【感想】ガラスの仮面 11巻 ヘレン役はダブルキャストに決定。姫川親子の壮絶な演技に注目
あらすじ
「奇跡の人」のヘレンを選ぶ最終オーデションで、サリバン先生役の女優・姫川歌子の下した決断とは?運命のライバル、マヤと亜弓のあらたな闘いがはじまる。 bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は美内すずえさんです。
登場人物
北島マヤ:月影先生からの破門を解くためにヘレンケラーの『奇跡の人』のオーディションを受ける事に。三重苦を体得するためにそれはもうエグイ修行を自らに課す。
姫川亜弓:マヤと『奇跡の人』のヘレンケラー役を巡って争う。パっと見グロ画像だけど、これぞガラスの仮面と言える名シーンの1つ。
感想
ついに始まった舞台『奇跡の人』。ダブルキャストで演じるそれぞれのヘレン。
はい!というわけで、今回紹介するのは『ガラスの仮面』の11巻です。
なんか久しぶりの更新だと毎回書いているような気がしないでもないですが。もうちょっと時間に余裕が出来ればいいんですけどね。とっても忙しい。
最近世間で話題の『100日後に死ぬワニ』が死ぬのと丁度同じくらいに会社で発表会がありまして、それの資料作りに忙しいはずなんですが全然資料出来てない。
『あと〇〇日』と書かれ、毎日1日ずつ減っていくそのカウントにワニの死とは別の不安感を抱く日々。
あんまり真面目に考えるとブログ書いてる場合じゃなくなるので、適度にフォーカスボカして生きていきたいと思います。
では紹介していきましょう。
オーディション最終審査
ここまでにヘレン役として3つの審査を終え(オモチャで遊ぶ ご飯を食べる ヘレンを演じる)いよいよ最終審査が始まりました。
こちらでお待ちください。と係の人に言われて連れていかれたのは、ただ椅子だけが置かれた殺風景な部屋でした。
『審査員の方々は後でいらっしゃるので、それまでこの部屋でヘレンとしてお待ちください』
と係の人に言われて待機させられるマヤ達。
これから何をさせられるのか不安に思うマヤ達でしたが、とにかく指示の通りヘレンとして待つ事に。
すると。
突如鳴り響く非常ベルの音。突然の出来事に騒ぎになる大都芸能のビル。
火事か何かが起きたのかと、大慌てで立ち上がる参加者達でしたが……。
『ヘレンとして待て』
はい。これにて最終審査が終了しました。審査の意図する事がわかっていただけたでしょうか。
ヘレンは耳が聞こえない。なので、当然非常ベルが鳴っても気付かないし動揺するはずもなし。
立ち上がってすぐに審査側の意図を理解しましたが時すでに遅し。
慌てて取り乱したマヤ、亜弓以外の参加者は失格。
最終審査に見事合格したマヤと亜弓。しかし、同じ合格でもそれぞれの気持ちは少し違いました。
亜弓は『ヘレンとして待て』と言われたので、やめろと言われない限りはヘレンとしての演技をやめなかった。
一方マヤの方は……。
ヘレンとしていられるのはこれが最後かもしれないと思ったら、不思議に気持ちが落ち着いて自分が北島マヤだという事を忘れた。音が鳴っていたのは知っていたけどなにも感じなかった。振り返りたいとも思わなかった。
とマヤが語るわけですが三重苦という設定がどうとかってのと全然関係無い理由で動かなかったようです。
『ヘレンだから聞こえないはず』と全然関係無い理由。不思議と気持ちが落ち着いていたから。とかいう。
なんだそれと思わないでもないですが、とにかく素晴らしい演技でした。……んだろうか。正直に言っていいのかそれ。ちょっとボーッとしてました。ってのとそんなに変わらない気がしないでもない。
が、とにかく。
最終審査を通過し、いよいよヘレン役の候補として生き残った2人。2人のうちどちらをヘレン役に選ぶのか審査員の間でも白熱の議論が交わされます。
純粋な話し合いだけでは意見が分かれて決まらない。なのでここは多数決でいきましょうよ。というわけで、審査員各自が『ヘレン役にふさわしい』と思う方に投票する形式で決める事になりました。
審査員は7人。
審査員が推しの名前を書いた紙が回収されますが、最後まで悩み続ける亜弓の母である歌子。
なかなか名前を書かない歌子の分はとりあえず後回しにして、先に回収した6名分からまずは開票……。
って、それ平等じゃなくない?まだ書いてない人がいるのにその人の目の前で開票作業とかおかしくない?
