【感想】アクタージュ 5巻 ついに始まる舞台銀河鉄道の夜
あらすじ
巌から自身の余命を告げられた日を境に夜凪は芝居に没入できなくなってしまう。様子を見かねた黒山の助言のおかげで巌が託した想いの意図を知り、劇団の仲間のために自分がすべきことを見つけ出す夜凪だった。しかし、舞台公演を前に巌の容態が急変して――。 bookwalker作品紹介より
というお話です。原作 マツキタツヤさん 漫画 宇佐崎しろさんです。
登場人物
夜凪景:本人に告げられる形で、巌さんの容体の事を劇団天球内で最初に知る。当然体を心配するが、巌さんの望みは舞台を最高の物にする事。巌さんの死を喰って役作りをする事になる。
明神阿良也:舞台の初日が始まる寸前に巌さんが危篤になり、その時に初めて巌さんの体の事を知る。
巌裕次郎:末期のガンに侵されているが、その身をもって夜凪に『死者』を教えるために稽古をつける。初日の舞台を前にして危篤状態になる。
感想
本番当日にその柱を失った天球はどうなってしまうのか
はい!そんなわけで今回は『アクタージュ』の5巻です。いよいよ始まる銀河鉄道の夜の舞台。しかしそんな大切な日に巌さんがずっと隠していた秘密が団員に知れ渡る事になる。
死を喰らって成長するために
『3ヵ月から半年。それが俺の余命だ』
劇団天球の誰にもまだ教えていない秘密。それは、巌さんが末期のガンでもうすでに先が長くないという事。
しかし巌さんはその自分の身を使って夜凪に『死』を教えようとします。
劇団の誰も知らない2人だけの秘密。その秘密を知ってしまった動揺は演技にも表れてしまいます。
怒られた
無自覚のミスを繰り返し、ついに阿良也に怒られてしまいます。
『新しい価値観を教えている。一時的に混乱しているだけですぐに安定する』と言い切る巌さんに食って掛かる阿良也。
気迫が凄い
芝居の鬼の愛弟子もまた芝居の鬼。演じるという事においては誰の邪魔も許しません。かつてない役への入り込みを体験し、例え巌さんでも邪魔する者は許さないという心構え。
一方、巌さんと共に過ごし『死』について学ぶ夜凪。
『聞きたい事があるなら遠慮するな』という巌さんに対してこんな質問をぶつけます。
たぶんここで本当に辛いと思っているのは夜凪の方だろうと思うんですが、それに対する巌さんの返答は
「ああ。芝居のためだからな」
でした。どこまでも芝居人間で、どこまでも芝居の鬼です。自身の死すら芝居のために使おうという執念の鬼。
悩む夜凪
死という事。みんなに秘密にしているという事。それを1人抱え悩みがちになる夜凪。心配してくれている劇団のみんなに声をかけられても、乗り気ではありません。
1人で抱え込むのは重すぎて、大黒天のメンバーに相談しようとしますがそれも止めてしまいます。
夜、眠れない夜凪。屋上で膝を抱え1人夜空を見上げていると、そこへ黒山がやってきます。
どうやら黒山も巌さんの病状について知っているようでした。
「私どうしよう黒山さ」
「知らん」
死んだらもう会えなくなるのだから。病気の事を劇団のみんなに言うべきだという夜凪。夜凪自身も母を早くに亡くしているので思うところがあるのでしょう。
それに対し、銀河鉄道の夜の文章を読み上げる黒山。
ぼくわからない。けれども誰だってほんとうにいい事をしたらいちばん幸(さいわい)なんだねぇ。だからおっかさんはぼくを許して下さると思う。
巌さんにとっての「ほんとうにいいこと」とは。巌さんとカムパネルラの「ほんとうの幸」を演じる覚悟を決める夜凪。
なんでしょうね本当の幸い。死ぬまでわからんと思いますよ。
ありがとう
黒山に住所を聞いて巌さんの家を訪ねる夜凪。そこで目撃したのは、ガンの痛みで倒れている巌さんでした。
慌てて病院に連れて行こうとする夜凪でしたが、巌さんはそれを止めます。
