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【感想】ガラスの仮面49巻 病んでいくお嬢様とついに辿り着いた終点(12年待ち)

当ブログはその性質上、どうしてもネタバレを含みます。そんなの嫌だ!という方は十分に注意して読んでください。

あらすじ

廃墟であるシアターXでの「紅天女」の記者発表で、マヤと亜弓の二人の情熱がぶつかり合う。果たして「紅天女」の精霊は誰に降臨するのか?北島マヤの本当の本番はこれからだった。

bookwalker作品紹介より

というお話です。作者は美内すずえさんです。『北島マヤの本当の本番はこれからだった』とかなかなかの皮肉だなって思います。

登場人物

北島マヤ:ガラスの仮面のメインヒロインの1人。子供の頃に月影先生にその才能を見出され、様々な困難も乗り越えついに念願の紅天女の試演を演じる事になる。昔から自分の大ファンであった『紫のバラのひと』の正体が速水真澄である事を知り、恋心を抱き速水の事を『魂のかたわれ』と思うようになる。

姫川亜弓:ガラスの仮面のメインヒロインの1人。大女優姫川歌子の娘であり恵まれた環境で育った。しかしその環境に慢心する事なく努力を続けてきた努力の天才。マヤの生涯のライバルであり、ついに紅天女の試演でマヤと戦う事になる。稽古中の事故により失明の可能性がある。

月影千草:初代の紅天女。元々は身寄りの無い孤児だった。盗みに入った劇団で尾崎一漣と出会い芝居の道へと進み始める。『月影千草』は芸名で、本名は千津。妻子持ちであった一漣に恋心を抱きその想いを伝えようとしていたが一漣はその人生の最後の間際までその気持ちに応える事は無かった。一漣を魂のかたわれとし、今は亡き一漣とも舞台の上では繋がっていられると感じその魂を守るために紅天女を演じ続けてきた。体が弱くもう紅天女を演じる事は二度とない。

速水真澄:大都芸能の若社長。マヤの事をずっと影から『紫のバラのひと』として支え続けた。大都の利益のためと考えた策略のせいでマヤの母を死においやってしまう(ただし母が死んだ直接の原因は自動車事故)。母との事やそれまでの様々な確執からマヤは自分の事を好きになどなるわけがないと思っていたが、いつの間にかお互いがひかれあっていた。子供の頃から星空が好き。氷の男がついに自分の気持ちに素直になり、いよいよマヤと結ばれるのかと思いきや……。

桜小路優:劇団オンディーヌ所属のやさしいイケメン。舞ちゃんというガールフレンド(女友達)がいたがマヤの事を好きなので別れた。ヒロインズのインフレの激しい演技力に置いていかれるガラスの仮面界のヤムチャポジションかと思われたが、微妙に覚醒したようなしてないような。自業自得のバイク事故(信号無視からのトラックと衝突)により全治二か月の重傷。長所はやさしいこと。短所はやさしすぎること。Googleで『桜小路くん』と検索するとサジェストの1番最初は『桜小路くん かわいそう』である。

速水英介:粘着系厄介オタク。とにかく千草たん大好きの厄介。厄介キモオタが権力を握るととんでもない事になるという事を俺達に教えてくれた。千草たんへのストーキング中に事故で足の自由を失い、千草たんの別荘への凸中に自動車が崖に落ちて死にかけた。でも千草たんラブ。過去のトラブルのほとんどが結局はこいつのせい。

鷹宮紫織:ガラスの仮面界を破壊するためにやってきた闇からの刺客。実際問題、同情するべき点ももちろんある。彼女が病んでしまったのは速水の優柔不断が原因。しかし他にやりようがないものか。

感想

いよいよ49巻!いつになったら50巻は発売しますか!(現在12年待ち)

はい!というわけで今回紹介するのは『ガラスの仮面』の49巻です!

ついに!ついに49巻です!上記にもあるように、49巻が発売されたのは2012年ですのでこれを書いている2024年なので現在では12年待ちの状態です。果たして50巻は出るのでしょうか?

ちなみに、50巻は一応発売延期中です。発売する予定はあった。それが延期になったのです。

さて。これまで長い間お付き合いいただきましたこのシリーズもここで一旦終了です。もちろん、50巻が発売されたらその感想を書きたいと思います。

さぁ!最後の49巻の感想といきましょう!

