【感想】ガラスの仮面 17巻 吸血鬼カーミラ無双。亜弓様の怒りが牙を向く!一方マヤはまだ闇の中に
あらすじ
「吸血鬼カーミラ」で、マヤのために立ち上がる亜弓。一方のマヤは、明日への希望の光を一切失ってしまう。果たしてマヤはどこへ向かっていけばいいのか?そして速水真澄は、マヤに女優最後の仕事を与える。 bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は美内すずえさんです。
登場人物
北島マヤ:母を失い、またその原因が大都芸能にある事を知り演技が出来なくなってしまう。そのスキをついて乙部のりえに様々なものを奪われてしまう。大ピンチ。
姫川亜弓:汚い手を使ってマヤを陥れた乙部のりえを倒すために舞台『カーミラの肖像』で乙部のりえと共演する。マヤ最大のライバルにして最大の理解者。超かっこいい。
感想
役者の風上にもおけない卑怯なのりえを亜弓様が討伐なさる!白目吸血鬼無双が始まる!!
はい!というわけで今回紹介するのは『ガラスの仮面』の17巻です!
個人的にちょっと色々思うところがあってしばらくはガラスの仮面の感想をなるべく書いていく予定です。
さぁでは紹介していきましょう!
亜弓様がブチ切れます
16巻にて、父のコネを使ってのりえと同じ『カーミラの肖像』の舞台に立つ事になった亜弓。
その目的はただ1つ。汚い手を使ってマヤを陥れたのりえに、身の程を思い知らせるため。舞台の上では演技が全てである事を思い知らせるため。
来るべき本番の舞台に向けて、稽古中は演技を抑えその手の内を隠しておく徹底ぶり。演技で奴を潰す。そして、マヤの仇をうってやる!!
「わたくし、あなたの本当の実力と才能がどんなものか楽しみにしていましてよ」
のりえとすれ違いざまにそう言い放つ亜弓。ガチ切れです。のりえ絶対潰すウーマンです。
一方のマヤは。
アテナ劇場で行われた舞台『黄金の実』の舞台上で、母の事を思い出しまったく演技が出来ずに舞台をクビになり、大都芸能に呼び出されていました。
速水との直接の会話の中で、私は演技が出来なかったんだからクビにでもなんでもしてください。私は商品失格ですから。と言うマヤ。
そんなマヤに対して激を飛ばす速水。
まぁ『お前が言うなや』と思うわけですが、いつまでもそこに縛られていても話も進みませんから、とにかくマヤには元気を出してもう一度役者として復帰してもらわねば困ります。
それは大都芸能としてではなく、速水個人の思いとしても。
演技が上手く出来なくなってしまったマヤに、速水はさらに次の舞台の仕事を用意してきました。
『菜の花』という劇団と一緒に民話劇をする仕事のようです。その台本を受け取ったマヤは。
なにもマヤが悪いわけではないのに、自分で背負い込んでしまうマヤ。役の気持ちになろうったってなれない。気持ちはずっと北島マヤのままなんです。
演技できないんです……。女優失格です……。
すっかり役者として、演じるという事に対しての気持ちを折ってしまったマヤ。
それを必死で説得する速水でしたが、マヤは聞き入れる様子がありません。
そらそうなるよ。と思いますよね。
でもまぁ、16巻の最後にもちょっと書きましたが、この一連の出来事の最初の一歩を踏み出したのは月影先生だという事を俺は忘れない。絶対に。絶対にだ。
そして。
どうやら『速水真澄』としての説得は通じない事を悟った速水は『大都芸能』としての説得を試みます。
契約があるから。きみは大都の、俺のものだ。と。
「もしいやだといったら?」
「きみに契約違反料が払えるか?」
一応、腐っても大河ドラマの主演女優で映画もやったし、もしかしたら現時点でそこそこマヤはお金を持っているのでは?と思うんですけどどうなんでしょうか。まぁ億円って言われたらどうにもならないんですけど。
……ならないのかな?
