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【感想】ガラスの仮面 12巻 マヤの奇跡の人が始まる。女優姫川歌子vs北島マヤの戦い

2020年2月9日

当ブログはその性質上、どうしてもネタバレを含みます。そんなの嫌だ!という方は十分に注意して読んでください。

 

あらすじ

マヤと亜弓、それぞれの二人のヘレン。観客の心をとらえたのはどちらか?そしてマヤはあらたな道へと進むことになる。 bookwalker作品紹介より

というお話です。作者は美内すずえさんです。

登場人物

北島マヤ:亜弓とダブルキャストで舞台『奇跡の人』のヘレン・ケラー役を演じる。

姫川亜弓:マヤとダブルキャストで舞台『奇跡の人』のヘレン・ケラー役を演じる。

姫川歌子:亜弓の母であり女優。マヤ、亜弓と共に舞台『奇跡の人』でサリバン先生役を演じる。個人的にはこのシリーズのMVP。

感想

マヤ、亜弓がそれぞれ演じるそれぞれのヘレン。そして歌子の女優魂。

はい!というわけで、今回紹介するのは『ガラスの仮面』の12巻です。

残りあと37巻です。遠いなぁ。多いなぁ。でも、できればもっと増えてほしい。50巻、51巻と……。

全ての結末を知るためには当然作品が終わってもらわないと困るわけですが、それとは別にずっと続いてほしいような気もするので難しいところですね。

では紹介していきましょう!

亜弓のヘレン

サリバン先生がヘレンに『人間らしい食事』を教えるために、テーブルでスプーンやフォークを使って自分のお皿でご飯を食べる事を教えるシーン。

鼻を椅子にぶつけて大量の鼻血を流すというアクシデントが発生するも、それを隠す事なくむしろ観客に見せつける事でヘレンを演じた亜弓。

そして、それに動揺する事なくサポートするサリバン先生。ちょっとビックリはしたけども。

姫川親子のプロ根性を感じます。舞台上とはいえあんなに可愛がってた娘がアホほど鼻血流してるのに。顔色1つ変えずに進行していきます。凄いぜ。

11巻終盤、12巻冒頭とこの『食事を教えるシーン』が続きます。これまでヘレンの両親が『可哀想だから』と言いながらヘレンに好き放題させていた事を、サリバン先生は良しとしませんでした。

絶対にテーブルで、スプーンで、自分のお皿で食べさせようとするサリバン先生。

絶対に、それを受け入れようとしないヘレン。

2人の壮絶な戦いが舞台上で繰り広げられます。

暴れて逃げ出そうとするヘレン。その足をつかんで絶対に逃がさないサリバン先生。

口の中に含んだご飯を、サリバン先生の顔に向けて吹き付けるヘレン。それに対して、ヘレンの顔に水差しの水を思いっきり浴びせるサリバン先生。

これが本当に親子の演じる芝居か。それほどまでに鬼気迫る舞台上の2人。

そこにいるのは『姫川親子』ではなく、自分達の意志を貫こうと戦う『ヘレンとサリバン先生』なのです。

肉親達が『優しさ』と言ってこれまで目を逸らしてきたヘレンへの教育。このままこれが続いたら、あなた方親が死んだ時にヘレンはどうなるんですか!?と、厳しい教育を施すサリバン先生。

昼12時近くまで続いた2人の『朝食』は、ついに終わりを迎えます。

ただ食事をさせただけではない。なんと、食後に自分のナプキンをたたむところまで。

この出来事に感動し、涙を流すヘレンの母。優しさとはなんなのか。少し考えさせられるシーンです。

ヘレンの肉親達がこれまで目を逸らしてきた、嫌な部分。現実の汚い部分。『いつかそのうちなんとかなる』と、ただ先延ばしにし続けていた部分。

そこに強引に手を伸ばし、ヘレンに『作法』を教えたのです。

そして、さらなる教育を行うために、また家族の甘やかしからヘレンを遠ざけるために、サリバン先生はヘレンと2人で森の中の小さな小屋に移ります。

その小屋で過ごした2週間で、ヘレンはおとなしく、行儀よくなりました。

しかし。

ヘレンに『全てのものには名前がある』という事を教える事が出来ない。どうしてもそこが伝わらない。

指を使った会話。すでにヘレンは18の名詞と3の動詞を覚えました。

でもそれは、ただ指が覚えているだけ。ヘレンの中で、それを心と結びつける必要がある。

最初の1つ。初めの段階さえ踏めれば、あとは全て理解できるはず!