シアターX

紅天女の試演の舞台となる通称『シアターX』での関係者による記者会見が開かれました。

明らかな廃墟に質素な記者会見会場があってかなりシュール

シアターXとかいう大層な名前で、いかにも秘密だった場所!みたいな雰囲気ではありますがこの場所になりますよという事自体はかなり最初の頃から発表されていましたので、関係者も含めなんで今さら?という気もしないでもないですが、会場の詳細とさらに試演の細かなレギュレーションの説明などがありました。

安全上危険だと思われる部分だけを撤去し、基本的には廃墟のまま上演を行う。

大道具や舞台セットは一切無しで照明も最低限。ただし小道具や芝居に使う道具の持ち込みは自由。

主なルールはこの2点。つまりは『廃墟でやります』という事です。そのままですが。

黒沼チームの一真はバイク事故により松葉杖無しでは歩けない重症。小野寺チームの亜弓は脳に出来た血腫のせいで失明の危機。という状態での廃墟公演。

桜小路君はともかく、亜弓の事は誰も知らないわけですけどね。

とにかく、危険がいっぱいの状況での試演という事です。

しかし。月影先生が『この試演が終わった時になぜこの場所を舞台に選んだのかわかる』と言うのでなるほどそういうものなのかなという感じです。

ちなみにどうしてこの場所を選んだのかは今でもわからないままです

さらに、事前の舞台稽古は両チームとも1日限りという事ですがその舞台稽古とやらまですら辿り着かないままなのですけどね。悲しい事に。

というわけで、今回紅天女の座を巡って争うマヤと亜弓にそれぞれのこの舞台への感想を聞いてみました。

まずは亜弓から。

会場の感想と言われましても、亜弓は目がほとんど見えないので感想も言えません。見えないので。

という事で、ここがどんな場所でも関係無い。わたしはわたしの紅天女を演じるだけです。という力強いお言葉をいただきました。

そしてマヤ。

『子供のころのごっこ遊びを思い出した』という感想でした。

そろそろマヤもいい年齢ですからね。すでにお酒も飲めるとの事で成年済みだと思いますので、もうちょっとなんか気の利いた事を言えないものかと思わないでもないですね。

このフワフワ返答に記者も失笑。まぁそらそうよ。

他には、黒沼もマヤとだいたい似た感じの答えで、小野寺は『月影千草さんからの挑戦状だと思っている』と答えました。

黒沼は『月影先生』と呼びますが小野寺は『月影さん』なんですね。あんまりそこに注目した事無かったので全編通してこうだったのかはわかりませんが。

最後に、桜小路君のケガについて本人に『大丈夫なんですか?』と確認する質問があってとりあえずの会見は終了に。

最後に、マヤと亜弓の握手で締めたい……。

が。亜弓は目がほとんど見えません。もしここでマヤとの握手の距離感を間違えて失敗してしまったら。

この握手の誘いを亜弓は拒否しました。

表面上はライバルと握手なんか出来るか!という感じですが、実際はそうではない。この亜弓の態度を受けてマヤも絶対に負けない!と反撃しました。

マヤと亜弓の両名。また、それぞれの関係者が様々な思惑を抱えてのシアターXの会見でした。

病ンデレラとロイヤルデモンローズ

一方そのころ速水は。

暗闇の自室で浴びるように酒を飲んでいました。そこまで酒に溺れる理由は1つ。

婚約者の紫織の自傷行為が原因です。

速水に婚約解消の話をされ、そのショックで洗面所の鏡をぶち割りその欠片で手を切って以来、紫織お嬢様は『紫のバラ絶対殺すマシーン』になってしまいました。

もし俺が紫織の身内側目線でこの事件を見たなら、そして全ての真相を知ったのなら、速水真澄と北島マヤは絶対に許さないわけですが、これはあくまでフィクションの世界のお話です。

