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【感想】ガラスの仮面 1巻 40年たっても色あせない名作の始まり

2019年12月1日

当ブログはその性質上、どうしてもネタバレを含みます。そんなの嫌だ!という方は十分に注意して読んでください。

 

もし面白いと思って頂けたなら、Twitter等で拡散やコメントいただけるとめちゃくちゃ喜びますのでどうかお願いします。

あらすじ

演劇界に小さな巨人誕生!演劇への熱く激しい想いをもつ北島マヤ。
その小さな小舟が、演劇界幻の名作「紅天女」というゴールに向かい、今荒波の大海に漕ぎ出す。そこでマヤを待ち受ける数々の怪物たち。はたしてマヤはどう戦っていくのだろうか? bookwalker作品紹介より

というお話です。作者は美内すずえさんです。

登場人物

北島マヤ:この物語の主人公。万福軒という小さな中華料理屋で母親と住み込みで働いている。TVが好き。というか、好きという言葉で表現出来ないくらい好き。TVを見始めると周りの言葉がまったく聞こえなくなる。さらに言うとTVだけでなく演劇全般が好き。映画でも劇でも。とにかく夢中になりその世界に入り込んでしまう。公園で子供相手に見てきた映画の内容を演じているところを、月影先生に見初められる。

月影千草:劇作家尾崎一蓮が書いた『紅天女』の主演女優。尾崎一蓮は主演は月影しかいないと公言し他の女優が演じるのを許さなかった。尾崎一蓮の死後、紅天女の上映権を譲り受けその後も自分を主演に演じ続けるが、劇中の事故で顔に大ケガを負い女優生命を絶たれる。自分の後に紅天女を演じられる女優を探している。

姫川亜弓:父に映画監督。母に大物女優を持つサラブレッド。劇団オンディーヌでマヤと出会いその才能を見抜く。

感想

他人を演じる。という事の狂気。

物語は、なんの変哲もないごく平凡な女子中学生北島マヤが、母と共に中華料理屋で住み込みで働いているところから始まります。

親子で住み込みで労働って。娘13歳なのに。と現代の価値観だと思うわけですが、なんとこの作品の初掲載は1976年。約40年前です。俺の生まれる前。その当時の価値観に沿ってお話は続いていくのです。

まずはラーメンの出前に映画館に向かうシーンから。

しかし、実はマヤに映画館の出前は禁物。なぜなら、夢中になって帰ってこないからです。

ちょっとだけ・・・。映画館の中をのぞいてしまうマヤ。

そこから1時間半が経過してしまった

ほんのちょっとだけ。ちょっとだけ見たらすぐ帰るから。

そこから1時間半。がっつり映画を見てしこたまおかみさんに怒られるマヤ。そらそうだ。

これだけ怒られたのだから、今後は態度を改めるだろう。なにせ住み込みなのです。バックレる事もできない。

ここはおとなしくするしか・・・。

が。

まるで集中しない

激怒するおかみさんの説教の最中に目に入ったTVの映像に夢中になってしまうマヤ。大丈夫かそんな事で。

その後、さすがに反省したのかお店の手伝いを切り上げて部屋で裁縫をするマヤ。しかしどうにも不器用なせいでボタンもまともに付ける事が出来ません。

「ツラも良くないし何のとりえも無い子だよほんとに。死んだオヤジに似たのかね。我が子ながらあいそがつきるよ」

と母親にまで怒られてしまう。それにしても辛辣なお母さんだなぁ。

しょんぼり落ち込み家の廊下を歩いていると、またしても例のアレが目に付いてしまう。

日常に支障が出るほどのTV中毒者

もはやTVさえあれば他に何もいらないほどのTV中毒です。この後、部屋の主に覗き見がバレトビラを閉められてしまい、それでも体や脳はTVを欲するのでついには家の屋根に登り隣の家のTVを盗み見します。

遠すぎて見えない

その後隣人にも盗み見がバレましたが、優しい隣人はマヤを家に迎え入れさらにはケーキも食べさせてくれました。でも、ケーキが出てきた事にも気づかないくらいTVに夢中になってしまいます。

そしてさらに別の日。

ラーメンと餃子を出前中のマヤは、ついうっかり新作公開中の映画館の前を通ってしまいます。

いけない!今は出前の途中!この前も激怒されたばかりなのに!

