【感想】ガラスの仮面45巻 都庁で稽古するマヤととんでもない事になる亜弓
あらすじ
亜弓の眼は視力を失いつつあった。しかし、亜弓は母親と壮絶な稽古に入っていくのだった。マヤと亜弓の「紅天女」は、間違いなく生まれようとしているのだが。
bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は美内すずえさんです。
登場人物
北島マヤ:魂のかたわれについて考える日々。最近はちょっと芝居にも本腰を入れるようになってきた。
姫川亜弓:照明が頭に当たる事故で体調不良と目が見えなくなりそうになっている。とんでもない事故だけど、現在作中で誰よりも『ガラスの仮面』をしていると思う。
感想
とんでもない事になった亜弓と都庁観光で芝居の稽古の温度差がえぐい
はい!というわけで今回紹介するのは『ガラスの仮面』の45巻です!
いよいよ四捨五入して50になる数字に到達しました。もう残りも少しです。
養われ系老女と人生相談
44巻の最後で亜弓がとんでもない姿になっているところで終わったわけですが、45巻最初の1ページ目は月影先生のアップからでした。
なんでも、現在月影先生は日本演劇協会の山岸理事長の別宅に住んでいるそうで。
これがめちゃくちゃ豪華な家でして、そこに看護士さんやらお医者さんも常時スタンバイしているような環境だとか。これで月影先生も安心ですね!
……大都の中にいた時もだいたい同じような待遇で大事にされていたはずなのですが、この人はすぐ脱走するのでタチが悪い。いずれこの家も逃げ出す事でしょう。
まぁ、大都というか英介との過去の確執なんかを知ったあとだと、あんな厄介オタクの息のかかった場所でのんびりなんか出来るわけないだろ!という気持ちもわからないでもないですけどね。
千草たんの使用済みのなんとかをこっそり持ち帰るくらいするよあの厄介は。
でも、この理事長とやらも大都となにやら怪しい関係なんじゃないかと思ってますけどね。
さて。そんな養われ系老女の元に本日は2名のお客様。マヤと速水です。
とりあえず2人とも今日は何しに来たの?という感じの空気から始まり、開幕はなんとなくの世間話からスタートです。
先手:月影千草
「ところで真澄さんは鷹通グループ総帥の鷹宮会長の孫娘と結婚するらしいわね。大出世じゃないおめでとう」
最初の話題が速水と紫織の結婚トーク。
いきなりの先行ワンターンキルです。特大の地雷。もう終わり。今日はこれで終わり。詰みです。
デリカシーなど1ナノメートルも持っていない月影先生。天女になりきる事は出来ても普通の人の心がわからない。風・水・土・火とか言ってないで目の前の人間の心を見ろよ。
『私は引きこもりじゃないわよ世の中にも詳しいのよ』とアピールしたかったのかもしれませんが3周遅れくらいです。今あなたの暴言のせいで魂のかたわれの絆は引き裂かれた。
さらに追撃として
『未来のあなたの奥様に感謝だわ』と。
はいもう終わり終わり!お前マジで何言ってんだよアホなの?と思うわけです。この物知り顔が余計に腹立ちますね。今お前の目の前で愛弟子がどんな気持ちでその話を聞いているか考えた事はあるのか。
まぁ?月影流恋愛術の前では既婚者なんかなんの意味も持たないですけどねぇ?
さて。
そんな月影先生の危険球顔面デッドボールを受けまして、よせばいいのに応戦してしまう速水。
『妻の立場を利用すれば』ときた。
妻。はい。もう終わり。なんなの何しにきたのこの人達?