もうちょっと他にやりようがあったのでは……。とはおそらく全国のガラスの仮面読者の方々も思ったのではないでしょうか。

貴重な49巻が、陰惨なシーンで埋められていくのは心が痛みますね。

速水が縁談を断った事が原因だと、紫織の祖父は激怒。紫織本人も、何を言っても家族の事もよくわからず、とにかくひたすら紫のバラをちぎる作業に没頭です。

ご飯も食べず、点滴を打ってもそれを嫌がり抜いてしまうので一旦睡眠薬で眠らせてからの点滴しか方法が無いようで、どんどん衰弱していくばかりです。

誰も打開策が思いつかずどうしたものかと悩んでいると、ついに事件が起きました。

紫織の部屋にあった紫のバラを移動しようとした使用人の腕を紫織がハサミで刺しました。

刃傷沙汰です。傷害事件です。

その後、周りの人々の必死の説得によりなんとかハサミを手放した紫織。

正直この辺は読んでても全然面白くないうえに絵面が怖いものが多いのであまり画像の紹介もしません。

それから、鷹宮会長と速水が2人になり『紫織が紫のバラに固執する理由を知っているか?』というような事を聞かれた速水は知らないフリをします。

確かに初めて男性と付き合う紫織は世間知らずだし物足りないかもしれない。でも紫織を幸せにできるのはきみしかいないのだ。

と、改めて鷹宮会長から紫織との婚約を考え直してほしいと言われる速水。

しかし、速水の決意は固いものでした。直接断りはしないものの、このままでもよくないのでなんとかしなければ……。

悩む速水でしたが、さらに事件が発生します。

ふとしたキッカケでマヤと亜弓のシアターXでの会見の事が書かれた週刊誌を見た紫織がスイッチオン。

マヤの写真を雑誌から破りとり、その上に大量の紫のバラを敷き詰めて『お葬式をしなきゃ』と言い出してなんとバラに着火。

これにより鷹宮邸は炎上(物理)します。

……なんだこれ。どうなってんだ。なんでこんなもん見せられてんだ俺は。こんなん見て誰か喜ぶんか。紅天女はどうなった。

とにかく。

このままでは紫織の危険が危ない。もはやリミッターが振り切っている彼女は何をしでかすかわからない。

今のままではいつか紫織は死んでしまう。鷹宮会長は速水に頭を下げて『なんとか紫織と結婚してくれ』と頼み込みます。

鷹宮グループの後継者にも任命する。財産も全部譲る。君の無理もなんでも聞く。だから、紫織と結婚してくれないか。と。

なんだこれ。

確かに紫織の命は心配です。しかし。速水以外のみんなはこの問題の本質を知りません。なぜ、紫織はこんなにも自分を追い詰めてしまったのか?

その原因は『北島マヤが憎い』という感情です。

つまり。紫織の命も危険だが、それ以上にマヤの身が危ない。

紫織の心に宿る狂気。その矛先はマヤなのです。

このままではいつかとんでもない事になる。なんとかこの狂気から彼女を目覚めさせたい。一体どうしたら……。

さて。48巻の感想でも少し書いたのですが、マヤと速水は以前に豪華客船の上でお互いの気持ちを打ち明けました。これにより2人は急接近したわけですが、このまま2人がくっつくとそこで1つのテーマが終わってしまいます。それをしない(させない)ためにはどうすればよいか?

簡単です。2人がくっつくその理由よりもさらに強力な『離れる理由』を作ってやればいい。

魂のかたわれ。心から、魂からの結びつきを確信した2人を引き離すほどの強い理由。

それが『紫織の命』となったわけです。

マヤと速水の幸せな未来。その天秤の反対側に乗せられたバランサー。それが闇堕ち紫織というわけです。

今後、マヤと速水がいい感じになればなるほどそうはさせまいと神の力によってバランス調整が入り、紫織の身に不幸が降り注ぐのです。

なんだこれ。

そして。

意識を取り戻した紫織は、自分の周りにたくさん置かれた紫のバラを見て『今度こそ永遠に眠れる場所に連れていってあげる』と言い出し、大量の紫のバラを抱えたまま庭の池に入水。

それを発見し急いで紫織を池から助け出す速水。

この凄惨な状況を見た速水。鷹宮会長からの再びの結婚を考えなおしてほしいの言葉についに折れてしまいます。

紫織との結婚を承諾する速水。2人はどうなってしまうのか。

それから

ここまでで49巻の半分くらいです。

現状の最新刊の半分程度がこの陰惨な話です。気持ち的には全然盛り上がりませんね。

さて。そんな別漫画と化してきたマヤ陣営とは違って、亜弓は相変わらず芝居一筋の熱血ヒロインです。

『日々目が見えなくなっていく』という状態異常を少しでも克服するために。その不安を和らげるために。紅天女に近づくために。

夜のシアターXに侵入し、ハミルと共に演技の練習です。

元々夜の暗闇ですから、何もなくとも見えにくい。そんな中でさらに視力の落ちている亜弓が稽古するのですから、階段から足を踏み外したりもします。

それを見てとっさに助けに行こうとするハミルでしたが亜弓がそれを制止。

舞台の上ではいつもひとり。誰の助けもかりられない。だからわたしを助けようとしないで!