理性はそう判断しますが、やはり内に宿る魂にウソはつけない。

映画館は友達のフリをして近づいてきます

本当に大丈夫でしょうか。

その後案の定映画に夢中になってしまい、うっかり足でおかもちを蹴飛ばし中身を床にぶちまけてしまいました。

ここでようやく、自分が出前の途中であった事を思い出すマヤ。

帰れば当然母親に激怒されます。何回言っても治らないので体罰込みで。

あまりの剣幕に見かねた中華料理屋の店長さん?が、なんでそんなにTVや映画の芝居が好きなんだい?とマヤに聞きます。その返答がこちら。

というような供述を繰り返しており

なかなかにクレイジー。

後日。

公園にて見た映画の内容を子供達に演じてみせているところを、後にマヤの人生に大きく関わる事になる月影先生が目撃。

かなり強引な手段でマヤの色々を聞き出そうとするも逃げられてしまいました。

椿姫が見たい

椿姫という演劇のチケットを中華料理屋の娘が持っているという事を知ると、なんでもするからそのチケットを譲ってほしいと懇願するマヤ。

それに対して娘(杉子)が出した条件は『大晦日の日の年越しソバの出前120件を1人でさばけ』というものでした。

そんな事出来るわけないじゃないか!真冬の寒い日に徒歩で120件もの出前をさばくなんて!!

と、思うじゃん?

劇のためなら死んでもいい

軽い冗談のつもりで無茶振りしたら、かなりガチな感じでグイグイきた。ここでもし約束を反故にしようものなら刺されそうな気配がするので、とにかくまずは事の顛末を見守る事になりました。

果たして、120件の出前は終わるのでしょうか?

13歳の少女の出前の風景です

お芝居が観たい。ただその一点にのみ人生の全てを賭ける少女。やってる事は年越しソバの出前ですが、24時間マラソンのそれよりよほどハードに見える。

そしてついに、出前レースは佳境を迎えます。

何度も言うけどただの出前

もうここまでされたら怖いし気持ち悪いしで条件とか関係無しに券を渡さないと後日刺されそうな展開になってきましたが、なんとかマヤは12時までに120件の出前を達成してしまいます。

3段で迫る恐怖。最後のコマのコメントがいい味

たしかに約束を守っただけですが、そこににじむ狂気に犯罪の匂いを隠し切れません。もしここで渡さなければ、アレしてでも券を奪い取る覚悟が彼女の目には宿っている。

しかし。ただの住み込みの出前持ちの女。そんな相手に演劇のチケットを渡すのもプライドが許さないのでしょうか。娘さんは、なんと冬の海に向かって券を捨ててしまいます!

あぁ・・・。これはもう諦め・・・ない!!

冬の夜12時の海に飛び込んで、演劇の券を泳いで探すマヤ。

まったく同感です

こうして、マヤは無事演劇を見る事が出来るようになりました!めでたしめでたし!

杉子さんの心に大きく深いキズを残したような気がしないでもないですが。

椿姫を見た後

なんとか杉子さんから券を強奪譲ってもらい、ついにねんがんのえんげきをみる事ができたマヤ。

しかし。それからというもの、ラーメン屋の仕事も上の空になってしまいます。まぁ、読者目線では基本的に集中してなかったんですけどね。

そんなフワフワ時間の彼女の元に、1件の出前の依頼が。

年末の伝説の出前のウワサを聞きつけ出前の依頼を・・・。という事ではなく、どうにかしてマヤの住所を調べた月影先生からの出前でした。

見事マヤを自宅に呼び出す事に成功した月影先生。そこで、ラーメンもそこそこに『どんな演劇を見たのか私に説明してくれない?』と、暗に即興で再現の芝居をさせようとする先生。

なんとマヤは、3時間半あった劇のセリフを一語一句間違えずに完全に再現。さらには俳優達の細かな仕草までも再現してみせたのです!