どうせ末期のガンだから。病院行っても抗がん剤の治療を受けながら病室で死を待つだけになるから。と。
それを聞いてた夜凪は、もっと巌さんの話が聞きたいから本番までずっと巌さんと一緒にいる事を決めました。
こいつらがいるからどんな激痛にも耐えられる。モルヒネなんかよりも強い薬だ。
ガンによる激痛にも耐え、より激しさを増していく稽古。
俺を恐れて逃げていった役者は数知れない。芝居芝居で家庭を省みない俺に家族も愛想を尽かせ出ていった。
俺の舞台を最後に役者を辞めた天才女優もいた。それでもまだ演劇を続けているろくでなしが俺だ。
ろくな死に方は出来ないと思っていた。
懲りずに若い才能にがめつく食いつき俺は「ほんとうの幸」とはほど遠い人間だと・・・。
「僕はお母さんがほんとうに幸になるならどんなことでもする」
「でもほんとうの幸ってなんだろう」
「なにがしあわせかわからないです」
ああ。
これが幸せか。
いよいよ舞台の初日は明日に迫りました。
銀河鉄道の夜が始まる
いよいよ公演初日。お客さんも入り始め、舞台の開始時間まで各々で時間を過ごしていましたが・・・。
「みんな聞いて。巌さんは来れない」
ついに夜凪の口から劇団のみんなに告げられる真実。
巌さんが危篤・・・?
劇団天球に衝撃が走ります。
今すぐ巌さんの元へ駆けつけるべきか。それとも舞台を続けるべきか。
じゃああの人の最期が!俺らの親父の最期が!病院のベッドで1人ぼっちって・・・。そんなことあっていいのか!?
動揺するみんな。しかし。
『巌裕次郎になってこの劇団を導く』
それを使命とする夜凪によって、再び落ち着きを取り戻した劇団天球。
いよいよ舞台は始まります。
劇団天球
巌さんの危篤の情報はネットニュースを通じて観客に伝わりました。騒然とする観客達。このままでは芝居どころではないのでは?
しかし。そこは巌裕次郎率いる劇団天球。素晴らしい演技を見せつけ観客の心を引き戻します。
よかった。これで乗り切った。みんな素晴らしい演技だ。
ねぇ!
巌さんのいない喪失感が。失ってしまうという気持ちが、七生の心を崩しました。
その場に座り、泣き崩れてしまう七生。それを見て、本当にこのまま芝居を続けていていいのか悩み始めてしまうみんな。
思い出すな思い出すな。そうやって抑え込もうとする程蘇る。
このまま戻らないようであれば、七生の代役を立てる必要も・・・。
再び動揺が走り崩れそうになる劇団天球。しかし、またそれを立て直したのも夜凪でした。
そしてついに、椅子だけ置いた簡素な舞台で観客も、そして劇団天球も銀河鉄道に乗車するのでした。
とこんな感じで5巻は終わりです!好きな漫画すぎて、こんなしょうもない切り張りなんかしてないでAmazonかなんかのリンク張って『面白いので買って読んでください』って言いたい。
ちなみにこの巻で好きな場面は
ここです。本誌組にはたまらないシーンですね。
でも正直連載で追ってた時はこの辺はあまり好きではありませんでした。よくある『まとめて読むと面白い』という感じですかね。
リアルタイムで読んでると当然次がどんな話になるのかわからないので、ちょっと話の進みが遅いような気がしたんですよね。デスアイランドが映画の内容そのものにはあまり触れなかったってのもあるんだと思うんですけどね。
まぁその辺の詳細はまた銀河鉄道編が終わってからで。6巻をお楽しみに!
画像:「アクタージュ」コミックス5巻より引用
大黒天HP
どうでもいい事なんですけど、あのメンバーの誰がこんなHP作るんですかね?雪ちゃん?それとも外注?映像関係の会社なんだから黒山さんもその辺いけるんだろうか。
銀河鉄道の夜を読む
青空文庫より。心配しないでも悪い方法ではないので安心して読んでください。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません