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【感想】ガラスの仮面36巻 火の試練に挑むマヤと亜弓。天罰をくらう厄介とついに気持ちに気付くマヤ

2024年2月13日

当ブログはその性質上、どうしてもネタバレを含みます。そんなの嫌だ!という方は十分に注意して読んでください。

あらすじ

必死で課題に向き合う亜弓に、興味をもったカメラマンのピーター・ハミルは、しだいに亜弓に女優としての“美”を見出していく。そんな中、大都芸能の会長が行方不明になり、真澄が探しにやってきた。マヤと真澄は大雨の中、山の神社に取り残されて…。

bookwalker作品紹介より

というお話です。作者は美内すずえさんです。

登場人物

北島マヤ:月影先生により風、火、水、土を演じろというRPGみたいな試練を受ける事に。最初の風の試練ではちょっと怒られるものの、それが逆に亜弓のコンプレックスを刺激する結果となる。

姫川亜弓:月影先生により風、火、水、土を演じろという試練を受ける。風の試練では一歩マヤをリード……したかどうかは各自の解釈による。今回かなりの『天性の才能アレルギー』を発症する。まぁ仕方ない。

感想

第2の試練始まる!そして自分の気持ちに気付くマヤ

はい!というわけで今回紹介するのは『ガラスの仮面』の36巻です!

前回の記事にも書いたんですが、この辺になってくると感想を書くために1冊だけ読むというのが大変難しい。次が気になる!!!早く続きを!!!!ってなります。まぁ、49で止まるんですけどね(真顔)

35巻で風の試練を終え、風になろうとしたマヤと風を演技した亜弓。

課題の内容としては『風の演技』だったわけで、風になろうとしたマヤは月影先生にちょっとお説教される事になります。

しかし。理不尽な主人公補正をずっと間近で見続ける事になっている亜弓が才能コンプレックスをこじらせ始めてしまいます。

『風になろうとした』というマヤは、月影先生にダメ出しこそくらいましたがそれこそが演技の本質で、あの子はやはりとんでもない子……!と悩んでしまう亜弓。

続く火の試練のために必死で努力します。

たき火に向かい布を振り、火になる為の稽古に励む亜弓。そして、その亜弓の様子を写真に撮るカメラマンのハミル。

このハミルは、以前に亜弓から写真を撮るのを拒否されているのですがその時に『汗を流して稽古している私を見ても美しいと思うなら写真に撮っていいですよ』というような事を言われ、実際にそう思ったので写真を撮りました。

こうしてハミルの見守る中で『火を演じる』という事に正面から向き合って戦っていく亜弓。

その一方で。

『火を演じる』という課題に対してマヤが選んだのは『八百屋お七』という芝居を1人芝居として演じる事にしました。

ちなみにこの作品は実在します。俺は詳しくないのですがとても有名な話のようです。

参考までに。

ザックリした筋でいうと、火事で家を失ったお七が避難した先のお寺の人(名前は色々あるみたいだけどガラスの仮面の作中では吉三)と恋仲に。やがて家は復興し吉三とは離れ離れになるも忘れる事の出来ないお七は『もう1度火事が起きればあの人に会えるかもしれない』と思い放火をしてしまう。

という内容。そう。

サイコパスのアレですね。

お葬式で会った人にもう1度会いたいからどうこう。みたいなやつと同じ感じです。

その、吉三に恋焦がれるお七を演じる事でそれを『心の火』として表現しよう。というのがマヤの狙いです。

しかしこの演目は自分で考えた物ではありません。速水英介の入れ知恵があってこの演目に決めたわけですが、なぜ英介はこの話をマヤにしたのでしょうか?

狂おしいほどの恋の火。

果たしてそれをマヤが演じる事が出来るのでしょうか?

恋。その事について考える時の思い出す速水の顔。どうして……?

少しずつ、大きくなるその気持ち。

本番が始まる

そしてついに火の演技をする日がやってきました。まずは先行亜弓から。

特に対決という話ではないので、先手必敗みたいな話でもありません。どちらが先でも特に意味はない。

2本の布を持って踊り火のリズム、火の動きを演じる亜弓。

この辺はこれまでの亜弓の人生で手に入れてきた力が活かされる形ですね。ダンスやバレエの技術がある。姫川亜弓という努力の天才がこれまで手に入れてきたもの。

この素晴らしい演技に圧倒されるマヤ。そして絶賛するハミル。肝心の月影先生は半笑いです。満足したんでしょうか。

さて。次に演じるのはマヤ。八百屋お七の1人芝居です。

吉三に会いたいがために江戸の街に火を放つ狂気の女を演じるマヤ。

その演技を見て様子のおかしい月影先生。

そう。この『八百屋お七』はかつて尾崎一漣が今回同様に4種の演技を月影先生に課した時に、月影先生が演じた演目だったのです。

なぜ……!?なぜマヤがこれを……!?

