【感想】アンデッドアンラック 14巻 アークへ向かう風子とそれを守るそれぞれの戦い。アンディの始まりの物語
あらすじ
愛する妻を蘇らせる為に組織(ユニオン)を裏切ったニコと対峙するアンディ。二人の戦いに割って入ったUMAゴーストを、アンディは刀に魂を乗せて斬り払う!! 肉体に魂が戻った風子は、ループする為に円卓(アーク)へと向かうが――!?
bookwalker作品紹介より
というお話です。作者は戸塚慶文さんです。
登場人物
アンディ:『不死』の否定者。好きな女の笑顔を守るため。全てを救うために終わりに向かう世界を駆け抜けていく。
ニコ:『不忘』の否定者。1度覚えた事を2度と忘れる事が出来ない。今は亡き妻との新しい記憶を求めてアンディと戦う。
感想
風子を未来に繋げるために。
はい!というわけで、今回紹介するのは『アンデッドアンラック』の14巻です!
この辺の話は大好きすぎるので、感想を書こうと思って読み始めるとついどこまでも進んでしまう罠。
穴の形
今を乗り越え、次の全てを救うために。
ニコの失われていく記憶を繋ぎとめていたラボの発明品たちを破壊し、ニコにダメージを与えたアンディ。悲しい場面です。
思い出の発明品たちを失いその精神が崩壊しそうになった事により、UMAゴーストに乗っ取られてしまうニコ。
人の心の痛みを利用した最低なやり方
それにしても、UMA側には『もうすぐこの世界は終わる』っていう考えはないんですかね?ニコの体を乗っ取ってウキウキなゴーストですが、もうほどなくしてこの世界はラグナロクによって終わりを迎えます。
世界が崩壊するのと一緒にUMAも滅んでしまう……のだと思うのですが、その辺についてはどう思っているのでしょうか。それまで信じて尽くしてきた神による裏切りだと思うのか、それともそれが最高の名誉なのか。
さて。
ニコの体を乗っ取った事により『実体の世界』に干渉できるようになったゴースト。その体を好きな時に好きな部位を実体と霊体とで切り替えアンディの攻撃を無効化していきます。
ならばと実体と霊体を同時に動かしてゴーストを攻撃しようとするアンディでしたが、次はゴーストの体内にいある風子を人質にしてきます。
もう打つ手なしかと思われましたが、ここでニコが自我を取り戻しゴーストに抵抗します。
ルールを守らねぇならお前は俺(科学)の敵だ
ゴーストに乗っ取られていた自らの体内から風子を取り出し、実体と霊体で同時にゴーストのコアごと俺の体を斬れと指示するニコ。
UMAが死んでもルールが消えるまでにはタイムラグがある。その間に急いで風子の体に魂を戻せば風子は生き返る。
そうすれば、お前は会える。
ぐぅぅぅぅっぅ!!本当に悲しい切ない場面です。もう自分は助からないし愛する人に会う事は出来ないが、アンディはまだ会える。
自らの命を差し出す事になっても。その指示を受けノータイムで実行に移すアンディ。魂を乗せた刀の攻撃でニコごとゴーストのコアを斬ります。
そこに込められた覚悟。アンディの斬撃を受けてなお笑顔のニコの心の強さに胸を打たれます。
ゴーストのコアを破壊した事で、風子の魂がその檻から解き放たれました。即座に魂を確保しラボ内にある風子の体の元へ走るアンディ。薄れていく意識の中でそれを見るニコ。
しかし。
風子の体を安置していたポッドが開かず、そのシールドを叩き割ろうとするアンディでしたが、それを横から開くニコの娘ミコ。
俺の今現在の『泣いてしまう話ランキング』の永遠の1位が犬(動物)の話。そして2位が親子の話です。
昔、もっと若かった頃は子供側の目線でこういう話を読んでいましたが、すっかり年を取ってしまった今ではこういう話を親目線で読むようになりました。