票が偏っていれば、もう歌子は悩むだけ無駄。という事になるわけですが、もし……。もし……。
歌子以外の票が同数になった場合は?
はい!というわけでね!マヤ3票亜弓3票!同数です!
決着の行方は歌子の票で決まる事になり、しかもそれをすでに公表してしまった。あ~ぁ。最悪だよこれ。俺だったらこんなもん書けるわけないよ。
『一体誰の名前を……』
見守る他の審査員。最悪の空気や。胃が痛くなるやつやでこれ。しかも亜弓は自分の娘。
亜弓に入れれば七光りだと言われ、マヤに入れれば逆張りだと言われ……。
アホな開票制度にしたばっかりに、どちらを選んでもイメージ的にはマイナスにしかならなさそうな状況で歌子が選んだのは……。
やはり出来る女はやる事が違う。ドヤ顔で両方に票を入れました。
自身もアニー役と出演する中で、どちらにも素晴らしい魅力を感じたので2人とも捨てがたかった。
というわけで。
厳選なる審査の結果、ダブルキャストでヘレンを演じる事が決まりました。
アニー・サリバン役の姫川歌子を相手に、1日交替でヘレン役を演じる事になったマヤと亜弓。
逃げ場の無い全力ガチンコ勝負の始まりです。
稽古が始まる
いよいよ始まる舞台『奇跡の人』の稽古。三重苦のヘレンに色々な事を教えるために結構手荒い手段も使うサリバン先生ですが、マヤはともかく姫川親子はそんな体張った演技を親子で上手く出来るのか?
と思う周囲の人々。
小野寺がしょうもない嫌がらせをマヤにして、速攻で亜弓にやり返されて恥をかく。などの小エピソードも挟みながら稽古は始まります。小者の積み重ねに余念がない。素晴らしい。
まずは、サリバン先生がヘレンに文字を教えようとする最初のレッスンのシーンから。
ヘレンに人形を持たせ、ヘレンの手に文字を書く。
『D O L L 』
ドール。こうして、持たせた物の名前を手に書く事により、持った物の名前を教えようとするサリバン先生。
次に、持たせた人形を取り上げ、指文字で名前を教えるサリバン先生。
しかし、人形を返して欲しいヘレンはそれを拒否。見えない、聞こえないヘレンからすれば何をしているのかまったく不明。手遊びとしては面白いかもしれないけど、人形は返してほしい。
全力で拒否するヘレンと、全力で教えようとするサリバン先生。
今回のシリーズは、ダブルキャストで演じるマヤと亜弓はもちろんですが、その両方と一緒に演じる事になるサリバン先生役の歌子さんにもぜひ注目していただきたい。
見た目華やかなので綺麗で上品な人なのかと思ってたら、これが凄い熱い人なんですよ。
レッスンを拒否するためにサリバン先生の顔を全力で叩くヘレン。それを押さえつけるために腕に赤くアザが残るくらい強く握るサリバン先生。
舞台の上では親子だろうと一切関係無い。役者としての誠実で熱い姿勢が見えます。
そして次はマヤの番。
亜弓と同じシーンを演じる事になります。
『D O L L』
同じように指文字を教え、同じように人形を巡る体を張ったやり取りが始まります。
人形を巡る攻防の中で、ヘレンが掴んだ人形をサリバン先生も引っ張り、人形の頭部だけがすっぽ抜けるアクシデントが発生。周囲はそれを見て笑いますが。
首が抜けないような取り方も出来たはずなのに。思わずつられて人形をひっぱってしまった。
自分の意図せぬ演技をしてしまう。マヤの中にある何かに気付き始める歌子。
その後も、顔を叩くシーンでも頬ではなく顔の真ん中を叩いてしまい周囲に笑われてしまいます。
が。見えないのだから、どこを叩いても本来はおかしくないはず。真面目にやっているのになぜ笑われるのか理解出来ないマヤと、マヤの演技にひきづられてしまう事に驚く歌子。
稽古が終わり、笑われた事でしょんぼりしながら公園でブランコに乗るマヤ。
そこにやってきたのは、なんと桜小路でした。
そこから、公園でのちょっとイチャイチャキャッキャウフフのシーンが描かれます。
イチャイチャの表現が古いような気がしますが、実際に古いのでしょうがない(11巻は1979年3月発行)。