八百屋お七の話を聞いたのは英介からですから、あの粘着系厄介オタクが何かやった可能性が非常に高いわけですが、当の本人のマヤはそんな裏事情など知りません。

放火は死罪。それを十分理解したうえでの、吉三に会いたいがための犯行。もはや自分勝手としか言いようがなく絶対に許される事ではありません。

現代の日本においても、独りよがりの狂った思考で放火を犯した罪人がいました。恋などという理由で正当化されるはずもありませんが、その自分勝手な理由で燃えていく江戸の街を眺めるお七。

これが心の火。なるほど。賛否はあれど理解は出来る気がします。

そしてお互いの演技が終わり。

お互いがお互いの演技を認め、またライバルとする。素晴らしい関係性ですね。

当代の紅天女候補は2人なのでこうして切磋琢磨する事が出来るのですが、月影先生の時代は1人だったわけで、相談したり参考にしたりする相手もいない中での稽古とは想像以上に辛かったのでは?と思ったりもします。

さて。こんな2人の演技を見て月影先生は合格としました。

亜弓の演技は火の精を感じさせるほどに美しく、マヤのそれは心の火を感じさせるものだった。と。

しかし。

本物の恋をしなさい

演技狂の世界であるガラスの仮面ですが、その中に『恋』というものが深く関わってくるようになってきました。演技とは?突き詰めるは人間の心の内面。

その中で恋という、人を想うその気持ちの大きさ。そこに重点を置くのが大切な事になってきました。

どうですか?恋。自分の事より相手の事を大切に想う。最近そういう感情を持つ事も減ってきましたが、素晴らしい気持ちではありますよね。

対象が異性ではなくても、何かを想いそれを糧に生きる。素晴らしいですね。そこにお互いの思いやりがあればなおよしです。

昨今様々な男女の問題が取り上げられるようになっていますが、本当に大切な気持を見失わないように生きていきたいなと思います。

次の試練

火の演技が終わり、次に与えられた課題は水。

この大きな滝の前で、マヤと亜弓なりの『水』の演技を披露する事に。

課題がかなり抽象的ですから、演技力もそうですけどそれを受け入れる感受性といいますか、水を演じるというその手前の段階である『水から何を受け取るか』というところが難しいですよね。

俺ならこんなん見ても『ほえ~!でっかい!』くらいしか感想が出てきません。

そんな水の課題を告げた後に、月影先生からマヤに対して『ところでどうして八百屋お七を演じようと思ったのですか?』という問いかけが。

それに対してマヤは自分にあった出来事を素直に話ます。

忘れられた荒野の時に出会った初老の男性とここの近くでも会って、その人に教わった。と。

その話を聞いて、初老の男とやらに心当たりのある月影先生。

かつて月影先生が一漣の目の前で演じた八百屋お七。

その胸の中にある想いを込めて。恋の狂気を乗せて一漣に届けと演じた思い出の芝居。その事を知っているのは一握りの人々。まさか……!あの男が……!!!

速水英介……!!

自分達の世代だけでなく次世代の紅天女にまで何かしようとしてくるかなりの厄介です。ただのモブなら気にする事も無いですがこいつの場合は力があるから厄介で。

相手役

さて。舞台というのは1人で出来る物ではありません。

紅天女がいれば、その相手役となる『仏師 一真』にも当然それなり以上のレベルが要求される事になります。

試演という形で行われる今回の舞台は2チームに分かれており、チーム黒沼の一真役は桜小路君。

インフレを続けるガラスの仮面の演技バトル界で、ヤムチャポジションかと思われた桜小路君にも修行パートがあるようです。

一真という人物を知るために仏像にその姿を求めた桜小路君は、各地のお寺を点々としてその理想の仏像を探しましたがなかなか出会えません。

そしてふらっと立ち寄った場所で見つけた心動かされた仏像。それを彫ったのが『仏師 海慶』という人物でした。

その海慶と会うために、職場である市役所にアポなしで押しかける桜小路君。

なるほど。迷惑極まりないめんどくささですが、その狂気こそがこの世界では重要です。この世界のルールは『最終的に火力が高い方が勝ち。その過程は問わない』のです。

せっかく見つけた理想の仏師が、こんな平凡そうな人だなんて。

勝手に憧れて勝手に文句も出たりしますが、とにかく彼の事をもっと知りたい。

というわけで、3日だけでいいから弟子にしてください!と猛プッシュ。数日間に及ぶ粘りのすえについに承諾してもらえました。

何度断ってもやってくる押しかけ弟子希望の謎の青年。なるほど。これはこのあと最終的に一家が最悪の悲劇に見舞われる前フリかとも思うわけですが、この世界にはそんな殺伐とした要素はありません。