この最悪の言い争いを聞いてブチ切れるマヤ。そらそうよ。
『魂のかたわれについての話を聞きにきたのに!もう速水さんなんか絶対に許さないから!』的な事を言って出て行ってしまいました。追えよ。速水よ。追えよ。
飛び出すマヤを追う事もせずの2人。
『あいかわらずねマヤあの子は。天敵ねあなたは』と月影先生。
老害ここに極まれりという感じではありますが。この人のアンテナはどうなっているのでしょうか。
速水がここへ来た本当の理由とやらを聞く月影先生。それに対して『魂のかたわれについてあなたに聞きたくてここに来ました』と話す速水。
それを聞いて『いつもそうやって本心をはぐらかす!あなたらしいこと速水さん』と大爆笑の月影先生。終始空回りまくってました。心の底からの魂の恋愛は不倫しかした事ないので純愛が理解出来ません。
苦難に立ち向かう
しょうもない魂の削り合いを繰り広げたマヤ一派から場面は変わり、病院の亜弓の様子へ。
目に包帯グルグルであるとはいえ、目が見えない恐怖とそれでも稽古場に帰りたいと訴える亜弓。
可哀想すぎる。マヤが男にフラフラしている間に必死に練習を続けてなおこの始末。
稽古がしたい。芝居がしたい。
人生を捧げて芝居に打ち込みたい。もうそれ以外は無い。この狂気の芝居に対する一途な愛。これこそがガラスの仮面だったのではないでしょうか。不遇が良いとは言いませんが、ここに真のヒロインがいる。
包帯を自分で外してみて、なんとかぼんやりを目が見えそうだという事に気付いた亜弓。
稽古ができる……!
じゃあないんだよ!もう無理をしないで!!自分の推しがこんな目にあってなお無理をしようとしているとしたらこんなに悲しい事はないですね。
それから場面は変わりマヤ達の稽古風景に。
ここからちょっと、微妙に難しい話が続きます。
紅天女の時代設定が600年以上前と結構古いので、考え方というかセリフも難しくてよく理解できない。上滑りしてしまう。
という感じになったので、じゃあちょっと気分を変えて外で練習してみようか!という話になります。
600年以上前の人間と考えるから難しいんだ。600年前という現代を生きる人間だと思え。みたいなそういう話です。
確かにこの理屈は納得できます。あと600年後の2624年の人達から見たら今の俺は理解の外の謎世代かもしれませんが、今この時を生きる俺はいたって普通の人間です。
というわけで。
現代のファミレスという場所で芝居の練習をしてみよう!変に芝居がかった事を言えば周りにおかしいと思われるから、自然な形でセリフの練習をしよう!という事に。
この練習風景が果たして自然かどうかについては賛否あるところだと思いますが、何か気付きがあったようです。それなら良かった。
その次は、街中の歩道橋での演技練習。こっちはまだファミレスよりはマシでした。
で。いよいよこの巻のメインとなるとんでもない場所での稽古。
なんと。稽古の舞台は東京都庁です。
というわけで、昭和から生き続けてきたガラスの仮面のキャラ達が東京都庁で稽古です。なんか凄いですよね。
で。
ここでの稽古風景は正直よくわからないので割愛。
なんか都庁にあるオブジェクトを紅天女と絡めてスピリチュアルな話をしながら稽古してました。
個人的な感想としては『都庁が描きたかったのかな』という感じです。はい。
いやまぁつまらんというわけではないんですけどね。やれ世界がどうだ自然がどうだと言われてもあんまりピンとこなくて。
それから
ここまでで45巻の半分くらいです。この巻はこの都庁編が個人的にはいまいちなのですが、ここから盛り上がっていきます。
なので、後半部分を少し厚めに語りたい。
場面は変わって亜弓の稽古場に。
お医者さんに頼んで無理矢理退院させてもらった亜弓。吐き気や頭痛はありませんが、時々目がほとんど見えなくなってしまう。
稽古となれば自分1人ではありません。周りに人もいる中で、突然見えなくなってしまう目。そして、それを周囲に気付かれてはいけない。
見えないのに。
周りの人々の動く気配。その息遣い。聞こえてくる声や物音。耳をすまして心をすまして。それら全てを目の代わりに……!!
自身の身に降りかかった不幸を、絶対に周りに気付かせないで演技をしてみせる!
