【感想】ガラスの仮面32巻 速水の計画がついに動く!乗っ取られるイサドラ初日とついに始まる忘れられた荒野
あらすじ
速水真澄の思惑通り(!?)「忘れられた荒野」は注目を集め、マヤにとって女優人生をかける大きな舞台となったが…初日は台風が到来。嵐の中やってきた、たった一人の観客とは…?
bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は美内すずえさんです。
登場人物
北島マヤ:『忘れられた荒野』で狼少女のジェーンを演じる。イサドラ!の初日に大勢の人の前で狼少女の演技を披露させられる。マヤ的には屈辱。
速水真澄:イサドラ!の初日にマヤに大勢の前で狼少女の演技をさせる。不器用ではあるがよくやってるとは思う。不器用だけど。
黒沼龍三:『忘れられた荒野』の演出家。大勢の前で辱めを受けるマヤを見て大興奮する。今回人生に大きな分岐点が訪れる事になる。
感想
公開アニマルプレイ!しかしそれは全て作戦のうちで
はい!というわけで今回紹介するのは『ガラスの仮面』の32巻です!
単純にアクセスという意味で言えば他の漫画の方が人気があるのですが、このシリーズを楽しみにしてくれている読者の方がそこそこにいますので書いてても楽しいです。頑張ります。
初日を乗っ取る
イサドラ!の舞台初日に招待されたマヤ達一行。そのイサドラの初日上演終了後の立食パーティーの最中にその事件は起きました。
速水がマヤに『今日見たイサドラをちょっとやってみてよ』と言い出した事から、その流れで狼少女の演技も披露する事になったマヤ。
イサドラの上演を見に来ていたたくさんの人達の前で四つん這いになり狼に。さらに、床に投げ捨てられたチキンを拾ってこいと速水に挑発され、ジェーンvs速水の対決が始まります。
その異様な光景を好奇の目で見る人、マヤの演技力に注目する人……。見る人の気持ちはそれぞれですが、周りの注目を集めます。
その結果。
イサドラの上演初日終了のお祝いの席のはずなのに、もうすでに円城寺は蚊帳の外になってしまいました。
さすがにこれは可哀想。完全に当て馬。
ちなみに、肝心のイサドラ!は円城寺の登場シーンも含めてたった6ページでした。劇の内容はほとんど何もわかりませんでした。ネームドモブ。
さて。
床の上に放り投げられたチキン。それを狙う狼少女。拾えと煽る速水。どんどんフロアの注目を集めていきます。注目するその人々の中には全日本演劇協会の理事長やアカデミー芸術祭の主催者などなど。
こんなに大勢の前で恥をかかせるなんてひどい男だ!!!!
と、思いながら見ているのはマヤ目線くらいのもので、ここまで読んできた読者の方々なら速水がなんの考えも無しにこんな事をしないというのはよくわかっていると思います。
演出家の黒沼先生に至っては、自分のところの役者が大勢の前でなんかおかしな余興をやらされているというのにこの有様。
黒沼先生大興奮
このコマだけなんかうすた京介感あるんですよね。ピューっと吹く黒沼。
肉を狙うマヤ。それを取らせまいとする速水。
肉を足で蹴り、それを追う。追うジェーンをジャケットで払いのけ弾き飛ばす速水。
フロア内を縦横無尽に人を巻き込みながらの大立ち回りです。
大切な人が大勢の前で辱めを受けている。この様子にそろそろ我慢出来なくなってきたのが桜小路君。この仕打ちを止めるために動きます。
が……。
煽っている速水はともかく一応は味方であるはずの黒沼にさえキレられる始末。
桜小路君の判断は通常の世界では正しい。自分の気になる想い人が公衆の面前で恥をかかされている。事情はどうあれそんなの我慢出来ない。素晴らしい。正しい男の生き方です。
が。しかし。
ここは残念ながらガラスの仮面の世界なのです。この世界の常識の軸は芝居なのです。
今まさに無理解な人間共の目の前でエサを追いかけるジェーンは最高の演技。桜小路君はそれに水を差す空気の読めない男扱いなのです。理不尽。
怒りに荒れ狂うジェーンは速水の手を強く噛み、さらにジャケットを奪い、階段の上に放り投げられたチキンを手に入れ堂々と歩いてくるところでその演技は終わります。
そして。ねんがんのチキンをてにいれたマヤは。
速水の顔面にチキンを投げつけブチキレます。
大っ嫌い!あなたなんて死んじゃえ!!