その後、ジャングルジム上で偶然手が触れ、いい雰囲気になったところでお巡りさんに見つかり怒られてしまい解散。
走って帰るマヤを追いかけるも、踏切で遮断器が降りて電車が通った事で2人はお別れに。
どっきんどっきん。いいですよね。素敵な表現だと思います。
次の稽古へ
次の稽古はヘレンにテーブルで行儀よく食事させる練習のシーン。
全力で拒否し続けるヘレンに、根気よく……という次元も超えた何かで寄り添い、なんとしてでもテーブルで食事をさせようと努力するサリバン先生。
フォークやスプーン等を持って暴れたりするため、ついに流血沙汰になってしまいます。
演技バトル(物理)漫画。
このシーンの亜弓は可愛い顔ですね。あまりこういう表情はないので斬新。
そのあまりに壮絶な稽古を目にして、これが母娘の芝居なのかと困惑する周囲の人々。芝居の鬼。
亜弓は主人公のライバルなのでストイックでも当然ではあるんですが、それを支える歌子さんがやっぱり凄いんですよ。『ガラスの仮面』という漫画で言えば脇役というポジションなのかもしれませんが、そう言ってしまうには惜しいくらい熱い。
一方。
壮絶な稽古を続ける亜弓に対して、それを見てしまうと亜弓の芝居の印象が残ってしまうからと、稽古を見ないマヤ。
用務員室にて大福を爆食いします。
この『相手の演技を見ないようにしながら甘い物をいっぱい食べる』というシーンは時々登場するのでお気に入り。気になる気持ちを甘い物で抑え込むみたいな意味があるんですかね。
壮絶な芝居シーンがどうしても多いこの作品の中で、恋愛パート以外での女の子っぽいシーンは結構貴重。
そして亜弓の稽古が終わり、次はマヤの番になりました。
マヤの稽古が始まると、入れ替わりで用務員室にやってくる亜弓。
そして大福爆食い。いいですねこのライバル関係。
それから
ここまでで11巻の半分くらいです。ここからは、この舞台最大の山場である『ヘレンが物には名前がある事に気付く』というシーンについて考えていきます。
ウォーター。水に触れ、それがウォーターという名前である。という事を知るヘレン。
俺達にとっては当たり前の事ですが、三重苦であったヘレンにとってこの出来事はどれほどの事であったか。
こんな簡単な文字では表せないほどの衝撃であったはず。
そんな衝撃。水が水である。という事を知った。それに気づいた。その感動を、どう表現すればいいだろうか。
俺このシリーズ大好きなんですよね。凄いストイックで真面目。ヘレンに寄り添う努力を最大限している。
でもこういう展開の凄いなと思う部分は、北島マヤと姫川亜弓という人物が実際にいるわけじゃないんですよ。これはあくまで創作の人物。
で、その創作の人物が、何かの壁にぶち当たってそれを越えて何かの答えを出すわけなんですが、その過程も全て作者の美内すずえさんが考えた事なわけですよ。
悩む内容も、それを克服する方法も、それで出す答えも、作者が全て出した答えであり筋書きなんですよ。
2人はそれぞれこの問題に対して違った解釈の答えを見つけるわけなんですが、その個性の差というのを表現出来るってのは凄い事だなと思うんです。
なんか上手く伝わりますかね。まるでマヤと亜弓という人物が実際にいて、それが生きている世界を見てきて描いたかのように思える。というのが凄いと思う。
特にガラスの仮面に限った話でもないんですけどね。ナメック星なんて無いしフリーザも悟空も存在しないのに、架空の星で起こったとんでもないトラブルをそれぞれの思惑にそって動かしていく。って凄いですよね。
ちょっと話が脱線しましたが、このクライマックスシーンへの答えを手に入れた2人は、いよいよ本番の舞台へと向かいます。
まず最初に演じるのは亜弓から。
舞台で始まっている演技を、見るではないが聞こえる範囲で待機するマヤ。
めっちゃ食うからね。袋の中身がヤバイからね。
いよいよ始まる舞台『奇跡の人』!
12巻へ続く!
画像:「ガラスの仮面」コミックス11巻より引用
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