この辺の、マヤの経済事情はこの漫画ではあまり語られる事はありません。いつまでも『貧乏で苦労性の少女』というような印象を受けます。どうなんでしょうね実際。
まぁそれはさておき。
そんなわけで劇団菜の花と共に演じるのは『天女菊の里』という名前の劇で、マヤの役は長女の菊乃役。
演じる場所は丸和デパートというデパートのようです。場所や劇の題目はともかく、この『菜の花』の人達は少し問題があるというか、世の中に対して少しいじけた考えの持ち主でして。
元とはいえ大スターであったマヤを歓迎しませんでした。
ボロクソに言われるマヤ。可哀想。
ただ、俺達はマヤがこれまで生きてきた人生の事情を知っているので同情しますが、菜の花の人達から見れば外から見たマヤの演技がその全てですから、こんな評判になってしまうのも仕方ない部分もあるわけです。
『舞台上では演技が全て』の世界の厳しさを感じますね。
これだけボロクソに言われたあげくに頭からお茶までぶっかけられて、マヤの新しい役者人生のスタートです。最悪だ。
始まる舞台。カーミラ無双
そんな波乱万丈なマヤとは対照的に。場面は亜弓の出演する舞台へ。
稽古中に露骨なまでの敵意を亜弓に向けられた事により、動揺しまくりで本番直前に荒れるのりえ。
もはやマヤの付き人であった頃のもっさりした田舎少女の面影は一切無いわけですが、これでもかというくらいの負けフラグを積み重ねていきます。
小者丸出し。これから舞台上で公開処刑されるのりえとは対照的に、堂々とした美しい立ち振る舞いをお見せになる亜弓様。
カーミラの衣装に身を包んだその姿はあぁこれもう終わったわ。確実負けイベだわ。と思わせるに十分の迫力でした。
まだ始まってもないのに、すでにやや心が負け始めているのりえ。しかしなんとかその心を奮い立たせます。
ここが役者として勝負所。北島マヤの代役としてではなく、女優乙部のりえとしての大事な舞台。
その初戦の相手は姫川亜弓様。
出る試合の階級を間違えてしまった感が半端ないわけですが、それもやむなし。のりえは逆鱗に触れてしまったのです。
お前だけは許さない。絶対に許さない。絶対にだ。
あなたなど役者の風上にもおけない!役者は演技で勝負するものよ……!
ここから、舞台上での演技はさておきその幕間においてはとにかく『マヤをハメたお前だけは絶対に許さない』オーラを全開にしていく亜弓様。
俺個人的にこのシリーズ凄い好きなんですよ。たまらん。
そうして。
卑怯で下劣な役者である乙部のりえの首を確実に狩るために、本番前の稽古では芝居を抑えてまで準備をしていた亜弓様の、舞台上でのまさに独壇場が始まります。
まず舞台冒頭。
圧倒的異質な恐怖感で登場し、観客を一気に引きつけた亜弓様。
怖いわ。
『まるで人間じゃないみたい』
という、吸血鬼を演じるうえでは最高の賛美をいただき、初手からのりえをガクブルさせていく亜弓様。
もうこのシリーズ中ののりえの様子は常にこれです。ちょっと盛り返す瞬間など一切訪れません。容赦なく延々とボコボコにされ続けるだけのエグい舞台です。
初めての登場シーンで感じたように、吸血鬼というのは恐ろしい異質な存在。
しかし。ここから亜弓様が演じていく『カーミラ』という吸血鬼は、それに限りませんでした。
時に優しく。また、時に悲しく。
これまで観客の心の中にあったその『吸血鬼像』を変えていく、そんな素晴らしい演技に誰もが引きつけられていきます。
というか、観客の描写もあるんですがなによりもう共演というかターゲットののりえ自身が一番亜弓様の演技にはまっているというか、完全に観客目線なんですよね。
そして。
舞台上にて圧倒的な力の差を見せ続けた亜弓様。その圧倒的なボコボコっぷりはぜひ単行本を買って読んでください(宣伝)
切り貼りで知ってしまうにはもったいないのでね。別にこのブログからとかではなくていいですから。ぜひちゃんと読んでほしい。面白いから。気づいたら49冊買ってるから。大丈夫だから。この沼は怖くないから。大丈夫だから。
これがカイジなら『ぐにゃぁぁ』ってなってる事間違いなしな感じで、心をボキボキに折られたのりえ。
舞台が終わった頃には、もう主役はのりえ演じるマリアではなく亜弓様が演じるカーミラになっていました。
