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【感想】ガラスの仮面44巻 月影先生から見た現在の2人。悩む亜弓の身に大事件が起こる。

2024年3月9日

当ブログはその性質上、どうしてもネタバレを含みます。そんなの嫌だ!という方は十分に注意して読んでください。

あらすじ

「紅天女」の役に取り組むマヤと亜弓の前に現れた月影千草は、ふたりの演技の差を感じ取る。そんな中、亜弓の身体に異変が…。

bookwalker作品紹介より

というお話です。作者は美内すずえさんです。

登場人物

北島マヤ:速水の願いによりいよいよ覚醒しはじめた。

姫川亜弓:マヤが男とフニャフニャしている間も真面目に練習していたのに、覚醒を始めたマヤに追い上げられていく。かなり理不尽。さらに、この巻で亜弓をとんでもない出来事が襲う。

感想

頑張った者が報われるとは限らない理不尽な何か

はい!というわけで今回紹介するのは『ガラスの仮面』の44巻です!

毎巻後半の部分をザックリ説明するので、この辺から物語の盛り上がりがどんどんカットされていく悲しさ。何度でも言うんですけど、読んだ事無い人にはぜひ実際に単行本を読んでほしい。かなり省略している部分があるので。

月影先生現る

『時はきた』という理由で、マヤと亜弓の両名の稽古の様子を見るために都会へとやってきた月影先生。とりあえずはまだまだ死ななそう。

『月影先生が見ている』という事で何かのスイッチが入って覚醒するマヤ。

愚かな人類が合戦している様子をただ見守るだけの演技です。

この辺『紅天女』という劇の謎な部分なんですよね。紅天女という天女がいて、阿古谷=紅天女みたいな話っぽいんですけど、どうやって紅天女が阿古谷に転生する事になったのかが謎。

この場面は阿古谷なのか天女なのか。いまいちよくわかりません。いつか通しでストーリーを見られる日は来るのでしょうか。

さて。月影先生が見にきた事で覚醒したマヤはなにやらスピリチュアルな事をベラベラと4ページほど語ります。俺はアホなのでなんだかよくわかりませんでした。

そんな、なにか極まった印象を受ける稽古の場面から一転。2ページほど急に速水のオフィスの場面が挿入されます。

『人は1度も会った事の無い人を愛せるものなのか?』という速水からの質問に対する答えです。

ガラスの仮面世界にもインターネットだのメールだのという言葉が登場するようになりました。もし、この世界に昔から携帯が存在していたら、北島親子の悲劇は無かったかと思うと残念な気持にはなりますね。

それにしても、これでもかなり文明は進んだはずなのに『インターネットで知り合ってメール交換』はすでに現代において滅びつつある文化なのかなと思うと不思議な気持になります。