これを読んでいるみなさんは、こんな怪しい青年が近づいてきても家にあげたりしてはいけません。すみやかに警察に通報しましょう。不審人物すぎる。

結局ご家族の方々と一緒の食卓でご飯を食べさせてもらったりとかしてますが、これマジで怖いですよね。これを信じるこの人達は少しお人よしが過ぎる。

ちなみに、どうでもいい事ですが俺はNTR(寝取られ)が好きな脳が破壊された異常者なので、このシチュエーションに何かワクワクを感じてしまいます。

この怪しい青年は、なんと海慶さんの家に部屋まで与えられまして、住み込みで弟子として暮らす事になりました。

そして、せっかくだから掘ってみなさいと仏像ではないもののちょっとした課題を与えられましての見習いです。

規則正しい平凡な生活を営む海慶……いや、山本清二氏。朝6時に起き土いじりや自宅で飼っている鶏の世話などしたりして生活しているようで。

家に小さな畑があって鶏小屋もある。なるほどなかなかの生活ですね。

山本家には2人の子供がおり、上の子を奥さんが幼稚園に送っていく間桜小路君は家で留守番しながら下の子の相手を……。

お前マジか!?山本家大丈夫か!?

何かあったらどうするのでしょうか。防犯意識の欠片もありません。恐ろしい事ですね。

マヤがこれまでに受けてきた仕打ちとは雲泥の差です。ここには優しい人しかいない。

そして、この優しい世界の中で山本家の居候、住み込みの見習いとして仏師海慶を観察する桜小路君。

やや不満げ

これだけご厚意に甘えていながら、とんでもない厚遇で迎え入れてもらっていながら『平凡で普通なひと』という評価を下す桜小路君。

たぶん、彼の脳はすでに焼かれてしまっているのです。これまでのガラスの仮面世界では『一流はみなどこか頭がおかしい』が普通だったのに、ここには普通の人しかいないのです。

なるほど彼が納得出来ないのも自然な事でしょう。演技を教えるために愛弟子をいきなり冷凍庫にぶち込むような狂人はここにはいないのです。

それにしても、この海慶さんはなぜか全然仏像を彫ろうとしません。確かに桜小路君が不満を漏らすのも少しは理解出来る話です。それを見るために弟子入りしたのですから。

作業場に飾られた四角い木材。どうやら、その中にいる仏の形が見えてくる時があるようなのです。そして、形が見えたら次はその中の仏が『掘ってくれ』と叫びだすのを待っているのだそうです。

木の中の仏の気持ちとそれを彫る海慶さんとの気持ちが合わさった時。それが仏像を彫る時だそうで。

そんな海慶さんの掘る仏像はどうやら大人気らしくて、依頼をしてくる人達もたくさんいるようです。

早く掘ってくださいよ海慶先生。という感じで催促に来る人もいます。

しかし。しかしですよ?海慶先生……いや、山本清二さん。

あなた、確か市役所の職員……つまり、公務員ですよね?これ、副業なのでは?

金銭のやり取りの場面はありませんので、もしかすると無償の可能性も0ではないのですが、この次のページで市役所勤めなんか辞めて仏師に専念すればいいのに。と言われているので、やはりここには報酬が発生している可能性が高いですよね。

市役所で働く山本氏の仕事ぶりなども多少見学して、ついにその時がやってきました。

果たして仏師海慶の仕事とは?どんな仏像が出来上がるのでしょうか?

それから

ここまでで36巻の半分くらいです。

この後は、ついに仏師海慶が仏像を彫り始めます。木の中から仏を取り出す覚悟を決めた男の仕事ぶりとは。

一方。

マヤに教えた『八百屋お七』を実際にマヤが月影先生の前で披露したという報告を聞きご満悦な英介。どうしても手に入らないならいたずらして困らせてやろうとは、どうにもどうしようもない。

しかし。そんな厄介についに天罰が下ります。

『マヤの稽古が見てみたいもんだ』と面白半分でその稽古を見るために紅天女の里へと車を走らせた英介。その途中で、事故によってなんと車ごと崖から転落。

車はその後回収されますがとてもヒドイ損傷状態。とても中に乗っていた人物が生きているとは思えません。

ちなみに、英介が今足が不自由なのも紅天女にちょっかいをかけたためです。何も学ばない。

マヤと亜弓は水の試練を。真澄は義父を探して。

それぞれの思惑を持って人が集まってくる紅天女の里。

周りを囲むのは大自然くらいの里ですので、そこにある満天の星空。

そこで出会ったマヤと真澄。

『紫のバラのひと』が真澄だと知っていながら、その想いを語るマヤ。それを聞く真澄。決して自分の口から真実を語らないですが、かえってそれが真澄の魅力を深めていく。

この星空の出会いは解散になりましたが、その後2人は再び出会います。

紅天女の、紅梅の谷で出会った2人。雨に打たれ梅の木に登って佇むマヤを真澄は助け神社に運びます。

そこで……。

37巻へ続く

画像:「ガラスの仮面」コミックス36巻より引用

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