今まさに命が失われそうな状態にある父よりも、まず目の前にある風子の蘇生に全力を尽くすミコ。もちろん、これは決してミコが薄情だとかそういう事ではありません。
こうする事が今の自分にとって一番大事な使命であると。父も、こうする事を求めていると。今すぐ父に駆け寄りたいはずですが、それをこらえて職務を果たす。
しかも。その作業をしながらニコに対して謝罪をします。
本当に泣ける
ごめんね。助けてあげられなくて。マミィを失った苦しみをアタシじゃ埋めてあげられなかった。
こんな悲しいセリフがあるでしょうか。ミコは頭が良い子なので、きっとここに至るまでにニコの気持ちには気付いていたのでしょう。今初めてこう想ったというわけではないと思います。
これに対してニコは。
俺は犬を飼っているんですが、このニコの気持ちが痛いほどよくわかります。犬がいなくなって空いた穴は犬でしか埋まらない。
この後にもまだニコの言葉は続きます。
いや。埋める事は出来たんだろう。ただ……。怖くて逃げたんだ。この穴の形をお前に変えるのが、あいつを忘れるのが怖かったんだ。
もしかすると少し薄情にも聞こえるかもしれないニコの言葉。それを実の娘に言うのかと感じるかもしれませんが、しかし。
『忘れる事が出来ない』という能力を手に入れてしまったニコにとって、逆に『忘れてしまう』という事がどれほどの恐怖だったでしょうか。
自分の中に、圧倒的大量の記憶がある。しかし、その中のどれを探しても自分が本当に欲しい記憶が見つからない。ミコの記憶はたくさんあるし、これからも作っていく事は出来たでしょう。
でも、もう失われたものは戻らないのです。
少しずつ死へと向かっていくニコでしたが、そんな彼の目の前に現れたのは。
ニコが望んだイチコの魂。それがラボのメンバーと共に目の前に現れました。
ようやく手に入れる事が出来た『絶対に忘れない妻との記憶』です。
風子の蘇生も無事終える事ができ、ニコの元に駆け寄るミコ。
非否定者であるミコには母のイチコは見えないかもしれませんが、親子3人での最後の時間となるのでしょう。
ようやく目を覚まし、眠っている間も魂で全て感じていたという風子。
もう、リップもラトラもいない。どうしてこんな事になってしまうのか。
本来とても優しい人達なのに、それが死んでいってしまう。
後ろで抱き合う親子が本当に悲しい。
悲しみに暮れる風子。ループするというのはわかったけど、どうして私なの?他にふさわしい人がいるのに!
葛藤する風子の前に、地下から突然タチアナがやってきます。どうやら戦いは次のステージへ。悲しむ時間もありません。
アンフェアだから
地下から上がって来たタチアナが戦っていたのは、シール&ルインの神側コンビ。
現在、アーク(円卓)がある場所は不壊の能力でゲートが作られており侵入が出来ませんが、そこに侵入してアークを破壊してやろうとしているようです。
それを阻止するために戦うタチアナ。
ここは私とフィルで食い止めるから、アンタ達はスキを見てアークのへ行って!!
という事で、自らの体を張ってアン風をアークの元へと行かせる覚悟です。
それに対して、私も一緒に戦うよ!と言う風子でしたがタチアナはそれを拒否。
風子がループすべき。だから、もしここでケガでもしたら大変だから、キレイな体で見送ろう。
友達として、全力を尽くして風子をサポートするタチアナ。幼い少女なのに覚悟ガン決まりで凄い。
ここでタチアナ&フィルvsルイン&シールで戦うんですが、この時タチアナは自分のUTエリアの形を変えてるように見えるんですよね。能力の進化でしょうか。
タチアナ&フィルでルイン達を押し込むも押し返され、どうやら形勢は不利そう。
そして、シールは1人基地の外へと向かい、それをフィルが追う事に。これで現状はアン風&タチアナvsルインとなりましたので、3人でいけば倒せるか!?