痛烈な言葉を速水に浴びせ会場から去るマヤ。それを追う桜小路君。あとに残されたのは顔色を悪くした速水だけ……。
しかし。ここでついに速水の思惑が実を結びます。
ざわめく会場内では、先程までのマヤの演技の話題で持ちきりです。
ここはなんでもないレストランのロビーでは無いのです。今注目を浴びている(はず)の大舞台イサドラ!の初日上演を見に来た演劇好きの集まりなのです。
その本物のマヤの演技を見た人達は、彼女の事が気になって仕方ない様子。
さらには『彼女の出演する舞台を芸術祭の対象にしなかったのは関係者の見る目が無いからだ』という声まで出る始末。
そして。ついに全日本演劇協会の理事長がマヤに興味を持ち舞台に招待してほしいと言い出しました。
そう。速水はこの状況を狙っていたのです。今のままでは望み薄であったマヤの『全日本演劇協会の最優秀演技賞』への道。
これを、イサドラ!の初日のこの場を利用して強引にこじ開けたのです。
当のマヤはそんな事には気付かないわけですが、速水マジで凄い。
その舞台の演出家である黒沼の元にも人が殺到。こうして、マヤ達が演じる『忘れられた荒野』は時の舞台となりました。
顔面に泥をグチャグチャに塗られる事になったまどなんとかさんは気の毒としか言いようがありませんが。
男の飲み会
ド派手なマヤのお披露目のおかげでメディアは忘れられた荒野一色。チケットは飛ぶように売れ予約も殺到。取材の申し込みも山のようです。
さらに、アカデミー芸術祭の実行委員の人達も舞台を見たいと連絡してきまして、いよいよ大変な事になってきました。
この異様な状況に、子供のマヤはともかく大人の黒沼は流石に何かあると気付いて速水を呼び出します。
線路横の安いおでん屋で、天下の大都芸能の若社長と待ち合わせ。
そこに高級車でやってくる速水。今日の席は黒沼のおごりらしいです。
そしてそれを快く受ける速水。
俺速水のこういう所好きなんですよね。冷血な男という評判はあるんですが、結構ロマンを理解してる部分もありますよね。
『こんな安いおでん屋なんか食べられません!』とか『貧乏人にご馳走してもらわなくて結構です』みたいな感じじゃなくて、黒沼の好意を喜んで受けてちゃんと黒沼を立てる。上手いですよね。
さて。
男同士、おでん屋でダラダライチャイチャしても仕方ありませんから、さっそく本題に切り込む黒沼。
あんた全部わかっててやっただろ?
まぁ流石に全部自分に都合良すぎる展開ですからね。裏で糸引く奴がいると思うのは普通の事です。
これに対し、速水はふわっとチーム黒沼を持ちあげます。確かにキッカケを作ったかもしれませんが、それが実ったのは全てあなた方の実力です。と。
狂人揃いなので影が薄くなりがちですが、桜小路君だって劇団オンディーヌの期待の星で、もし賞でも取ればスターになるでしょう。もちろんマヤも黒沼も、才能のある人間は全て僕の宝です。と。
なるほどなかなか上手い事言うもんで。これには黒沼も上機嫌です。
しかし。ここから話題は思わぬ方向に向かう事になります。
なんと、黒沼に関連するあらゆる事も調べてある。と言うのです。
上演作品、上演日数と回数。その全ての観客数。舞台の予算、制作費、宣伝費に役者のギャラ。さらに世間の感想などなど……。
黒沼が忘れているのであれば、何年何月何日の芝居はどの劇場で、開演は何時何分。予定より何分遅れたか観客は何人だったか?それらも全て答える事が出来る。と言う速水。
目の前にいる超お金持ちの若社長が自分に興味津々だと知り流石にドン引きする黒沼
どうして速水はこんなにも黒沼に執着するのか?もちろん、黒沼の事が性癖的な意味で好きとかそういう事ではありません。
いまいち速水の真意を測りかねる黒沼。
去り際に速水はこんなセリフを残します。
「黒沼さん覚えておいてください。紅天女の候補は役者ばかりではないということをね」
と。
そりゃそうだろ役者だけで芝居が出来るわけでもなし……。
と、ここで黒沼は速水の真意に気付きます。
もしかして俺が紅天女の演出候補なのか……?
ここにまた1人。紅天女という運命の輪に巻き込まれていく人物が増えたのでした。
真・忘れられた荒野
マヤのマネージャーの水城さんにマヤが『社長がなぜあんな事をしたのかちょっとは考えた方がいいんじゃない?』とやんわり言われてみたりでそれぞれが速水の行動のおかげで動き始めました。
まずやる気を出したのは黒沼でした。
大量の古タイヤとブロックを取り寄せそれを舞台に積み上げました。
動物園のチンパンジーかゴリラの家みたいな感じ
そして、どうやらこの舞台はまだ未完成であるようです。
『演技が変われば舞台も変わる』
のだそうで。なにやら意味深な言葉ですが、天才演出家黒沼劇場は果たしてどういったものになるのでしょうか?