という強い決意。少しメタ的な見方をするならこの『心をすまして』という感情が亜弓の紅天女に対する覚醒イベントになるという事なのかなと思います。
そこからまた場面は変わり。
今度は都庁のオブジェの前に立つ速水。どうやらマヤがここで練習していたらしいという話を聞いてこの場に来たそうです。
そして。そんな速水の後を追って隠れて様子をうかがう紫織。
つまりは『マヤを追ってきた速水を追ってきた紫織』という形になります。なにやってんだホント
マヤを追ってきた速水を追ってきた紫織は、速水の様子を見てなんとしてもマヤを速水の心から追い出す決意を固めます。ここからどんどんとんでもない事になっていきます。はい。今の段階では特に言う事もありませんが。はい。
そこから再び亜弓の場面に。次はいよいよ検査の結果を聞くようです。
照明器具が当たった時に眼の奥にある血管が切れて出血。その血が固まって血腫になっている。という事だそうです。このまま放置しておくと最悪失明の危険があるので今すぐ手術する必要がある。
当然手術を勧めるお医者さん。そしてこれを断固拒否する亜弓。
『このままここで手術を受ければ紅天女の試演にまで間に合わない』というのが拒否の理由です。
あの伝説の舞台紅天女の次世代の候補を決めるという試演。その1人が不慮の事故により失明の危機。
そんなもん、事情を説明して試演は延期一択だと思いますよ。ここで亜弓が無理をしてその視力を失う事になったとしたら、どれだけの数のファンが悲しむかわかりません。
仮にそれで試演をやりとげたとしても、もし俺が現実世界で亜弓推しのファンだったとしたら紅天女を憎むでしょう。絶対に見に行かないと思います。
俺の推しの視力を奪った呪われた舞台として俺の心に刻まれる事になります。絶対に許さない。
しかし。
『紅天女抜きの女優としての人生など考えたこともない』と言い張る亜弓。
ここまでの決意を持って挑もうとしている紅天女。一方のそのライバルは男の事を考えてはフラフラメソメソするばかりです。この温度差よ。
そして。
周りからその病状を隠し、未来の自分の視力を天秤にかけてもまだこの試演に挑みたい。それが叶わないのなら女優である意味がない。そんな壮絶な覚悟を持って稽古に挑む亜弓。
今のままの稽古ではいずれ周りにバレてしまうかもしれないので、箱根にある別荘で1人稽古をする事にします。
亜弓がこうしている間にもマヤは確実に自分の紅天女に近づいている。負けたくない……!!
大丈夫。マヤは特に何もしてないから。
そして。
娘が箱根の別荘で1人になりたいと言い出したのを追ってきた亜弓の母。
こちらも名女優のスキルを活かし見事に亜弓のウソを見破り、目の状態がかなり悪い事に気付きました。
このまま失明してしまうつもりなの!!!と怒る亜弓の母と、それを断固受け入れない亜弓。
たとえおぼろでも舞台の空間が見えるのなら演技は出来る。もし成功して紅天女に選ばれたならどんな治療でも受ける。この目が見えるようになるのならなんでもする。
だからお願い。試演だけは受けさせて。
そしてこの後も『きっと誰にも目の事は気付かせない。このままあきらめてしまうくらいなら死んだほうがマシ』と。
どうですか。この高潔な魂。プライド。今までの人生で努力で勝ち取れなかったものなど無いのです。『姫川亜弓』という生まれ持った最高峰のユニークスキルを持って、なお腐ることなく頂点を目指して努力を続けてきた。
そんな彼女が初めて終生のライバルとして認めた北島マヤに、負けたくない。自分の今後の人生を賭けてでも憧れの紅天女を手に入れたい。
この生き様が、まさに真のヒロインだと思います。
この亜弓の決意に心を打たれた母は、亜弓を支えていく覚悟を決めます。
ここから、壮絶な姫川親子の戦いが始まっていきます。
読む人によって色々な感想はあると思いますが、都庁でなんかよくわからないスピリチュアルな事をやってるマヤ達は置いといて、この姫川親子のパートは本当に読んでみてほしい。
正直、マイナス方面に振れ幅を作って努力の演出をするというのはどうなんだという気持ちも0ではないんですが、それを超えようと努力する高貴な生き様には胸打たれるものがあります。
この辺から『少女恋愛漫画(マヤサイド)vsスポ根(亜弓サイド)』という感じになっていくのですが、俺は断然亜弓派です。
恋愛をするなっていうわけじゃないですよ。そこは反対ではないんですけどね。
46巻へ続く
画像:「ガラスの仮面」コミックス45巻より引用
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