最近誰かとメアドを交換した記憶がありません。メールでのやりとりとかしなくなったなぁ。

DiscordのDMをメールだと言えばそこそこ使うんですけどね。

そんな余談はさておき。

場面はまたマヤ達の稽古場に戻り、桜小路君とマヤの稽古風景。まぁこの2人はなかなか仲良くやってんな。という感想の場面です。仲良し。

そして。

午前の部の稽古が終わり、さて月影先生もちょっと本日の感想など言ってから帰りましょうかねという空気になりました。

しかし。稽古場で1人茫然としているマヤ。どうやら、マヤの中にある『阿古谷』がまだ抜けきっていないようで現実に帰ってきていません。

そんなマヤを見て月影先生が水を飲ませようとします。『阿古谷』と声をかけて。

それを受けてマヤは。

阿古谷として。ひざまずいて両手でコップを持ち、頭を下げて『いただきます』と。

これがマヤの中に残っている阿古谷としての姿です。この様子を見て月影先生はご満悦。

さてその一方。

次は亜弓の稽古を見学に。死にかけなのに結構フットワークが軽い。奈良県の山奥からやってきておりますこのお方。

月影先生が見ている。その辺の心意気はマヤと同じです。亜弓も自分なりの精一杯の演技を披露します。

しかし、ここまでずっとガラスの仮面を読んできた訓練された読者ならお気づきでしょう。こういう場合、大事なのは演技そのものではありません。

亜弓の演技を一通り見たあと、お疲れさまと言って水を差しだす月影先生。

そう。大事なのはこれをどう受け取るか?です。

この水を『あろがとうございます月影先生。恐縮ですわ』と、大人としては合格ラインの態度で水を受け取り飲みました。

ひざまずき、その言葉通り『いただきます』の姿勢を見せたマヤとは対照的に、いかにも現代人的なスタイルで水を飲んだ亜弓。

言いたい事はわかる。その差は歴然で、阿古谷をその内側に宿し、本当に阿古谷として生きようとしていたマヤと、阿古谷を『演じていただけ』の亜弓。という感じですね。

しかし。どちらかと言えば亜弓派である俺としてはこの審査は平等ではないと言いたいわけです。そもそも、マヤの時は『阿古谷がまだ抜けていないと感じたので試した』という感じでした。一方の亜弓は特にそういうわけでもなく、マヤの時にやってなかなか気に入った方法だったから亜弓にも試してみた。という感じなわけです。

あと、源造が『マヤさんはひざまずいて両手にコップを捧げ持ち頭を下げていただきますと言いました』という事を亜弓に告げるのですが、そもそもマヤはわざわざひざまずいたわけではありません。

水を渡された時の体勢が最初から座っていたのです。なので『ひざまずいた』はそうしたというよりは初期状態がそうだったのです。

色々とちょっと亜弓に不利な条件だった気がする。

とまぁ、ここまでウダウダ書いたうえで『そういう話をしてるんじゃない』というのもわかっているんですけどね。とにかく、ここでもまたマヤとの差を知りショックを受ける亜弓。

ずっと努力してたのになぁ。マヤはどっちかというと男とフニャフニャしてただけなのに。主人公補正恐るべし。ずるい。

そして最後は速水にも会いに行った月影先生。楽しむ東京観光。

こちらでの話題は『紅天女の上映権について』です。次世代の紅天女に選ばれた者にはその上映権も与えられるようで、その上映権が欲しい速水……というか大都芸能。

しかし。

マヤは速水を超嫌っている。マヤの母親を死に追いやったのはお前なんだからな。忘れるなよ!

というような事を言い出す月影先生。情報が古い。いつの話をしてるんだ。

この話をするのもなんだか久しぶりですが北島親子の仲を一番最初に引き裂いたのは月影先生だからな。お前そこ忘れるなよ。お前がマヤのお母さんからの手紙やらを全部無断で燃やしていたから、マヤはお母さんの事を何も知らないままになったんだからな。他の誰が忘れても、俺は絶対にその事を忘れない。

まるでさも自分は絶対正義であるかのような言い方をしていますが、その実際はとんでもない悪い影響を与えているわけです。そしてその事実は今でも誰にもバレていないし、おそらく今後もバレる事はないでしょう。源造が月影先生を売るとは思えないし。

まぁ、リアルな話をしますともうそれは30年以上前の出来事ですので、誰も覚えていないのです。

そんな、自分の事をすっかり棚に上げて偉そうに言う月影先生の言葉がダイレクトにメンタルに刺さり落ち込む速水。確かにこの件に関しては速水も許されない部分がかなりあるのですが、肝心のマヤ本人がそこまで気にしていないように見えるのがなんとも複雑なところで。

マヤ自身は、もうそういうのよりも『紫のバラのひと=速水真澄』の事が好きでしょうがないので。

悩む亜弓。そして……。

月影先生の訪問は両陣営にそれなりの影響がありました。人格的にはやや問題がある人ですが、やはり往年の大女優月影千草としての影響力は凄まじい。

『過程がどうあれ最終的に火力が高い方が勝ち』のこの世界観ではその一点突破型の生き方は非常に有利です。

月影先生の反応と、周りの人達との会話からマヤと亜弓の両方が『相手の演技も見てみたい』と思ったりもしました。根本で似た者同士ですからね。

ライバルであると同時に無類の芝居好きでもありますから、自分が実力を認めたそのライバルの演技と言えばもう最高峰なわけで、それを見たいという気持ちもわかる。

一真を紫のバラのひととする事で、段々と魂のかたわれ感を掴み始めるマヤ。そしてそんなマヤにベタ惚れな桜小路君。

その一方で、段々と悩み始める亜弓。

飛んだり跳ねたり、まるでパックを思い出させる阿古谷を演じる亜弓でしたが、素人の俺でもそれはなんか違うとわかります。阿古谷は女神というか天女の化身であってくのいちではない。