となったところで、ルインの本気が。
ルインは1人ではない。アンディ達がその服としてクロちゃんと一緒にいるように、ルインも『影(シャドウ)』と『血(ブラッド)』のUMAを従えているようです。
血てなかなか重要なポジションですよね。うっかりこれ倒しちゃうとどうなるんでしょう。血が無くなるんでしょうか。どうなるんだそれ。
まぁこの終盤でそんな話をするのも野暮なので、とにかくルインには強い相棒がいる。
ルインの……というかUMAの能力でタチアナの不可侵の領域全体を覆われました。これにより、タチアナは呼吸を封じられる事に。
呼吸をしようとその口を開ければそこを狙って攻撃される。絶体絶命です。
なんとかタチアナを解放しようとアン風も攻撃しますがそれもあまり効果的ではなく。自らの死への覚悟を決めるタチアナ。
今回のループではダメだったけど、次のループで神を倒して否定能力が無くなったら、その時は手を繋いで一緒に……。
そんな願いを口にするタチアナ。
するとそこに。
なんとビリーが到着します!さすがビリー様かっこい!!
『不定(ふじょう)』の能力で、タチアナを囲んでいたUMAを散らせます。
単行本のオマケで『不均衡(アンバランス)』の能力は説明がありましたがこの能力に関しては何の説明もありません。
とにかく。ここから反撃開始です。
お前には最大の屈辱をくれてやろう。でなければ不公平だろう。
このまま放置しておけばいずれ不運は死ぬから、ループしたいビリーには都合がいいんじゃない?なんで邪魔するの?と煽ったりされるものの、ルインと戦うビリー。
その戦いの中で、腕を切断されてしまいます。しかしビリーにはコピーした不死の能力がある……。
が。
なぜか発動しない不死の能力。
以前使えた能力を使えなくなっている。それには何か理由があるのか?
ここで、ビリーのコピー能力の発動条件が明かされます。
『対象から敵視される事でその能力をコピー出来る』
というのがビリーの能力の発動条件のようです。
ビリーがなぜユニオンを裏切ったのか。
それは、ユニオンを裏切ったと同時にビリーに敵意を向けさせ、その能力をコピーするため。自身にヘイトを集めるためにあえて組織を裏切ったのです。
戦うべきではない子がいる。生きるだけで精一杯の子がいる。だったら、自分だけが嫌われて1人で戦えばいいと思ったんだ。
そう語るビリー。不器用な優しさ。
しかし風子は優しく、どうしてもビリーを嫌ってくれなかった。でもそのおかげで、その優しさのおかげでタチアナが救われた。
今でもできれば代わってあげたいと思っているけどそれは出来ない。だから、今もつ全てをかけて風子を生かすよ。
こうして。その『不公平』の能力を使ってルインと戦うビリー。
さて。この『嫌われる事でコピー出来るようになる』という能力ですが、改めてスプリング戦を見てみるとその能力がわかります。
戦いが進み、アンディがビリーの気持ちを理解していくと同時にどんどんビリーに対する腐食が進んでいっています。よく考えられた描写。
能力の発動条件がわかった事により、ビリーはとにかく新しい不変にめちゃくちゃ嫌われているという事もわかりますね。何やったんだマジで。
戦闘中にチカラとの通信でビリーに敵意を向けさせ使えるようにした『不動』と『不変』の重ね掛けという離れ業なども使います。
『不死』の力を見つけた時に、これだと思った。神の攻撃にも耐えうる耐久力。しかし、アンディはその当時は世界との関わりが浅くビリーを敵視するだけの動機に欠ける存在だったのでコピーしようがなかった。
そんなアンディが風子と出会った。風子を道具として使うひどい男だったから、嫌われるなんて簡単だと思った。
しかし……。
ビリーにとっての最大の不運。それは。
心底ビリーを嫌ってはくれなかった。そこが最大の不運。
でもアンディをそういう男にしたのも風子のおかげだと思うので、いかに風子の存在が大きいかという事ですね。
さて。それはともかく、今腕を切断されているビリーにとって不死の能力が使えないのは辛いところ。なんとか回復したい。
そんな時に、丁度目の前にいい感じの能力を持ってる奴がいるわけですね。嫌われてもなんの悲しみも無いクズが。
どうしてお前が風子を殺す事が出来たと思う?もし、これまでのループの中でユニオンに関わっていたらジュイスはお前を警戒していたはずだ。
それが無かったという事は、今までのループではお前は俺達に関わる事なく死んだんだ。
お前は不死と違ってこれまでのループを越えられていないんだ。
お前の理屈で言うなら、神に選ばれたのは不死だけだ。
不完全なお前じゃない
めちゃくちゃ悪い顔でルインを煽りまくるビリー。これに対して激怒する煽り耐性低めのルイン。
煽られブチ切れた事で、ビリーに敵意を向けます。
そう。つまり……。
『不滅』の能力を手に入れ完全復活を果たすビリー。ここから反撃が始まります!
