【感想】ガラスの仮面27巻 ふたりの王女編完結!アルディスとオリゲルドの運命は!?
あらすじ
春の女神のようなマヤの王女アルディスと、冬将軍の娘のような王女オリゲルド。対照的なふたりの王女を演じるマヤと亜弓。最後の幕が下りるとき、観客が見ているのは、どちらの王女なのだろうか?
bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は美内すずえさんです。
登場人物
北島マヤ:『ふたりの王女』でアルディス役を演じる。劇の前半ではふわふわお姫様であったが、その愛と優しさを持って覚醒し世の中を変え始める。
姫川亜弓:『ふたりの王女』でオリゲルド役を演じる。様々な人々を謀略によって陥れ、順調に復讐を果たしながら駆け上っていく。果たしてその先に待つ世界とは。
月影千草:『ふたりの王女』で皇太后ハルドラの役を演じる。往年の名女優という事で舞台に立てばその圧倒的な存在感を発揮するが、あまり出番はない。
感想
ついに終わるふたりの王女!アルディスとオリゲルドそれぞれの未来は!
はい!というわけで今回紹介するのは『ガラスの仮面』の27巻です!
『受動的に生きる限り人生とはクソゲーのままである』というとても心に染みる名言を胸に更新も頑張っていきたいと思います。はい。
ここまでの簡単なあらすじ
ラストニアの敵国であるエリンワルドにオリゲルドが嫁ぐ事でとりあえずの緊張状態は去ったものの、次はハーランドという国との戦争状態に突入したラストニア。長引く戦により疲弊していき、もはや国は崩壊寸前であった。
ついに王宮に詰めかけた市民達に対して王女アルディスは素晴らしい演説を行い、その演説により再び市民からの支持を勝ち取る。
さらに、長引く戦で疲弊した両国の関係を取り持つために敵国であるハーランドへと直接和平交渉に向かうアルディス。
その愛と優しさで厳しい冬の世界を覆す事が出来るのか。
という感じで前巻の後半の復習となります。ちょっと話が複雑なのでよく読まないと置いて行かれますね。
アルディスの優しさと愛
ハーランドがラストニアとの最初の和平交渉に応じなかったのは『ラストニアを信じる事が出来ない』という理由でした。これを受け、ラストニアを信じてもらうためにハーランドからの建国記念祭への招待を受け敵国であるハーランドに向かうアルディス。
ここでのアルディスの振る舞いがハーランドの国王に気に入られ、なんとラストニアとハーランドは停戦協定を結ぶ事となりました。
アルディスの優しさとその慈愛の心が勝ち取った平和。素晴らしいですね。
しかし。この事態を面白く思わない人物が1人。
アルディスの義姉であるオリゲルドです。
『愛で国が治められると思っているの……!大事なのは力よ……!』
これまでの人生で長く監獄生活を強いられ、その生い立ちはかなり深い闇に包まれて生きてきたオリゲルドにとって、愛で回る世界など存在してはならないのです。
もしそんな世界があるのなら、これまでの自分の人生は一体なんだったのか?
そんなオリゲルドは、自身の嫁ぎ先であるエリンワルドからラストニアに援軍の申し出を行います。
ラストニアとハーランド。この両国は拮抗した戦力だったので戦争が長引きお互いに疲弊しており、ついに和平の道へと向かったわけですが、ではその拮抗した戦いの中でラストニアにエリンワルドという強力な援軍が参戦したらどうでしょう?
戦えば勝てる戦力がラストニア側に揃ったのです。
このままいけば勝てるんじゃね?と考えたラストニアは、信頼を得て和平への道を進み始めていたアルディスの頼みも聞き入れず和平調印の前になんとハーランドに侵攻。
結果、ラストニアはハーランドに圧勝。ついに戦は終わったのです。
愚かなり人類。全てはオリゲルドの望む世界へと向かうのでした。
そして、戦争に敗れたハーランドの国王一家は処刑。関係が良好であったアルディスはそれを嘆き悲しむでした。
さらに。国の災難はそれでは終わりません。
アルディスの弟であるヨハンが、狩りの最中に謎の矢により死亡。
犯行に使われた矢はハーランド王家の物とのことですが、果たして本当に犯人はハーランドなのでしょうか?