それを受けて伝説のあのフレーズ。

初おそろしい子

演劇の申し子。女優になる宿命を背負って生まれてきた北島マヤの初めての才能の片鱗がここで見られる事になります。

学祭でもマジ

はっきりと自分の中に眠る『役を演じたい』という気持ちに気づき始めたマヤ。

学祭の舞台で道化の役を演じる事になったりします。

学祭の練習をするJC

観客を笑わせるための道化の役。というのがどういうものなのか全然掴めず悩むマヤ。

とても中学の学祭の劇だとは思えない入り込みようです。

笑われ役とは。ビビ(役の名前)の気持ちとは・・・!

本番ギリギリまで悩み続けストイックに『他人を演じる』という事にのめりこんでいく少女。

最終的にこうなった

どうしてこうなった!なぜこんなになるまでほうっておいたんだ!と言いたくなりますが、とにかく彼女の『女優道』というのは険しいのです。

結果としては見事劇は大成功!これによりさらに自信と女優に対する気持ちを大きくするマヤ。

偶然新聞広告で見かけた『劇団オンディーヌ』の研究生募集に募集してみる事にしました。

オンディーヌにて

溢れる気持ちを抑えきれずに劇団オンディーヌにやってきたマヤ。しかし悲しい事に、お金がとても必要である事が判明。貧乏の子であるマヤにはここでの修行は難しい。

しかし、ここで出会った姫川亜弓と即興パントマイム対決をする事になりました。

お題は『逃げた小鳥』

周りのモブがマヤを馬鹿にする事で夢中でマヤの演技力に気づかない中、亜弓だけはその実力を察します。

迫真の演技

逃げる小鳥にとまどいながらも追う様子を、目線の動きだけで表現するマヤ。もはやマヤにとってそこは劇団オンディーヌではなく、逃げた小鳥を追いかける部屋。最初タンスの上にいた小鳥はちゃぶだいの上に。そしてさらに高い場所に。

移動する小鳥を追うも、手の届かない高い場所にいってしまいどうやって捕まえたらいいのか悩んでしまうマヤ。

ここでパントマイムは手詰まりか・・・!またしてもマヤを馬鹿にするモブ。

しかし。ここで亜弓が参戦。

個人的にこの辺がめちゃくちゃ好き

高いところに逃げてしまった小鳥を口笛で呼び寄せ、自分の指先に止まった小鳥をカゴの中に戻す。という演技を披露。

結局劇団オンディーヌに在籍する事はできませんでした。

が。月影先生の誘いにより『劇団つきかげ』に加入する事になり、そこで演技を学ぶ事になりました。

これから始まる彼女の女優道!果たしてどうなるのか!!

 

というのが1巻の内容です。濃いな!!

最近の漫画ならたぶん出前レースのところくらいで1巻で収まるペースだと思うよ。

なんというか、中途半端な変な日常パートみたいなのが全然なくて、とにかく『演じる』という事に関するエピソードがギチギチに詰め込んである感じです。

冒頭でもちょっと触れましたが今から40年前に連載開始した作品であり、今なお現役で連載中である伝説の漫画です。

俺が生まれる前の漫画ですが、今読んでも面白いですね。紹介したいエピソードに省略したい部分が無い。許されるなら単行本1冊丸々上げて「どや!面白いやろう!」って言いたいところですよ。

今ジャンプで連載中のアクタージュ好きには、ぜひこの作品も読んでほしいです。

『他人を演じる』という、自分で無い何かに完全になる行為。そこに潜む狂気。そういうのをぜひ感じてほしいです。

人が人を演じる。というパっと聞いただけでは無理のない話のような気がするのに、なぜかどんどん人外じみた努力を始める。俺こういうの大好きなんですよね。

巻単位で紹介しているこのブログ。ガラスの仮面は40巻以上あるので、いつか全部紹介します!面白いですよ本当に。ぜひ読んでみてください。

画像:「ガラスの仮面」コミックス1巻より引用

 

おまけ

かなり現代風にアレンジされてる感じです。公式です。期間限定らしいですが。悪いやつじゃありません。

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