そんな亜弓の様子を見て、カメラマンのハミルの反応は。

亜弓のそれには心が無い。形だけの紅天女には興味がない。

とバッサリ切り捨てられてしまいます。なかなかに厳しい意見。

この辺亜弓陣営の辛いところなんですよね。マヤの周りの人達は良くも悪くもイエスマンではない、自分の意見をハッキリ言う人ばかりなのですが、亜弓側はどちらかと言えば亜弓を持ちあげようとする人達ばかりなので本音が聞けません。

というか、本音は本音なんだと思いますが『姫川亜弓フィルター』を通して全てを見ているためかなり偏った意見になってしまう。

そんな中こうしてハッキリ意見を言ってくれるハミルの存在は貴重。

この言葉でより一層悩んでしまう亜弓。

理屈抜きで役の本質を掴んでくるマヤ。どうすれば、もっと阿古谷になれるのか……。

雨や雷や龍の心を信じる気持ちを、どうしたら周りの人達に説得力を持って魅せられるか。

大雨の降る中、たくさんの人が見ている前で阿古谷を演じてみる亜弓でしたが、それも途中でやめてしまいました。

あなた達今のわたしのセリフを信じて?

そんな亜弓の問いかけに、渋い反応をする人達。心に響いていない。見る者に説得力を感じさせる事が出来ない。

なぜなら、そもそも亜弓が自分のセリフを信じていないのです。

どうすればいいのか。悩む亜弓。

そんな亜弓に、とんでもない出来事が起こります。

倒れてきた照明器具に当たりそうだった女性をかばって、頭部に照明の直撃を受けた亜弓。

周りの心配に対して大丈夫だと返す亜弓。しかし、なんかめまいがするし吐き気もあるし……。

その日の稽古が終わった夜。亜弓の体に異変が起こります。

突然目が見えなくなりました。だいぶヤバイやつ。

それから

ここまでで44巻の半分くらいです。

ここからは、この時に強く打った頭の後遺症でどんどん調子が悪くなっていく亜弓。

頭痛にめまい。吐き気。そして時々目が見えなくなる。

もはや稽古がどうとかいう問題ではなく、明らかに命に関わる重大な何かが起きている事は間違いない状態です。

これまでなんとか我慢してきましたが、ついにロッカーで1人倒れてしまいます。

一方で。

紫織とのデートで共に夜景を眺める速水。

高層ビルから眺める夜景はとても綺麗ですが、速水は空にある星を見ていました。ここは都会。そうたくさんの量の星が見えるわけでもなく、寂しい風景です。

そんな速水の様子を見て紫織が。

夜空の星よりも足元に輝く銀河の方が魅力的。と言ってしまう紫織。

あぁこれ結構地雷ですよね。ロマンの共有が出来ない。ここの価値観が合わないのかなり辛いですよ。速水はこう見えて結構ロマンチストというか、そういう『心に響く何か』を大事にするタイプだと思うので、同じ物を見て同じように感動出来ない相手ってのはかなり厳しい。

もちろん、速水が星空にこだわりがある事など紫織は知らないわけですから、もし知っていたならこんな事は言わなかったかもしれません。しかし、時すでに遅し。

とまぁこういう感じで、亜弓がその命を削って紅天女に頑張って近づこうとしているのに、マヤの方は恋愛パートが始まります。

またしても稽古に身が入らず、想像力が働かない、恋と言われても一真ではなく速水さんの事しか出てこないと1人涙します。

まぁ、いいんやけども。一進一退。

他には、流石にここまで微妙な態度を続けられて速水の気持ちを疑い始める紫織。

紫のバラのひと=速水真澄ではないかと気づき始め、未来の嫁候補の特権を使って無断で速水の別荘をガサ入れしました。最低ですね。

そんな無断ガサ入れで、ついに『マヤが紫のバラのひとに送ったと思われるアルバム』という、動かぬ証拠を発見します。

ってかマジでこれやったらダメなやつですよ。こんな事をする人と一生を添い遂げるのは俺は無理です。親しき仲にも礼儀あり。パーソナルスペース守れない人とは一緒にはなれない。

さらには、マヤが紫のバラのひとに送ったという卒業証書も発見。これで『紫のバラのひと=速水真澄』の確証を得た紫織は、なんとこのアルバムの写真を破ってしまいます。

あぁもうダメだこの女はマジでもうダメだ。

そして……。

45巻に続く

画像:「ガラスの仮面」コミックス44巻より引用

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