この事により、現在のラストニアは国王が養生中。第一王位継承者であったヨハンが死に、次の王位継承権はオリゲルドに移りました。
今ここで国王が亡くなればオリゲルドがラストニアの女王となるのです。
しかも、民目線で見ればオリゲルドは嫁ぎ先のエリンワルドよりラストニアに援軍を送り国の窮地を救った大英雄。その英雄が次期トップになるとなると、民の信頼は一気にオリゲルドに集まります。
しかしこれではラストニアの重鎮連中は面白くない。エリンワルドに嫁いだオリゲルドがラストニアのトップになるという事は、実質ラストニアはエリンワルドに占領されるも同じ。
そうならないためにも、第二王位継承者であるアルディスが王位についてほしい。アルディスに女王になってほしい。
こうして、様々な陰謀渦巻く世界でふたりの王女の運命の歯車は回っていくのでした。
ラストニア激動
そしてついに。運命の日が訪れました。
ハーランドとの戦でのケガが原因で長く養生していた国王がついに亡くなったのです。
この日までになんとかオリゲルドを暗殺したかったアルディスの祖父にあたるゴッドフリード伯でしたがそれにも失敗。逆に、オリゲルド新女王陛下への反逆の罪でアルディスの母であるラグネイドと共に逮捕となりました。
先代の王妃であったカタジーナを罠にハメ無実の罪で死刑にさせ、その娘を監獄に幽閉。そして次期王妃となり娘であるアルディスと共に王宮で生活していたラグネイドが、ついにカタジーナの娘であるオリゲルドの手により逮捕となりました。女王陛下への反逆です。死刑は免れないでしょう。
これにてついにオリゲルドの復讐が遂げられたのです。
これに関してはラグネイドの自業自得ですね。まさに因果応報。やったらやり返される。当然の報い。
そして、亡くなった国王に向かって愛娘のオリゲルドは一言。
毒がよくきいたとみえる…
恐ろしきは人の業。という事でしょうか。
新女王陛下に対する反逆の罪で逮捕となったラグネイド。その娘であるアルディスは白の監獄に幽閉される事となります。
幼き日のオリゲルドが受けた仕打ちを、まさに今その娘であるアルディスへと。
幽閉されたアルディス
これまで王宮の中で何不自由なく周りから愛され育ってきたアルディス。これからは、この白の監獄の中での新生活の始まりです。
召使は1人。週に2回の家庭教師に月に1度の神父訪問。食事は日に2回で、散歩は日に1度中庭と塔の上を歩くだけ。
……なんて……過酷……な……生活……なんだろうか?
ここからわかる事は、どうやら働かなくても飯が食えてさらに出来る限り家でゴロゴロしていろ。という事です。
なるほど。後はWi-Fiとネットに繋がる端末と、好きな時に召使がちょっと気を使って席を外してくれる環境であれば俺なら永住できる。
でもなぁ。寒いのがなぁ~~~~~。ネックはそこ。
『くる日もくる日も見えるのは鉄格子の向こうの同じ景色ばかり。気が変になりそうですわ』
とはお付きの召使の言葉ですが、なんだろう。俺にダメージが入る。
そんな話はともかく。
これまでの優雅な王宮ので暮らしから不便極まりない白の監獄生活を続けているアルディスの元へ、ついにオリゲルドがやってきました。
今まで何通も手紙を送るも無視され続け、ようやく念願の義姉との対面が叶い満面の笑顔でその元へ駆け寄るアルディス。
「やっぱり来てくださったのねおねえさま……!」
しかし。
オリゲルト暗殺未遂の容疑で取り調べに。
当然身に覚えのないアルディスはその容疑を否定。ここでのやりとりの中で、母ラグネイド、祖父ゴッドフリード伯が死刑になった事を知らされます。
まぁ、ラグネイドとゴッドフリード伯に関して言えば自業自得ですから特に何も言うべきところもありませんが、アルディスは可哀想ですね。
しかし、アルディスを即死刑にしても新女王になったとたんにいきなり妹を死刑にしたとなっては他の国に対しての印象は最悪なのでそれはしない。でも、自由にすれば今度はアルディスを担いでオリゲルドを打倒しようとする者が現れる可能性もある。
という事で、当分の間アルディスは監獄で幽閉が続く。という事になりました。
頂に辿り着いた者