さらに、カーテンコールにおいては他の役者が舞台上から登場するのに対してカーミラ役の亜弓様は客席から出現するサプライズまで。
『舞台上では』どころか舞台終わってからも死体蹴りを入れる亜弓様。徹底です。徹底しております。
そして、この敗北が原因でなにやら後ろ盾ぽい感じだった人にも見捨てられるのりえ。
心を完全に折られた彼女は、ある1つの事に気付きました。
『姫川亜弓に敗北……?』
自分を圧倒的に打ち負かした恐ろしい女優姫川亜弓。そんな彼女には、彼女が唯一認めるライバルがいたのです。同じ『紅天女』の座を巡って争う、唯一無二のライバルが。
その名は。
自分を圧倒的に負かした姫川亜弓。そのライバルである北島マヤ。あの怪物と肩を並べる事が出来る唯一の存在。
マヤもまた、とんでもない女優なのだという事に気付くのりえ。
のりえだけでなく、この劇を見た観客の中にも同様な気持ちが芽生える人もいたようでした。
しかしマヤは
『のりえジェノサイド編』が終わり、もう一方の主役であるマヤはというと、今だに暗闇を抜け出せずにいました。
マヤが次に演じる菊乃という役は
『貧しい農家に生まれた事をくやしがっていてやがては年老いた両親や心やさしい妹を捨てて都に出ていってしまう身勝手な娘』という役。
そのセリフの中にある家族や生まれを中傷するようなセリフが今のマヤにはどうしても言えない。
菊乃の感情が理解できない。どうして菊乃はこんなセリフが言えるの?
菊乃になれない。どしても演技が出来ない。
演技も出来ず、ただ震えるだけになってしまうマヤ。そんなマヤを見て、演技も出来ない役者と一緒に仕事など出来ないと、雨の降る外にマヤを追い出してしまう菜の花のメンバー。
そして、マヤはついに演劇を辞める決意をするのです。
家を出て、雨の降る外をあても無く彷徨うマヤ。
これからどうやって生きて行こう。あたしぐずだしのろまだし、勉強もできないしぶきっちょだし……。
と、マヤはとにかく自己評価が低いのですが、この考え方を作ったのはおそらく小さい頃からマヤに対して結構ヒドい事を言い続けてきたであろう母親のせいではないか?と思うと、結構業の深いシーン。
想像の母もなんか厳しい事言ってるし。せめてそこは暖かい母親を思い出してあげてほしいところ。
公園のブランコに乗り、1人ただずむマヤの元へ、速水がやってきました。
公園で言い争う2人でしたが、目の前でマヤが倒れてしまったので大慌てで家に連れて帰る速水。
医者を呼び、家の者にマヤの身支度をさせ、ベッドに寝るマヤを見ながら物思う速水。
今まで自分の仕事を後悔したことなどなかった。仕事を成功させるためにはどんな卑怯な手を使っても平気だった。冷血漢。そう呼ばれてきた俺が……。
マヤ!お前を救いたい!
マヤを愛している。そんな自分の気持ちをついに自覚した速水。
自分のせいでマヤがこんな事になってしまったのなら。どんな手を使ってでも立ち直らせてみせる。もう一度、紅天女にむかわせてやる。
たとえ、どんなに憎まれても。
そして、速水はマヤに薬を飲ませるために……。
それから
ここまでで17巻の半分くらいです。
ここからは、なんとしてでも演劇への情熱を取り戻させてあげたいと思う速水と、演じる事が出来なくなってしまったマヤと、マヤの復帰を願う亜弓との三者三様の物語に。
速水の家を抜け出し、見知らぬ土地の保育園で働き始めるマヤ。
保育園の子供相手に演じる簡単なお芝居は、とても楽しいものでした。
一方、マヤの失踪の知らせを受けガッカリする亜弓。
マヤの居場所を突き止め、連れ戻しにやってきた速水。
3日間も速水に出されたご飯も食べず、心を閉じ切ってしまったマヤに対して、速水は『最後の仕事』としてある舞台の台本を渡します。
その劇のタイトルは『夜叉姫物語』
マヤに与えられた役は端役。乞食の役でした。一方、主演の夜叉姫役は姫川亜弓。
マヤの最後の舞台。ライバルは、同じ舞台に立つことに。
そして、この舞台がマヤの運命をまた大きく変えていく事になるのでした。
18巻へ続く。
画像:「ガラスの仮面」コミックス17巻より引用
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