その高潔な精神は大変素晴らしいと思いますが、もうちょっと周りを頼ってもいいような気もするんですけどね。

そんな暗闇での稽古の中、少しずつ自然と一体となる感覚を掴んでいく亜弓。いいね!最高だ!これこそ俺が読みたかったガラスの仮面だ!!!

一方。

限界ギリギリまでメンタルを削られ、マヤの身に危険が降りかかるかもしれないという状況も重なりついに心折れた速水。

紫織との結婚を考えなおし、それが世間の噂となります。

それを聞いて動揺し芝居が手に付かなくなるマヤ。

またそれかよ。どんだけメソメソするんだよ。という気持ちになってしまいます。もうここ最近マヤはずっとこれ。

船の上でお互いの気持ちを確かめあい、ついにここから芝居に集中出来るのか!と思った矢先にこの展開。不毛な綱引きです。

あまりのショックの大きさに月影先生に相談するマヤ。

その相談相手である月影先生も不倫の恋愛を生涯の恋みたいな事言ってる人ですから、ロクな大人がいません。

まぁ語られていないだけで、往年の名女優月影千草がステップアップするその段階では望まぬ恋を強制される機会なんかもあったかもしれませんけどね。あんまり考えたくないけど。

泣きじゃくるマヤに、魂のかたわれとの恋愛観について語る月影先生。

一漣の奥さんがその話を聞いたらどう思うかな?ってちょっと言ってやりたくなりますね。刺されるぞ。

一方。

マヤに対する気持ちを割り切って生きていこうとする速水に、影の男聖がこんな事を言い出します。

この発言を聞いて速水は静かに激怒。別荘を去ろうとした聖に向かってなんとナイフを投げます。そのナイフは首筋をかすめました。

これ以上話をややこしくしてどうするんだという気持ちになりますが、これは速水に自分の気持ちに気付かせるためのウソでした。

マヤをいたただく。そう言った聖に対して『おれはおまえを殺すかもしれん』とまで言い切った速水。

その感情の源泉は何か?そこにあるのは、もう隠せないマヤへの気持ち。愛です。

そして、聖に『自分に正直に生きてください』と説得され、自分に正直に生きる決意をする速水。

もう信念はグラグラです。どっちやねん!とつっこみたくなります。こうして優柔不断な生き方をするたびに紫織の病みゲージが溜まっていくわけです。

この説得を受け、ついに紫のバラのひととして伊豆の別荘でマヤと会う決心をしました。

そのために。『速水』の家を捨てる覚悟と一緒に。

そしていよいよ、紫のバラのひと会える!!!という喜びのマヤで49巻は終わりです。

ここから12年。まだ2人は出会えていません。

さて。というわけで長く続いてきたこのガラスの仮面シリーズですがここで一旦終了という事になります。49巻分の感想を読んでいただいた方がどれほどいらっしゃるのかわかりませんが、ありがとうございます。

もちろん、単発で読んでくださっている方々もありがとうございます。

個人的な感想としては、熱血スポコンをしている時は面白いのですが、終盤の紫織が絡んでくる病んだ描写はあまり好きではありません。

速水とくっつくくっつかない。その話だけでかなり引っ張ってますから、序盤の頃のテンポ感とは段違いです。最初の頃は、一応マヤも学校に通っていたのにその日常がほとんど描かれる事が無かったくらいのテンポでしたからね。その分濃縮された濃さがあった。

それに比べて終盤は、なんとなく同じような展開の繰り返しと全然芝居をしようとしないマヤに寂しさを感じながら読みました。

それの良し悪しについてはそれぞれの感想があると思いますから強くここで言う事はしませんし、これが好きだと言う方もいて当然だと思います。

トータルでの感想としては名作だと思います。まだ読んだ事の無い方にはぜひ読んでみてもらいたいです。

またもし需要があれば別に全体としての感想の記事をかも書いてもいいかなと思ったり。

さて。ではこの作品の大ファンとしてはやはりこの言葉でここを締めくくりたいと思います。

50巻へ続く

画像:「ガラスの仮面」コミックス49巻より引用

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