それから
ここまでで14巻の半分くらいです。
もし、まだこの漫画を読んだ事が無い人が今これを読んでいるとしたら、正直この辺りの流れはこんなブログではなく単行本でちゃんと全部読んでほしいです。ここの『不滅をコピーする』までの流れが俺凄い好きなので。
ここからは、ビリーとタチアナでルインを食い止めます。
その間についにアン風は不壊のゲートを開きアークの元へと辿り着きます。
そこに待っていたのはジュイスでした。
『ループをする』という事について語り始めるジュイス。最初のループの時の時代はジュラ紀だったようです。
まだ世界に恐竜が闊歩している時代ですが、現在から約2億年前です。
2億年ですよ2億年!!とんでもなくないですか?不死のヴィクトルはともかく、ジュイスはケガもするし死にますからラグナロクを阻止するとかよりここから2億年無事に生きる事の方が難しくないか?
もしかするとこの時点では死の概念が無かったりしたのでしょうか。まず間違いないのは『性別』という概念はこの時には無かった。
そして、どうやらこのループ先の年代というのは回数を重ねるたびに後ろにズレていくらしく、次のループ先は1800年ごろになるだろう。とジュイスの予想です。
初回が2億年前。100回目が200年前。どんな曲線を描いているのでしょうか。
仮にもし、等速でその時代がズレていくのだとした場合、1回につき200万年ほどズレていく計算です。
つまり、今回のループの開始は紀元前199万9800年ほどですかね。200年とか誤差。
ちなみに200万年前は旧石器時代だそうです。まだウホウホやってた事ですね。
まぁそんな野暮なツッコミはともかく……いいのかな。いいんだろうな。
ループについて簡単に説明したあと、ジュイスは風子に尋ねます。
『次の世界をどうしたい?』と。
その問いに答える風子。
服を着ているタチアナを見たい。思いっきり走るトップを。体を震わせずに学校に通えるチカラを。そして、自分が不運で殺してしまった人達に生きていてほしい。
でも、辛い事が無い世界というのは違う。その辛さに耐えたからアンディと出会えた。
この世界には、人が作った辛さじゃないものがたくさんある。それに理不尽に苦しんでいる人がたくさんいる。
だから、辛い事も楽しい事も全部じぶんのせいにしたいんです。と。
『自ら(みずから)に由る』と書いて自由と読みます。風子のこの思想は少し厳しい感じですね。でもそれが生きるという事でもあると思います。
理不尽に苦しむのはよくない。かと言って、全て勝手に手に入るのもよくない。
自らの意志で生きる。そんな世界。
でもそんな世界を『今の』みんなと生きたかったと言う風子。
そんな風子の願いを叶える事の出来るアーティファクトがある。
ここから語られる『アンディの始まり』の物語。どうしてヴィクトルはアンディになったのか?
風子の願いを叶える可能性のあるアーティファクト『リメンバー』と、それを巡るヴィクトル、ジュイスのそれぞれの想い。
99回のループ。約4554億年という途方もない時間を生きたヴィクトルの決断とは。
そして。
様々な想いを背負い、いよいよ世界はループへと向かっていきます。
『この2人こそ』って言ってるけど、そのうちの1人は自分の想い人の別人格かと思うと胸がえぐられる。
いよいよ次巻はアンデラ史上最強の敵と対峙します。
15巻へ続く。
画像:「アンデッドアンラック」コミックス14巻より引用
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