それから、これまでの演技指導とは少し変わった指導を始める黒沼。
あるセリフを時には眠そうに。また今度は怒りながら。さらには遠慮がちに。
同じセリフであっても、演じ方1つでまるで違った魅せ方が出来る。さらにそれが複数になり様々な、無限の組み合わせ変化が生まれていく。
俺は生きた舞台をやりたいんだ
基本的には素人集団に求めるにはなかなかにハードな世界だとは思うのですが、黒沼の言う『生きた舞台』とはどういうものになるのでしょうか?
ついに始まる舞台……しかし
ガラスの仮面世界屈指の厄介である紫織お嬢様が、一応使用人には許可を取ったものの速水の別荘で勝手に本棚を物色してそこからマヤの写真を見つけてしまうなどのハプニングもありましたが、いよいよ舞台の日が近づいてきました。
少しずつ芽生えていく狂気
桜小路君のガールフレンド(女友達)の舞ちゃんが豪華なお弁当を作ってきたり、マヤの元に紫のバラのひとから紫のバラが届いたりもしました。
どうやら紫のバラのひとは初日に来てくれるらしく、それを心待ちにするマヤ。
しかし。マヤ達を待っていたのは過酷な運命でした。
なんと、舞台初日に大型の台風が直撃。その勢力は凄まじく、到底誰から見に来られるような状態ではなくなってしまいました。
チーム黒沼は素人集団ですが、それだけに初舞台を楽しみにしていた家族達もいたようですがこの台風ではそれも断念せざるを得ません。
芸術祭関連のお偉いさん達も見に来る大切な初日だったのに、こんな形で台無しになるとは……。
しかし。舞台を上演するマヤ達サイドから中止とするわけにもいかないようで、とりあえずギリギリまで待ってみてそれでも誰も来ないようであれば本日は残念ながら中止とする。という事になりました。
別に上演側の判断で中止にしてもいいような気もしますが、その辺は黒沼のこだわりですかね。誰か1人でも自分達の芝居が見たいという人がいれば見せてあげたい。なかなか素晴らしい話です。
でもまぁ団員も危ないですからね。こんな事してないで早く安全な場所に避難するべきだとは思うのですが、それは2024年の価値観なのです。この時代では、多少の天災では興行を止めないという価値観があったのです。しらんけど。
とはいえこの台風ですから、それでも見に来ようとする物好きなどいるはずが……。
否。
こんな危険な状況にも関わらず舞台を見るために動き始めた人達がいました。
舞ちゃん、亜弓、そして速水です。それぞれがそれぞれの想いを胸に劇場を目指します。
しかし。
舞ちゃんはバスが運休に。亜弓は車が通行止めに。交通手段が無くなってしまったので、それ以上進む事が出来なくなって断念しました。
そんな中。ただ1人だけ、車が止まっても歩いてでも劇場を目指す者がいました。
徒歩できた
見開きでかっこよくバーン!と登場するのですが、悲しいかな電子書籍の都合上腕が思いっきり切断された感じになっててなんとも微妙な登場になりましたが、ずぶ濡れになった速水がやってきました。
『どうしてこんな状況なのに舞台を見に来たのか?』と問うマヤに
『君が招待してくれたんじゃなかったのか?俺は約束を守ると言っただろう?』と返す速水。
あたしとの約束のために……?
速水の心が理解出来ないマヤでしたが、とにかく。たった1人とはいえついにお客さんが来たのです。
こうして、速水1人のためについに始まった『忘れられた荒野』の舞台。この最悪の状況で、果たしてどんな舞台が繰り広げられるのでしょうか?
それから
ここまでで32巻の半分くらいです。
ここからは、外は超悪天候の中での舞台が始まります。
こんな状況ではあっても、もし下手な演技を見せる事があれば俺は途中でも容赦なく席を立つからな。という心意気で舞台を見る速水。
そして、外の悪天候はそんな大切な舞台に容赦なく牙をむきます。
飛ばされてきた看板に割られる入口のガラス。そして停電。
停電の中ライトに足をひっかけライトも倒してしまいます。これはもう中止するしか……。
流石の黒沼でもこれはもう無理かなと考えましたが、とりあえず持ってきた懐中電灯で真っ暗になった舞台を照らしてみるとそこには。
真っ暗な舞台の上。誰もが演技どころではなかったその状況で、ただ1人だけずっとジェーンであったマヤの姿。
これを見て己を恥じる桜小路。気合を入れなおし芝居を続行し始めました。
ほぼ暗闇の中、舞台の上に数本の懐中電灯を置いて続行される芝居。それを見守る速水。
マヤ達は最後まで舞台をやり切る事が出来るのでしょうか?
33巻へ続く
画像:「ガラスの仮面」コミックス32巻より引用
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