常に高いのにこれまで払ったコストを考えるともったいなくて後戻り出来なくなる』という心理です。
これの典型的な例はギャンブルです。このまま続けても負けが増えるだけなのに、ここまでの負けを取り戻そうとより深みにハマっていく。
この心理は恋愛にも当てはまります。
『やさしい』というのは、女性から何かしなくても男性がどんどん色々用意してくれる。なんでもやってくれる。つまり、女性から見てローコストだと言えます。一見素晴らしい事のように思えますが、角度を変えれば女性側から払ったコストが少ないのでいつでも切れる。という事でもあるわけです。
『やさしい男性』というのは、他人におごってもらって食べる焼肉のようなものです。確かにそれは美味しいですが、本当に気持ちが乗るのは『苦労して自分で稼いだお金で食べた焼肉』の方だと思います。
意中の女性を射止めようと思うなら、タダでなんでも提供するだけではダメ。という事です。自分に対して相手にもコストを払わせる。そうする事で『今ここで止めたら損をする』と思わせる必要があるわけですね。
ピアノは教えてくれる。ハンバーガーとポテトも用意してくれる。チケットも送ってくれる。やさしい桜小路君。
一方で、嫌味を言ってくるし自分を陰謀に巻き込んできたりもする速水。しかし実質自分のボスであったりする時期もあるし生活で世話になったり恩師の面倒も見てもらったりしているという側面もある。
『気持ち的には嫌ではあるが受け入れ続けていかないといけない』というコストを払い続け、もう今ここで止めたら今までの我慢が無駄になってしまう。
これは漫画なのでご都合主義と言えばそれまでですが、現実だとそういう駆け引きもあるのかな。と思ったりしました。
当然、桜小路君派の女性もいるしそれは当然の事なんですけどね。『パチンコみたいな男であれ』は常に心の底にちょっと意識として持っていましょう。みたいな話。
それぞれの王女
男性の色々はさておき、少しずつふたりの王女に向けての役作りを始めるマヤと亜弓。
光り輝くアルディス。冷たく暗い環境で育ったオリゲルド。
マヤと亜弓。それぞれが相手こそがふさわしいのではと悩むわけですがそうも言ってられません。
月影先生の真意を考えてみたりもしますが先生は何も言ってこないので考えても答えも出ない。
色々考えても結局いい答えは出ないので、とりあえずマヤが帰りに亜弓を誘ってみました。
そこでの雑談の中で。
マヤが、まだアルディスをつかめないの。友人に『それはそんなふうに扱われたことがないからだ』と言われた。環境が人をつくるから、まずアルディスの環境を理解出来ないといけない。と。
それを聞いた亜弓に、圧倒的ひらめきっ……!!!!!
環境が人間をつくる
いい言葉ですね。弊社の壁にも貼っておきたい名言です。
ここから、亜弓がなんと『ふたりの生活を取り換えてみましょう』という提案が。
こういうところがすでに『不自由なくなんでも望み通りに叶えてきた』という生き方が出ているわけですね。マヤにはこの発想は無かったし、あっても言い出せなかった事でしょう。
生活交換
亜弓の思いつきによって、さっそく生活を交換するためにテンポ良く段取りが進みます。
小さな頃から当たり前に持っていた『姫川亜弓』というスキル。これがある限り、どこまでいっても何不自由のないお姫様のまま。本当の意味でオリゲルドの事などつかめない。
だから、生活を交換してほしい。
演技に熱心なのは結構な事ですが、要は亜弓は『不幸人ごっこ(なるべくリアルに)』がしたいわけで、もちろん強制的ではないですがこうして自分の希望を他者に押し付けようとする姿勢こそが傲慢な強者の価値観である。という見方も出来ると思うのです。
とまぁそういう俺の感想はさておき、やや強引ではありますがお互いの生活を交換する事になりました。
マヤは亜弓の家に。亜弓はマヤが借りていた地下劇場に住む事になりました。
これまでと180°変わった生活をおくる事になった両者。果たして、役を掴む事は出来るのでしょうか……?
それから
ここまでで24巻のだいたい半分くらいです。
ここからは、いよいよ交換生活が始まります。
自分から言い出したのでそこそこ上手く順応していく亜弓と、戸惑いを見せるマヤ。
亜弓は生まれも育ちも一流ですが、かと言って別に苦労していないというわけではなく、むしろ努力の天才みたいな部分があるので『しんどい生活』に慣れるのはそんなに苦労は無さそうです。
一方のマヤは、今までの人生でそんな扱いを受けた事が無いのでどうしていいかわからない。人をアゴで使うなんて考えた事も無いタイプなので、これはなかなか難しいですね。染みついた貧乏人根性はなかなか抜けない。
わかる。わかるよその気持ち。広い部屋で寝ろって言われても寝れないよね。
生活を交換してもスっと上手く事が進むわけでもなく、相変わらず停滞している2人。
そこに月影先生からこんなテストが。
アルディス、オリゲルドとしてそれぞれわたしの手からお茶を受け取ってみなさい。
選ぶシチュエーションがまさに小姑のそれだと思うわけですが、2人はこのテストに不合格。
しかし結局は『神は細部に宿る』という事でして、こういう日常の仕草も再現出来ないようでは役の理解などほど遠い。というわけです。厳しい世界。
果たして2人の演技はどうなるのか……?
25巻に続く
画像:「ガラスの仮面」コミックス24巻より引用
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