ヘレンの事を真剣に想い、ヘレンの父に教育期間の延長を申し出るサリバン先生。

サリバン先生がヘレンを想うその熱い気持ちが観客にも伝わります。

どうしたら……。どうしたら、あなたにそれが伝わるの……。

そして、いよいよ舞台はクライマックスへと向かいます。

森の小屋から家族の元へ帰ってきたヘレンとサリバン先生。

家族がいる。という事で、またしても暴れ始めるヘレン。そして、それを許さないサリバン先生。

水差しの水をサリバン先生に浴びせるヘレン。驚く両親でしたが、それを甘やかす事なく、水差しの中に自分で水を入れさせようとするサリバン先生。

ポンプを使い、水をくみ上げるヘレンに、衝撃が走ります。

W・A・T・E・R

ウォーター。水です。そこにある、その冷たい液体。それの『名前』がウォーター。水です。

ついに。体と心で『ウォーター』を理解出来たヘレン。

その喜びと衝撃から、身近にある色々な物を触っては指で言葉をつづるヘレン。ついに、伝わったのです。殻を破り、外へ飛び出したのです。

GROUND グラウンド。地面。STEP ステップ。階段。 MOTHER  マザー 。お母さん。

そして。

サリバン先生の顔を軽く叩き、自分の手を差し出すヘレン。

『あなたの名前はなんですか?』

そのヘレンの問いに、先生。と答えるサリバン先生。

すぐにサリバン先生の手に『TEACHER』と書き返すヘレン。

そう。先生。

これまで暴れる事ばかりだったヘレンが、サリバン先生に感謝の気持ちを表現しました。

あぁ。何回読んでも感動するわここ。

こうして、大好評のうちに初日の舞台は終わりました。

しかし、なぜか表情が沈んでいる亜弓。

そう。明日には、ついにマヤの舞台が始まるのです。

マヤのヘレン

前日に大好評だった亜弓のヘレン。それと自分を比べてしまい、気後れするマヤ。

このままではいけない。そんなマヤの元へ、あるプレゼントが届きます。

大きな紫のバラの花束。

たぶん、全編通してこの『バーーン』みたいな表現てあんまり無いと思います。ちょっと面白い。

このプレゼントを見た事で、冷静さを取り戻すマヤ。自分のヘレンを演じるだけよ!

そしていよいよ開演。

マヤの舞台の近くの椅子で、見る事はしないけどタイ焼きを大量に食べ始める亜弓。この流れが凄い好き。

そして始まるマヤの奇跡の人。

まず登場シーン。

寝そべりダランとした恰好で登場しました。

このマヤを見て、稽古の時とは何か違う、まるで別人のようだと感じる歌子。

思わず動揺していきますが、それを出さずに舞台は進みます。

ヘレンがサリバン先生のメガネを取ってしまうシーン。本来は平然としていなければならないのに、取り乱してしまいます。

その後も、独特の間。緊張と緩和をもって人の目を引きつける演技を続けるマヤ。

ヘレンとサリバン先生でありながら、女優北島マヤと姫川歌子の演技バトルが始まろうとしていました。

稽古の時と同じように、ヘレンの人形を取り上げるシーンや、顔を叩かれるシーンでまたしてもマヤの演技に引きづられる歌子。

観客はともかく、演じる側の関係者は歌子の異変に気付き始めます。

前日の亜弓が演じた奇跡の人。ヘレン役が1人変わっただけなのに、その印象が大きく変わる。

あの子と演じていると演技が出来なくなる。いつの間にか、演技ではなく本気になってしまう。

こんな事は初めてだ。

自分の中に目覚め始める気持ちを抑えきれず、小野寺に対して『この舞台を私に任せてほしい』とお願いをする歌子。

そして始まる、稽古の時とはまったく違う即興劇に近い奇跡の人。

最初とまどいを感じるマヤでしたが、歌子の気持ちがどうであれ関係無い。舞台の上ではマヤはヘレンであり、また歌子もサリバン先生です。

それを演じるだけ。

そして続いていく2人の本気の演技。どうなっていくのか本人達にもわかりませんが、その分観客の心を打つ芝居。

時に喜劇に。時に悲劇に。

コロコロと装いを変えていくその舞台。本気のやり取りの中で、次第に役に同化していくマヤと歌子。

2人の舞台の行く末はどうなっていくんでしょうか?

それから

この辺で12巻の半分くらいです。ここから舞台はどんどん進んでいき、亜弓の時と同じようにクライマックスのシーンがあり、それが終わった後でのカーテンコールで。

娘である亜弓にはしなかったキスを、マヤにする歌子。

こうして、大女優姫川歌子に認められた役者として、また1つ大きくなっていくマヤ。

そしてさらなるステップがマヤを待っていました。

13巻へ続く

画像:「ガラスの仮面」コミックス12巻より引用

 

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