ついにラストニアの女王陛下となり、復讐を成し遂げたオリゲルド。あとはこれからのラストニアを運営していくという事になるわけですが、これがあまり上手くいかない。
その人望をもって頂点に立った。というわけではありません。どちらかと言えば謀略により人を騙しその座を勝ち取ってきました。
その座を勝ち取った後も、周囲の人物と騙し騙されの世界は永遠に続いていくのです。
もう今さら真っ当な世界に戻れはしない。
自分が蛇であるオリゲルドには、他人もみな蛇に見える。誰の事も信じられない、信じてはいけない。孤独な女王陛下の完成です。
アルディスをこのまま生かしておけば、いつか彼女を利用してオリゲルドを討とうとする者が現れるかもしれない。
いつか、夫であるエリンワルドのアシオ王子に寝首をかかれるかもしれない。
今もしオリゲルドがアルディスを殺せば、今度はアシオ王子が残ったオリゲルドを殺し妻が手に入れた女王陛下の座を奪いラストニアの新しい国王となるだろう。
それを防ぐためにもアルディスは殺せない。監獄に閉じ込め幽閉したはずなのに、オリゲルドにとってアルディスは自らの命を繋ぐための切り札となっている。そんな奇妙な関係となっていきます。
もはや信じる者など誰1人もいない。
これまでその手にかけてきた者達の幻覚を見るオリゲルド。
誰も信じるな。誰も愛するな。誰も信じるな。誰も愛するな。
数々の人を騙し殺め、彼女が手にしたかったものとは一体なんだったのでしょうか?
そこから先は死ぬまで地獄
何も信じる事が出来なくなったオリゲルドの元に、皇太后ハルドラがやってきます。
ハルドラは問いました。
『これまであなたがしてきた事については今さら問いません。これから先、あなたは地獄の中で生きていく覚悟はありますか?』
と。
オリゲルドは言いました。
『なぜわたくしが地獄の中で生きるのです?地獄だったのは牢獄で暮らしていたあの日々です!辛く悲しいひとりぼっちの日々……!』
これに対してハルドラは
『いまがそうでないといえるのですか?』
と返します。
オリゲルドは、確かに復讐を果たしました。ラストニアの国を手に入れ、今まさに頂に辿り着きました。
しかし。その周りには、その手の中には、果たして何が残ったのでしょうか?もしかすると、ただいたずらに大きくなっただけの監獄の中に、今もまだ彼女は囚われているのではないでしょうか。
何も信じられない。何も愛する事のできない。冷たい氷の女王の誕生です。
それから
ここまでで27巻の半分くらいです。ここからいよいよ物語はクライマックスを迎えます。
アルディスを監獄に幽閉してから3年の月日が流れました。
アシオ王子のオリゲルドに対する『別にお前でなくとも、お前を殺して女王を継いだアルディスと結婚してもいいんだぞ』という言葉をきっかけに、3年ぶりにアルディスの生活を確認する事にするオリゲルド。
果たして、そこに待っていたものとは。自分が8年幽閉されていたあの監獄での暮らし。そこに3年住んだ義妹はまだ春の心を持ったままなのだろうか?
数奇な運命を辿ったふたりの王女の、物語の結末やいかに!?
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個人的にはなかなかお気に入りの結末です。
作中最長の劇中劇の感想という事で、なかなか難しかったですがいかがだったでしょうか?このためだけに用意された物語なのか、もしかすると別の場所で発表する予定の作品だったのかはわかりませんがいい物語だったと思います。
簡単でハッピーな物語ではなかったところが良かったなと思いますが、当時これを少女漫画として読んだ少女たちの反応がどうだったかが気になるところ。
そして……。
速水に見合いの話がやってきます。
まだまだ先の話となりますが、この見合い相手ってのが……。もう……。なんというか……。個人的にはガラスの仮面作中で1,2を争うくらい嫌いです。
28巻へ続く
画像:「ガラスの仮面」コミックス27巻より引用
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